宿屋の女は苦労人
俺はまた彷徨い歩いていた。
酔って吐いての繰り返しで、来た道は覚えてねえ。
木陰で一休みだ。
ここはどこだ?聞いたこともねえ町だ。
うあ〜、眠っちまった。
すっかり夜だ。さて、どうするか。
酒も切れて来やがったしな。
俺は山の麓に宿屋があると聞いて、歩き出した。
暗い山ん中でひとりきり。
シラフで来ると不気味さが余計伝わってくる。
「すいません?もしかして宿をお探しですか?」
後ろから女性の声が聞こえたので、振り返る。
そこには綺麗な女性がいた。
そうだと答えると案内してくれた。
「この辺、夜は山賊が出ますから出歩かない方がいいですよ」
ご親切にどうも。
俺は彼女が案内してくれた宿屋に泊まる事にした。
宿屋は彼女が経営していた。
一泊300ドルはかなり高いが、仕方がない。
これだけ高いくせに便所はボロボロ、部屋はホコリまみれときた。
明日になったらすぐに出ようと決め、酒は売ってたので購入し、晩酌してベッドへと向かう。
部屋を真っ暗にして寝ようとした時、ドアが開く音がした。
薄目で目を凝らすと、女が銃を構えて立っている。
すぐに灯りを付けた。
女が撃ってきたので、すぐにベッドの横へ倒れ込み、
コブラで反撃する。
女は逃げていく。すぐに後を追った。
女は負傷しているようだ。血が床を濡らしていた。
俺は外に出て止まれと叫ぶが、女はそこで倒れた。
近寄り、顔を見ると女の正体は宿屋の経営者だった。
「ごめんなさい。いつかはこうなると思っていた。」
女は最後に自分が山賊の正体であり、山賊が出るからという理由を付けて宿に泊まらせ、金品を強奪して殺していたと明かした。
宿屋は随分前から赤字だったらしい。
裏山には無数の死体が埋められていた。
女は謝りながら息絶えた。
俺は女を宿屋に運び、火を放つ。
地獄で再会できたら、今度は飯のひとつぐらい作ってくれよと言い残して。