vol.005 ツバキ
「魔王様~戻ってきましたか…」
「あ」
よりによって最悪な現場を腹心であるツバキに見られた
今の姿は見た目だけ男の第2形態ではなく、見た目も女の第1形態のため、腹心でなければ、女同士で娘娘してるだけに見えるだろう。だが、あいにくと相手は魔王が女だと知っていて、女の姿を知っているのである。次に腹心がとる行動は、魔王に襲いかかっている者を倒すことである
ちなみに、腹心以外の前では常に第2形態でいるため、周りに男だと思われている…正確には思われるようにしているのである
「魔王様に襲いかかる不届き者め!!今成敗してくれる!!」
(あんまり、この状態のときに魔王って言わないで欲しいな)
魔王が女だと知っている姫だったからよかったものの、姫が魔王が女だと知らなかったら、バレる可能性があるのだ
「ちょっと、ツバキ!!剣を下ろして!彼女は私が拐ってきた人間の姫よ」
「ふふふ、魔王様、御冗談を。人間の姫が魔王に襲いかかるわけないですよ」
「ただ単に、胸を揉まれただけだから!」
「魔王様の…胸を…私も1回も揉んだことないと言うのに!!」
「お前もそっち側かい!」
「姫の影武者よ、魔王様の胸を無断で揉んだ罪は重い!!」
「ちょっと一旦落ち着いて!!」
~数分後~
「落ち着いたか?ツバキ」
「ええ、人間の姫も申し訳ありませんでした」
「いえ、原因は私が揉んだせいですから」
「それにしても、ほかの奴らはどこ行ったんですか?空気読んでどっか行ったとか?でも彼らは魔王様が女性だと知らない気が…」
「ツバキ…実は…」
ここでことの顛末を話した
「…この計画って念のために六曜4人も行かせたんですよね。それで、あいつらは勇者1人に敗れたと」
「その通りよ。私だって下手したらあそこで死んでたよ」
「もしかして、先代勇者よりも強いんですか…」
「絶対に先代勇者よりも強いな」
「六曜が4人も殺された今、人間たちが魔王様の元まで来ちゃいますよ」
「じゃあ、当面の間の目的は魔王軍の強化して勇者と戦えるのを増やすのとゆり、向日葵、蓮央、桜の遺体の奪還だな。遺体さえあればどんな状況だろうと蘇生できるはずだし」
「でも、勇者は蘇生を防ぐためにあいつらを荼毘に付したんじゃないですか?」
「いくら勇者だろうとそんなこと…しそうだな。先代勇者もそうだったし」
先代勇者という前例があるため、否定できずにいた
「正確には、先代勇者は初手から灼熱魔法で骨すら残らないほどの火力で焼き尽くされましたけどね」
「嫌なこと思い出させないでくれる」
「話し始めたのは魔王様ですけどね」
「まぁ、大丈夫でしょ。あの件が起きてから、死んだときに防腐と防火の魔法が発動するようにしたから」
「いつの間に」
「あの…すいません…」
姫が遠慮気味に言った
「私が言うべきじゃないんですけど…服着たらどうです?」