第4話 絶望の淵に差し込む異変
森の木々の間から、先ほどと同じほどの巨体の魔獣が、次々と姿を現し、20体以上が周囲を取り囲んでいたのだ。
それらの魔獣の赤く光る瞳は、まるで三人を餌食にするかのように鋭く輝き、唸り声が森全体に響き渡る。フレイは喉の奥が凍りつくような感覚を覚えた。
「そんな、これじゃ。」
アルゴも剣を握りしめながら、歯を食いしばっていた。
「万事休すか、これが、俺たちの最後かもしれないな。」
フレイも、アイリスも、全身に冷たい汗が流れ、足元が震えた。三人は死を目前にしていたが、それでも、村を守るため、ここで引くわけにはいかなかった。
「村には行かせない。一匹でも多くここで仕留めてやる!」
フレイは心の底から絞り出すように叫び、剣を再び握り直した。
アイリスも、震えながらも炎の魔力を手に宿し、再び力を込める。
その瞬間、アルゴがとどめを刺して倒れていた魔獣の体が、異様な光を放ち始めた。
「なんだ?この光は!?」
フレイ、アルゴ、アイリスが驚きに目を見張った。
次の瞬間、魔獣の体が強烈な光と共に爆発した。
爆発の閃光とともに、フレイは激しい衝撃を感じた。
周囲が一瞬で白く染まり、何が起こったのか理解する間もなく、全身が浮き上がるような感覚に包まれた。
アルゴやアイリスの声も届かず、ただ無力にその光の中に飲み込まれていく自分を感じた。
しかし、次の瞬間、フレイはゆっくりと目を開けると、彼の体を支えるはずの硬い地面の感触はなく、代わりに、心地よい風が穏やかに肌を撫でていた。
その柔らかい感覚に、彼はゆっくりと上体を起こし、周囲を見渡した。
目の前に広がるのは、まるで何事もなかったかのような、いつもと変わらないメラル村の風景だった。
「ここは?」
フレイは驚きと困惑の入り混じった声を漏らした。
あの爆発の衝撃で吹き飛ばされたはずなのに、どういうわけか、今は村の丘に横たわっている。
耳を澄ませば、村からは人々の声が聞こえ、平和で穏やかな生活音が心地よく響いてくる。
「夢、だったのか?」
フレイは額に手をやり、冷や汗を拭いながらゆっくりと立ち上がった。
全身を包んでいた恐怖や緊張感が、一気に抜けていくのを感じる。それと同時に、心の奥底から湧き上がる不思議な感覚に、彼は困惑していた。
目の前にいたはずの魔獣の群れも、そしてその後に起こった爆発も、まるで幻のように跡形もなく消えてしまっていたのだ。
「フレイ!」
遠くから響いてくる声に、フレイは思わず振り返った。