第14話 リディルカ、ロザリンとの思い出
ロザリンとのひともんちゃくを終えた後、僕らはリディルカが言っていた手頃でいい店に行った。
紹介された店は多様な料理を提供する大衆食堂で、そこで僕達はスパゲティ、煮魚、シチュー、ピザ、ミートボール、スープ、サラダと思い思いの料理を頼んでいた。
僕はおしゃべりしながら食事を楽しもうと会話を切り出す。
「で、魔法学校時代の二人ってどんな感じだったの?」
話題は勿論、さっきのロザリンという子とリディルカの関係についてだ。
ニーリェもシシルーも気になっている様で、リディルカに視線を向けている。
「ロザリンとはルガード魔法学校の同期でな、あの子が言っていた通り、このリディルカはトップの成績でロザリンは常にその後を追う。リディルカとロザリンはルガード魔法学校の2トップだった」
そこでシシルーはピンと来たのか、リディルカに尋ねる。
「ルガード魔法学校って事は、リディルカさんってもしかしていい所のお嬢さんだったりします?」
リディルカも隠す気はないのか気さくに答える。
「うむ。皆ご存知ラピス探索保険。そこの社長こそがリディルカの父だ」
その事実にニーリェが驚く。
「え!?あの探索保険の!?すごい有名なとこじゃん!」
ニーリェの反応を見るに有名らしい。
だけど僕はそれを知らない。神様に聞いてみよう。
(探索保険って何?)
(ダンジョンでやられると全ての物を失うじゃないですか)
(うん)
(そこで高額な装備を持って行っていると大きな損失になってしまいますが、保険に加入していれば、失った装備の価値の何割かのお金が貰える様ですよ)
(ほぇー、そんなんがあるんだねー。たしかに、高価な装備が無くなった場合の保険とかがないと、高価な装備は勿体なくて持っていけなくなっちゃうよね)
「まぁそこは置いといてだ」
リディルカは話の軌道修正を行い、改めてロザリンとの思い出を語っていく。
「ロザリンは魔法学校に入学する前から実力が認められ、学年1位は間違い無しと学内で噂される程だった。だが、学年1位を取ったのはリディルカであった。試験以降、ロザリンはこのリディルカによく勝負を挑んでくる様になってな」
ロザリンとの日々は良い思い出だった様だ。リディルカは思い出を振り返り、なにやら嬉しそうな表情を浮かべる。
そんな様子を見てニーリェは言う。
「随分と楽しかったみたいだな」
「あぁ。楽しかった。ロザリンは正々堂々、全力勝負を望む。そんな子でな。ある時、ロザリンを応援する女子が勝負でロザリンが有利になる様このリディルカにイタズラをしてきた事があってな、それに気づいたロザリンはイタズラをした女子を叱り、イタズラを止めさせて、その上で全力での再戦を挑んできたのだ。ロザリンはそんな子だ」
今度はシシルーが言う。
「きっちり勝負で白黒つけたがる性格なんですね。だから、お互いが全力を出せない事を嫌うと」
「それでな、卒業の時にロザリンに聞かれたのだ、なんで貴方はそこまで強いのか?とな。我はロザリンに言った。リディルカは常に最高の自分を追求している。最高を求め続けているからこそ強い。そして、これからも強くあり続けると。そう言うとロザリンはこう返した。なら、わたくしは最高になった貴方を追い越してみせますわ、とな。きっとロザリンは、今のリディルカが最高の追及を諦めた様に見えたのだろうな」
リディルカの目に悲しみが映る。
ロザリンを失望させてしまった事によるものなのか、僕達をリディルカと釣り合わない存在だと思われた事によるものなのか、それともその両方か。
いつもの変な口調で自信満々に語るリディルカからは想像できない、センチな表情を見せていた。
そんなリディルカに僕は問う。
「って事は、リディルカはまだ最高の自分の追及っていうのを諦めてないの?」
リディルカはいつもの自信に満ちた声で言う。
「当然。このリディルカ、最高のパーティーの最高の魔導士になる目標を諦めていない。リディルカはこのパーティーが最高のパーティーになりうると考えている」
いつもの様にポーズを決めて話すリディルカに、僕は照れながら返していく。
「ハハハッ、期待にそえるかは分かんないよー」
リディルカが考える最高のパーティーというのが何なのかは分からない。だけどリディルカは元Aランクパーティーに所属していた凄腕だ。そんなリディルカが僕達Dランクパーティーが最高のパーティーになれると言っている。きっとランク以外の何かを見て判断しているんだろう。
ロザリンはリディルカがDランクパーティーに入った事で目標を諦めたと思って失望しちゃったけれど、リディルカの方は目標のために僕たちを選んだ。ロザリンとリディルカは、今すれ違い状態にあるという訳か。
リディルカの思い出話を聞いた後、その後も僕達は雑談を交えながら店の料理を堪能した。
ダンジョンに突入するのは明日。僕達は明日のダンジョン探索ため準備し、明日に備えるのであった。




