vol.009 食堂の一件
姫の扱いは一般兵と同じと魔王が決めた頃、食堂ではちょっとした問題が発生した
ときは少し前に遡る
「おばちゃん、マホロアムラーメンお願い」
「マホロアムラーメンね。…!?」
食堂のおばちゃんが桃華が人間なことに気付き、キキョウに連絡した。そして、キキョウが到着する前に桃華と食堂のおばちゃんは仲良くなっていた
「美味し~!」
「あんた、このラーメンの良さが分かるのかい」
「うん!醤油ベースのラーメンで…」
桃華は敵地であることを気にせず長々と良かったところを語った
「人間の割にこのラーメンの良さが分かるとは。気に入ったわよ」
「ねぇ、おばちゃん。これに隠し味程度に酒粕を入れてみたら?」
「酒粕かい?」
おばちゃんと話していると、食堂の魔物たちに桃華にバレないように命令が下された。食堂にいる人間の女には手を出すなと
ちょうどその後に厄介な奴が食堂にやってきた
「邪魔だ、どけ」
魔王城一の厄介者の目に桃華が映ったため、厄介者は桃華の方に来た
「何でこんなところに人間の女が…いや、そんなのどうでも良い。人間ならどんなことしてもいいだろうな。しかも女だ」
下衆な笑みを浮かべる男の前に食堂のおばちゃんが立ち塞がった
「この子には手出しさせないよ」
「ババアは引っ込んでろ」
厄介者の手によって食堂のおばちゃんは食堂の入り口まで吹き飛ばされてしまった
「さて、お前はどうしてやろうか」
「…食堂のおばちゃんを…」
「ああん!!」
「氷結魔法 "アイスロック"」
桃華は厄介者の頭上に氷のランスを生成して、それを厄介者に向かって落とした
「どう、これで頭が冷えたかしら?」
「ふざけるなよ、人間の女如きが!!!」
「うるさい。氷結魔法 "アイスロック"」
「はん、同じのを2回も食らうかっつうの」
ただ、桃華が放ったのはアイスロックではなかった
「…と、見せかけて灼熱魔法ドーン」
桃華の罠にはまった厄介者は丸焦げになった
「…くそ、覚えてろよ!!」
そんな捨て台詞を吐いて厄介者は食堂から姿を消した
厄介者が消えた食堂では歓喜の声が上がった。長い間、客も料理人たちもあの厄介者に悩まされていたからだ
「嬢ちゃん、強いね!」
「それほどでも」
「名前はなんて言うんだい」
「桃華です」
こうして、桃華は魔王城の中で密かに気に入られていった
こうなったのにも理由がある。人間を恨む者は人間との戦線に派遣され、魔王城内にいるのは比較的人間に対して嫌悪感を抱いていなかったり友好的な者たちだからなのだ
次話はいつも通り水曜日の21時に更新します。