第16話 予定変更
(待って待って。いきなりそんな事言われても分かんないって。まずは状況教えて)
突然他のパーティーがピンチなんて言われても困る。こっちは他のパーティーは見えないのだ。
火の神は謝り、改めて状況を伝える。
(すまんすまん、ロザリンが転送系の罠にかかって、4層に飛ばされて、3層に残された3人が途方に暮れているみたいなんだ。助けてやる事はできねぇか?可奈芽ちゃん)
知っている相手とは言え別のパーティー。知ったこっちゃないと冷たく切り捨てる事も出来るけれど、僕としては出来るだけ困っている人は助けたいし、一度会った人との縁は大事にしたい。
僕は決めた。出来る限りの事はしよう。
僕は慌てた様子でリトライズの皆に報告する。
「たいへんたいへん」
突然慌てだした僕に対してニーリェは聞く。
「どうしたんだ?」
「今ロザリンさんのパーティーがこの階層にいるっぽいんだけど、ロザリンさんだけが居ない。はぐれて困ってるみたい」
シシルーは心配そうに呟く。
「ワープ系の罠にでも引っかかったんでしょうか」
「困っている人が近くに居る。リディルカ達には助ける力がある。であれば」
リディルカの掛け声に合わせ、僕達は言い放つ。
「「「助けに行こう」」」
僕達の意思は同じだ。パーティーを組んで日は浅いけれど、皆困っている人を助けれるなら助けたいという意思を持っている事は理解している。
助けれるのに放っておこうと言う様な人はリトライズには居ないのだ。
僕達は残された3人の元へと向かった。
残された3人は巨大なカエルみたいなモンスターと戦っていた。2人の支援を受けたダッドはモンスターの攻撃を余裕で対処しているが、火力が無く倒すのに手間取っていた。
僕達はその場面に颯爽と現れ、僕は奮闘している3人に言う。
「ダッドさん!助けるよ!」
その声を聞いたダッドは僕達の方を向き、希望に満ちた眼差しを向ける。
「おぉ、貴方達は」
ダッド達が気付いたと分かるや、リディルカは雷の槍を宙に浮かべ、掛け声をかける。
「合わせたまえ!ダッドとやら!」
合図と共にダッドはカエル型のモンスターに掌底を食らわせ、ぶっとばして体制を崩させる。そしてリディルカは体制を崩したモンスターに雷の槍を放ち、直撃させ、バチンバチバチという炸裂音と共にモンスターを葬った。
モンスターを処理し、いったん落ち着いてからリディルカはダッドに事情を聞く。
「ロザリンの姿が見えないが、一体何があった?」
「それが・・・」
かくかくしかじか。
ダッドが言うには、途中まで順調に進んでいたけれど、凡ミスでロザリンが罠にかかってしまい、4階層に飛ばされてしまったとの事。どんな罠だったのか魔道具で調べてみると、4階層への転送と魔道具の封印であった事。自分達だけでは4階層以降のモンスターを処理する力がないから、どうしようか悩んでいたとの事だった。
ダッドの説明を聞いたシシルーは悩ましい表情を浮かべる。
「魔道具の封印って事は、帰還の宝珠も使えないんですね」
帰還の宝珠というのは、その名の通りダンジョンから帰るための魔道具。それが使えないという事は、全ロスせずに帰る手段を失ったという事。孤立した状態で帰れもしない。ロザリン大ピンチだ。
僕は神様に封印の罠について聞いてみた。
(そこらへんの罠にも封印ってのがあったけど、封印ってそんなにヤバイの?)
(封印はダンジョンに出るまで使えなくなるやつだねー。例えば魔法を封印されると、ダンジョン出るまで魔法が使えなくなるよー)
(うわエグー、そんなの食らったら帰るしかなくなっちゃうじゃん。魔道具の封印って事は、持ってきた装備とかも使えなくなってるって事なのか)
リディルカは真剣な表情で分析する
「ロザリンの実力であれば、モンスターが多少出てきた所で対処できるだろうな。だが、ダンジョンでは一つ所に留まる事が出来ん以上、いつか移動しなきゃいけなくなる。罠の場所が分からない中での移動を強いられるとなれば、さすがのロザリンでも厳しいだろうな」
再び僕は神様に聞いてみる。
(ねぇ神様、なんでダンジョンに留まっちゃいけないの?)
(可奈芽ちゃんはこの世界のダンジョンが常に変化を続けているのは知っているよな?)
(うん)
(でも、目の前でダンジョンが変異しているのは見た事ねぇだろ?)
(あー、確かに見た事ないや)
(探索者の周囲はダンジョンの変異が抑えられるんだ。だけど変異する力は加わり続ける。だから探索者が一つの場所に留まり続けると、いずれ変異の力を抑えきれなくなって、急激なダンジョンの変異に巻き込まれる事になっちまうんだ)
(つまり一か所に留まっていると、ダンジョンが無理やり変形しちゃうから、巻き込まれてプチッてされちゃうかもって事?)
(そういうこった)
ダッドは頭を下げ懇願する。
「リトライズの皆さん。勝手なお願いだと思いやすが、どうか助けて頂けないでしょうか。お嬢はきっと諦めてません。お嬢の装備は両親からの贈り物、お嬢もとても大切にしてやした。ダンジョンに持ってきていても失いたくは無いはずです」
同様に他の双子も頭を下げる。
「自分からもお願いします」
「自分もです。もし途中でやられてリトライズの皆さんが装備を失っても、自分達が弁償します。だから・・・」
3人とも真剣な表情だ。大事に思われている事がよく分かる。
僕はリトライズの皆に聞いてみる。
「4階層らしいんだけど、行けそう?僕達」
助けれるなら助けたい。でも無駄死にをするなら無理に行くべきじゃあないとも僕は思う。
ニーリェは微笑みながら答える。
「今回3階層までにしたのは安全策をとったからだ。俺達の実力なら、4階層でも十分通用するだろうぜ」
その言葉を聞いた僕は元気よく言い放つ。
「じゃあ行こう!そんで僕達リトライズは凄いんだぞってロザリンさんに見せつけてやろう!」
リトライズの皆は当然そのつもりだと言わんばかりの表情。
今回は3階層までの予定だったけれど、急遽予定は変更、4階層まで行ってからのロザリン救出ミッションが始まった。




