第21話 シシルーの幼馴染
僕達リトライズは順調に活動を続けていき、駆け出しのDランクからCランクにまで駆けあがっていた。ボスの討伐実績も多く、高難易度のダンジョンもたびたび攻略しているから、このままいけばBランクに到達するのも時間の問題だろう。
色々なダンジョンに挑戦していたそんなある日、僕達はダンジョン探索のためにシャモアという街に来ていた。
僕とシシルーは必要な物資の買い出しのため、その街の一角にあるシーカーショップに出向き、世間話をしながら買い物をしていく。
「ねぇ見てー、シシルー。新作のアクセ型魔道具だってー。良くない?これ」
「へぇ、新作出たんですねぇ。うーん、ちょっと新しいのに変えてみようかなぁ」
と、新作の装備の話題で盛り上がったり。
「可奈芽さん。新しい感知スキルに挑戦してみません?」
「いいねぇ。僕も魔道具無しでスキル使える様になってきたし、そろそろバリエーション増やすのもアリかもねー」
と、今後の戦い方について話してみたり。
「全員着ぐるみ来て配信するとかどうよ」
「あはは、たまには良いかもしれませんね。今度二人にも聞いてみましょうか」
と、これからの配信について話し合ってみたり。僕達は当たり障りのない話を交わしながら買い物をしていた。
そんな最中、シシルーが商品を手に取るために伸ばした手が別の人の手に触れる。別の人が同じ商品に手を伸ばしていた様だ。
お互いに「あ、ごめんなさい」と謝り、その人の方に向き目を合わせると、
「「あ」」
という言葉と共に、シシルーと一人の青年は少しの間固まった。
典型的主人公な見た目の青年。丁度いい髪型、丁度いい背丈、丁度いい顔の良さ、外見のステータスが全部丁度いい、まさにザ主人公といった感じ。
青年は親し気にシシルーに話しかける。
「シシルー、久しぶりじゃん。元気してた?」
「う、うん」
一方シシルーは少しぎこちない、青年の様子から仲が悪いという感じでもなさそうだけど、シシルーには何か思う事がある様子だ。
神様が青年の顔に見覚えがあるのか反応を示した。
(あー、あの人って)
(知っているのか、神様)
(うん、あーし知ってる。確かシシルーちゃんの元いたパーティーのリーダーさんだよ)
(ほうほう、あの人が)
遠慮しがちにシシルーが青年に聞く。
「リュートは買い出し?」
「おう。今日ダンジョンに行こうと思っててな。シシルーも?」
「うん。私も今日ダンジョンに行く予定でね。パーティーメンバーと一緒に来てるんだ」
シシルーの態度は遠慮がちではあるものの、普段のですます口調とは異なり慣れ親しんだ人同士の口調で話している。親しい間柄である事は間違いない様だ。
リュートと呼ばれた青年は僕の方を向いてシシルーに問う。
「じゃあ、そちらがパーティーメンバーの人?」
「うん」
シシルーに続くように僕は答える。
「僕はリトライズの可奈芽だよ。よろしくー」
「俺はブレイドファングのリーダー、リュートだ。シシルーとは幼馴染でな、昔からの友達なんだ」
「へぇー、幼馴染なんだー」
軽い自己紹介の後、リュートはシシルーに提案する。
「せっかく久しぶりに会ったんだ。買い物が終わった後、軽い食事でもしながら少し話さないか?」
「うん、いいよ。買い物が終わったら店の外で落ち合おう」
そう言ってリュートと僕達は手を振り、いったん別れた。
シシルーの少し気を遣ってる感じではあったけれど、特に仲が悪そうな様子は無い。リュートの方は特に何かを気にしている様子はないし、どうやらシシルーが一方的に気にしている様子だ。
僕としても、パーティーメンバーがモヤモヤを抱えているのなら何かしてあげたいし、いい機会があれば聞いてみるとしよう。




