第12話 僕達はリトライズ
固定パーティを組むことになり、僕達は話し合って、自分達に合った戦法でダンジョンに挑でいく事にした。
時は過ぎ、場所は変わり。とあるダンジョンボスフロアの前で、僕は仲間に状況を伝える。
「ボスはフロストウルフ。取り巻きにアイスウルフが14匹いるね。ここも罠はないから安心して戦えるよ」
僕は装備を一新していた。
防御を考えず、避けきる事を前提とした金属少なめの軽装備。武器は単なる鉄製の剣から加護の剣に変わっている。
加護の剣は普通だと使い物にならないらしいけれど、神々からの評価が力に変わるという特性上、視聴者である神様と話せる僕であればそこそこの威力になる様で、僕の未熟な力をいい具合に補ってくれていた。
そして、新たな魔道具により僕はモンスターの情報も察知できる様になっていた。これでモンスターの情報も分かるので、強敵かどうか分からず進む事も無い。
僕の報告を聞いたニーリェは、今回の戦い方について話す。
「取り巻き付きか。じゃあオレがボスの相手をしておくから、その間に取り巻きを倒し、ボスだけになったら集中攻撃でボスを倒すって感じで」
シシルーとリディルカは頷き、それに応じる。
「はい」
「うむ。取り巻きは我らに任せるが良い」
僕が感知スキル状況を察知し、それを元にどう戦うかを決めて挑む。それが僕達の基本戦術だ。僕が周囲の状況を察知する能力に秀でているからと、僕が戦術の要となった。可奈芽だけに。
「じゃあ強化魔法かけるよー」
そう言ってシシルーは皆に身体能力強化、武器防具強化、冷気属性耐性付与といった多様な強化魔法をかけていく。
シシルーはバフ系の魔法が得意だけど回復魔法が苦手、一応治癒は出来るけれど、回復には相当時間がかかるらしく、少なくとも戦闘時に使える代物ではないとの事。なので戦闘前に強化しまくって、いっその事被ダメを無くしてしまおうという事になったのだ。
一通り強化してもらい、僕達はボスフロアへと突入した。
「では挨拶がわりに。このリディルカの火炎魔法をお見舞いしてやろう」
リディルカはそう言って、指揮棒の様に杖を振り、赤い光弾をボスであるフロストウルフ目がけて放った。当たった光弾は爆破し、さながらナパーム弾の如く強烈な熱で着弾地点の周囲を焼いた。
リディルカはパーティーのメインアタッカーだ。あらゆる属性の攻撃魔法が使え、大半のモンスターを一撃で葬る高火力。魔法使いキャラの理想形の一つと言っていいだろう。雑魚相手であれば先制攻撃で倒せるこの火力あるからこそ、大半の相手を接近する前に倒すという戦い方が成り立っている。
ゴウゴウと燃えるフロストウルフだったが、倒せてはいない。すぐに自身の冷気魔法で火を消してしまった。でも、すぐ近くにいた取り巻きのアイスウルフはその攻撃で倒せている。残るアイスウルフは後8体。
フロストウルフは僕達の方へと突撃してくる。残ったアイスウルフもだ。
ニーリェは盾を構え突進し、ぶつかる事でフロストウルフの突撃を止めた。
「お前の相手はオレだぜ」
通せんぼされたフロストウルフはニーリェを噛んだり引っかいたりで攻撃するが、頑丈なニーリェを傷つける事は出来ない。物理攻撃が効かないと分かるや冷気魔法も放つが、シシルーが冷気体制を付与しているため効いていない。正に鉄壁だった。
ニーリェは使えるスキルがとても少なく、突撃してぶつかるタイプのスキルしかないとの事。だけどニーリェはスキル関係なく純粋に強い。そのフィジカルだけで前衛の役割をこなせてしまう程に。雑魚相手にはパーティーの壁役に、ボス相手には足止めと、その時にあった役割をこなす。
足止めが出来たのはボスだけで、残りのアイスウルフはバラけてこっちに向かって来る。
リディルカは迎え撃つべく杖を振り、宙に複数の火球を作ってモンスターに放つ。フレイムリザードが使っていたのと同じ魔法だけど、リディルカのものは見るからに威力が高い。一つ一つがまるで爆撃の様だ。
強烈な魔法が炸裂した事で土煙が舞い、周囲の視界を遮った。
「残りは任せた!」
「任された!」
リディルカの声に僕は即座に応じる。
周囲は土煙で視界が悪いけど、僕には関係ない。土煙の中、魔法の直撃を避けた2匹が向かって来るのが分かる。そして、直撃を避けたもののダメージを受けているという事も。お得意の感知スキルでお見通しだ。
僕は2匹のモンスターを向かって来る順に切り伏せた。弱っている事もあり、僕の攻撃でも十分止めになる。
これで取り巻きは倒した。残るはボスのみ。
「畳みかけるぞ!」
「いっくよー!」
ニーリェの合図と共にシシルーは全員に追加の強化魔法をかけ、フロストウルフに総攻撃。数的有利を作っての波状攻撃でフロストウルフを撃破した。
ボスを撃破した僕達は「イエーイ」とハイタッチを交わし、互いを称え合った。
「いいじゃんいいじゃん。僕らイケルじゃん」
「ですね。可奈芽さんの感知スキルで安全に進む事ができますし、頑丈で力強いニーリェさんは前衛としてとても心強いですし、リディルカさんの魔法は一撃でほとんどのモンスターを倒せちゃいますし」
「そう言うシシルーもなかなかだぜ?シシルーの強化魔法のおかげで、ボスの攻撃もへっちゃらだからなぁ」
「可奈芽、シシルー、ニーリェ、皆それぞれが強く、皆素晴らしい。このリディルカ感銘である」
そして、僕は宙に浮かぶ配信魔道具に向けて進捗を語る。
「これにて、今回の目標である10層のボス討伐成功。後は少しだけ探索を続けて、そのまま帰還しようと思いまーす」
僕は他の3人の顔を見て「せーの」と合図をして、息を合わせて言い放つ。
「「「「リトライズでしたー」」」」
リトライズ。それが僕達のパーティー名だ。
僕は転生をして人生の再挑戦。他の3人は新しいパーティーに入っての再挑戦。再挑戦に挑む4人という事でこの名前にした。
これから僕達はこの4人で色んなダンジョンに挑んでいくのだ。




