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神様リスナーと転生者  作者: キャズ


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第30話 なんかやる事ないなった

 アメティスタのダンジョンは山を登っていくタイプのダンジョンだ。所々に穴あきの様に洞窟があり、山の外と中を行き来し、上へ上へと進んでいくらしい。外側は足場の悪い登山コースの様になっていて、足場の悪さ自体が天然の罠の様になっている。山の内部はよくある洞窟のダンジョンにみたいになっているとの事。

 ダンジョンに入ると、僕達の目の前には山の中腹あたりの景色が広がっていた。ダンジョンに入ったというのに妙に開放感があって変な感じだ。

 ダンジョンに入ったという事で、僕達はさっそく配信の準備を済ませ、感知スキルを発動させようと告げる。


「じゃあ、早速<サーチ>やっちゃうよー」

「では私が<サーチ>をしますので・・・」


 ニルスンと言葉が被った。どうやらニルスンも感知担当らしい。


「ここは僕に任せてよー。これ自慢なんだけどさ、感知スキルに関しては僕凄いんだから」


 この世界に来て、しばらく探索者としての生活を続けてきたからこそ分かる。僕の感知スキルは結構上澄みだ。故に、こういった場面では自分に任せてと自信を持って言えるのだ。

 そんな堂々と言う僕に、ニルスンは冷徹に返す。


「ここは私に任せてもらおう。我々騎士団は日頃から訓練を続け、あらゆる状況に対応するための戦術を頭と体に叩き込んできた。民間に頼って、我々の連携が乱れてしまうのは避けたいのでな」


 言わんとする事は分かるけれど、自分の活躍の場が奪われるのは気にくわない。僕は頬を膨らませて「むー」と唸った。

 そんなふてくされている僕をディバルはなだめる。


「可奈芽さんの感知スキルが凄いのは分かっているが、ここは俺達に任せてくれないか?協力を頼んでいるとは言え、民間に任せて騎士団が何もせずについていくだけってのは示しがつかんからな」


 自分の活躍が奪われると思って少々不機嫌になった僕だけど、確かに民間の探索者パーティーが頑張っているって時に騎士団がうしろで何もせずついていくだけというは見栄えがよろしくない。騎士団が民間に任せきりの状態なんて事になれば、へたすりゃ炎上案件。自分達が出来る事なのに、民間に任せるなんて絵面を作りたくないというのは分からなくもない。

 僕としても、別にどうしてもやりたい理由がある訳でもないし、今回はニルスンに任せておくとしよう。今回は視聴者感覚で、皆の活躍を見ながら後を付いて歩いていく事にした。


 言うだけあって、ディクス達は率先して先を進んでいく。

 彼らの戦いぶりは見事なものだった。

 ニルスンは僕と同程度の感知スキルを使える様で、進みながらも周囲の状況を感知し、どこにどんな罠があるか、どこにどんなモンスターが居てどれくらいで接敵するのか、逐一報告し、騎士団の面々はそれに対処している。

 蛇のモンスターが這い寄ってくると、カルスが大槌で叩き潰し。

 オークの亜種的なモンスターが石斧を振り上げ襲って来ると、ベドゥイが剣で一閃し。

 蜂のモンスターが飛んでくると、ミルカが魔法で風の刃を放ち打ち落とす。

 各々が活躍する中、特に目を見張る強さを見せたのはディクスだ。ディクスは見事な槍捌きで、時には突き刺し、時には槍を棒術の様に使い薙ぎ払い、モンスターを次々と葬っていく。大型の牛の様なモンスターが突進してきた時なんかは、渦をまとった必殺の一突き<スパイラルランス>を放ち、相手を貫くどころか衝撃で消し飛ばす程の威力を見せつけた。

 前衛主体のパーティーだと前に一緒に探索したブレイドファングが居たけれど、ディクス達は明らかに格が違う。そこらのモンスターなら一撃でなぎ倒すくらいの余裕が見える。この世界にもしレベルなんてものがあったとしたら、レベルの違いを見せつけられていた事だろう。

 騎士団の面々が活躍する中、僕達リトライズはというと。

 リディルカはミルカと協力して魔法攻撃をし、シシルーは支援魔法で全体の強化をして円滑な進行をサポートしている。

 一方僕とニーリェには活躍の場が無かった。

 僕は感知スキル役をニルスンに譲ったからやる事がなく、ニーリェも前衛をディクス達に任せている様だ。まぁ、十分な強さの前衛が3人もいるから、下手に前に出ても邪魔になりかねないという判断だろう。

 僕は歩きながら、やる事が無い仲間のニーリェに話しかける。


「ディクスさん達強いねー、ちぎっては投げちぎっては投げって感じだ。騎士団の人達って皆こんなに強いの?」


 ニーリェは当然だろうと言わんばかりに言葉を返す。


「そりゃあ強いさ。訓練を積んだ正規の軍人だぞ?」


 そう言えばそうか。軍人は創作でよくかませ犬にされるけれど、訓練を積んだ軍人が弱い訳が無いし、弱かったらそれこそ問題だ。

 そして同時にふと思う。


「そう言えばさ、ニーリェも結構強いけど、軍人になろうって思わなかったの?ほら、ニーリェって騎士の家系だし、親を目標にしたりしてさ」


 僕の質問に、ニーリェはなにやら話しずらそうに返す。


「うーん。オレも昔は騎士になる事を目標にしてたけどな。でも、なれなくて断念したんだ」


 何か言いずらい事情でもあるのだろうかと思い、僕は少し身構えながらも聞いてみる。どうしても言いたくないのなら無理強いはしないけれど、仲間の事は出来る限り知りたい。


「何かあったの?」


「あぁ、どうしても筆記で合格できなくてな」


(筆記かぁ・・・)


 思ったよりしょうもなかった。身構えて損した。


「騎士にならずとも、一兵士になる道もあったけど、オレにはもう一つやりたいことがあってな。それが探索者として色んなダンジョンを巡る事だったんだ。妥協で兵士になるよりも、妥協でもう一つの夢である探索者を選んだって訳だ。オレの両親も別に軍人に拘る必要は無いって言ってくれてたしな」


「そっか。ニーリェが妥協したから僕達は一緒のパーティーになれたんだね。怪我の功名って奴だ」


 自分と出会えた事が幸福である事を一切疑わない発言。そんな言葉を満面の笑みで言い放つ僕を見て、ニーリェもつられる様に笑った。


「アッハハ。そうだな。騎士になる夢を諦めたから、オレはリトライズに居られるんだもんな。皆と一緒に探索者をやれて、今では探索者を選んで良かったと思ってるよ」


 その後も、僕とニーリェはおしゃべりをしながら皆の後をついていった。

 ニーリェは僕達と出会う前の事を色々と話してくれた。前に居たパーティーはニーリェにとって初めてのパーティーで、そこで探索者としての経験を積んでいった事。そのパーティーのリーダーが家業の後を継ぐ事になり、パーティーが解散する事になった話。その後、兵士になるか探索者を続けるか悩んでいて、ここで良いパーティーが見つからなかったら探索者を辞めようと考えていた事。暇を持て余した僕達はじっくりと話し込んだ。

 色んな話をして、僕とニーリェは絆がさらに深まるのを感じたのだった。

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