第32話 分断された
次第に光が晴れ、視界が開けた。
僕の目の前に広がっていたのは山の上からの雄大な景色。とても見晴らしが良く、小さい頃に父と行った山で見た景色を思い出す。
「いやぁ、良い景色だ」
と一瞬の現実逃避の後、
(って眺めてる場合じゃない!僕飛ばされてんじゃん!)
すぐに現実に立ち返り、自分の言動にツッコミを入れる。
いったい何が起きたんだろう。ワープ罠は踏んでない。ワープ罠を踏んでもいないのに別の場所に転送されているという事は、あの変異種の放つ光には相手をワープさせる効果があるのだろう。
考えを巡らしていると、頭の中で神様の声が響く。
(どうやら、皆別々の場所に飛ばされたみたいですね。配信だと、ニーリェさんが一人だけになっています)
僕はすぐさま感知スキルで周囲を探った。確かに、皆バラバラになって点々としていて、各々状況に対応していた。
ディクスとリディルカは複数のモンスターの襲撃にあった様だけど、既に倒しきっている。流石だ。二人とも今は下手に動いて罠を踏まない様に待機している。
ベドゥイとミルカとニルスンはモンスターと交戦中。ベドゥイは巨大なカマキリの様なモンスター相手につばぜり合い。ミルカは迫り来る鳥のモンスターを魔法で迎撃。二人は問題なく対処できそうだけど、ニルスンは支援系という事もあって攻撃力不足で苦戦している。巨大な角を持った山羊の様なモンスターの攻撃を回復と防御の魔法でなんとか凌いでいるといった感じだ。
シシルーとカルスとニーリェは僕と同様。転送先にモンスターが居なかった様で、セオリー通り無暗に動かずに待機している。
(ほんとだー、完全に分断されてるじゃん)
これは困った。一人一人が孤立してる。そこまで距離は離れていないけれど、ここは罠やモンスターが所々で沸き出すダンジョンの中。合流するのもなかなかにしんどそうだ。
さらに困った事がもう一つ。誰が何処に居るのかを把握できるのは感知スキルを持っている者だけ。つまり僕とニルスンなんだけど、そのニルスンがモンスターに襲われてピンチなのだ。このままではやられてしまうのも時間の問題だろう。
(さてと、どうしたものかなー)
今回の探索。命運は僕がどう動くかにかかっていると言っても過言ではない。
感知スキルを持っていなければ、皆が何処に居るのかも分からないんだ。今皆を合流させる事ができるのは、高度な感知スキルを持っていて自由に動ける僕だけだ。これから皆の元に向かわなきゃいけない。
今僕の一番近くに居るのはニルスン。直行すれば倒される前に到着する事はできるだろう。だけど、僕はあまり強くない。ニルスンの加勢に行って助けられるかどうかは半々といった所。もし助けに行って僕までやられる事になれば、その時点で今回の討伐作戦は失敗になる。
ひとまずニルスンの元に行くのを後回しにして、他の人と合流してからニルスンを助けに行くのなら、戦力としては十分に助ける事が出来るだろうけど、助けるのが間に合わなくなってしまうかもしれない。
僕はほんの少しだけ考え、「よし!」という掛け声と共に走り出した。




