第23話 Cランクパーティーブレイドファング
少しだけ時は進み、僕達リトライズはシャモアの街の近くにある探索者ギルド、その中のダンジョンの入り口前に来ていた。
ダンジョンの入り口前には既にブレイドファングの面々が集まっている。
そこで待っていたのはリュートを含めた男性3人と女性2人。ブレイドファングの面々が僕達に気付くと、2人の少女がシシルーの元へと駆け寄ってきた。
「久しぶりー、シシルー。元気してたー?」
「いつも配信見てるよー」
二人の少女はシシルーの手を取り、ピョンピョンと跳ねながら喜びを表現する。
一人はスラっとしたスレンダー少女。太くはないけど引き締まっている感じの体で、力があるというよりかは素早そうという印象を受ける。装備も動きやすさ重視の軽めな装備、剣を二本帯刀していて、二刀流で舞う様に戦いそうな印象を受ける。
もう一人は真面目そうで委員長的な雰囲気の少女。グルグルメガネで髪型はおさげ。形から入るタイプなのだろうか、黒いローブにトンガリ帽子とコッテコテな魔女っ子スタイルをしている。
シシルーは一緒に飛び跳ねながら言う。
「うん。皆も元気そう。久しぶりの一緒のダンジョン、楽しもうね」
とても仲が良さそうだ。仲睦まじい様子を見て、ニーリェは「シシルーの奴、嬉しそうだな」と微笑み、リディルカは「懐かしの友との思いがけぬ再会、実に良いものだな」と自分と照らし合わせて思いにふけっている。
残りの3人も後に続くように僕達の元に来る。
「おう、アンタ達がリトライズか。俺はガラン。見ての通りの前衛だ。今日はよろしくな」
その中の一人の青年、ガランが挨拶を投げかけた。
運動部の主将とかやってそうな感じの青年。頭は角刈り、ガッチリとした体躯に無骨な鎧を身に纏っている。武器は巨大な両手剣と正に重戦士といった出で立ちだ。
僕達は挨拶を返していく。
「よろしくー」
「あぁ、よろしくな」
「うむ。ブレイドファングの諸君、共に行こうではないか」
ガランに続いて、他のブレイドファングのメンバーも名を名乗っていく。
「僕はロッツ。支援魔導士です」
少年らしさが残る小柄な青年、ロッツ。ダボダボなローブ姿に杖を持っていて、一目で魔法職だという事が分かる。装備がシシルーに近いのを見るに恐らく支援系。多分彼が、シシルーに変わってブレイドファングに入ったメンバーだろう。
「アタシはレイラ。双剣で戦うよ」
スレンダーな少女、レイラは自身の得物に触れながら名を告げた。
「私はフィルシィ。攻撃魔法でサポートするよ」
おさげの少女、フィルシィはトンガリ帽子のつばをさわりながら名を告げた。
「俺がこのパーティーブレイドファングのリーダー、リュートです。俺も前衛で、前衛の多いパーティーだけど、よろしくお願いします」
リュートは片手剣に片手にバックラーと攻防一体の装備。前衛3人と言っても皆スタイルが違う様だ。
ブレイドファングの自己紹介は終わり。僕達も「僕は可奈芽」「私はシシルー」「オレはニーリェ」「リディルカである」と一通り自己紹介をし、ブレイドファングとリトライズ、計9人はダンジョンへと入っていった。
今回のダンジョンはシャモアの街の近くにある森に発生しているダンジョン。階層がなく森を奥へ奥へと進んでいくタイプのものだ。ちゃんとした道を選ばないと、グルグルと同じところを回る事になるらしい、そこが今回のダンジョン。
リトライズとブレイドファングは配信魔道具を起動させ、配信を開始させる。
リトライズは配信魔道具の前でそれぞれポーズとり、ワイワイはしゃいでいる感じの始め方で開始の挨拶をし。
ブレイドファングの方は配信魔道具の前で全員でエイエイオーと、運動部の部活動の様な掛け声と共に配信を始めた。
配信が始まると、さっそくリュートは皆に告げる。
「さてと。いつもは浅い所はさくっと突破してたけど、今日は久しぶりにシシルーと一緒にダンジョンに行くんだ。積もる話もあるだろうし、ゆっくりと話しながら進もうか」
リュートの言葉に「さんせーい」「はい」「了解」と賛同する声が続く。
ダンジョンの浅い所は基本的に難易度は低く、深い所を目指すパーティーだと過剰戦力になりがちだ。だから、ダンジョンの浅い層は早々に突っ切るサクサク進もう系のパーティーや、ハイキング感覚で話しながら進むゆっくり行こう系のパーティーがいる。
リュートの口ぶりから、普段はサクサク進むタイプなんだろうけど、シシルーも一緒だからだろう、今回はゆっくり話しながら進んでいく様だ。
方針は決まり、僕達はダンジョン探索を開始した。
歩きながら、僕はさっそくブレイドファングの皆に質問を投げる。
「ねぇ、ブレイドファングの皆って、いっつもダンジョンの奥までサクサク進める感じなの?」
「えーっとね。シシルーが居た時は違ったんだけど、シシルーが抜けた後、これからは上位ランクを目指すって事になって、それからすぐに奥地を目指す様になったんだよ」
僕の質問にレイラが答え、それにガランが続いて答える。
「上位ランクのパーティーの配信を見て見ると、ほとんどが浅い所をかっ飛ばしてたからな。それを真似た感じだな」
「ほうほう」
僕は確認のために神様に質問する。
(ねぇ神様。一応雑談メインの配信じゃなくても、ガッツリ攻略メインの配信で神様の評価を得る事は出来るんだよね?ブレイドファングってその方針は出来ないの?)
(うーん。今のブレイドファングだと厳しいと思うぜ?攻略メインの配信だと、洗練された技術とか練度とかを見せなきゃいけないからな。高い技量を持った人達が集まって、しっかりと連携をとっているパーティーと比較して、遜色ない配信が出来るかというと、難しいだろうな)
(やっぱそういうので評価を得るのは一流の特権かー、まぁにわか仕込みのガチ配信とかやられても、見所は無いよねぇ)
実際に見て、少し話しを聞いて、状況は大体わかった。頭の中で情報を整理し、僕の中で今のブレイドファングに必要な事が固まった。




