vol.003 逃亡
「ちっ、流石に魔王相手に本気を隠しながら戦えねぇか。そうこなくちゃ!」
「…」
魔王は怒りで周りが見えていなかった
だからこそ、当初の目的を忘れかけていた
「フレイムアロー!!!」
「サンダーパニック」
魔王は形態変化することを忘れ、怒りのままに攻撃していた
しかし、魔王は若干勇者に押されていた
それを見た姫はこのままだと魔王は勇者に敗北し、この城から出る機会を失うと考えた
だからこそ、姫は魔王に助け船を出した
「錯乱魔法 "ミスタルテ"」
姫は部屋中に煙幕を張った
流石に視界が悪く、姫に攻撃する可能性があるなかで攻撃を放つとは思わなかったからだ
姫は前々から用意していたリュックサックを取り出し、魔王に近づいた
「魔王さん、今のうちに行くわよ!」
姫は勇者には聞こえない声量で言った
そして、その声で魔王は我に返った
「でもあいつらが…」
「蘇生魔法は全身が残ってないとダメでしょ。それに遺体がどこにあるか分からないよ」
「…悪いな、ゆり、蓮、向日葵、桜。絶対…絶対に後で助けに行くからな」
そして魔王は姫を連れて窓から飛び降りた
「いたぞ!!魔王だ!!」
「ち、こっちにも人いるのかよ」
「おい、攻撃止めろ!魔王は姫様を連れている!」
「姫様をどうするつもりだ!」
「どうするって、拐ってくんだよ」
「待ちやがれ!」
もたもたしていると、勇者が外に来てしまった
「おお、勇者様だ!!」
「勇者様!!」
後ろに退路があるので先ほどよりは状況がいいがピンチには変わりなかった
「なぁ姫、少し目を瞑って、耳を塞いでおけ」
「わ、分かったわ」
城の外に行けば転移魔法で魔王城の近くの森の中に帰還できる
そのためには城の外に出る必要があった
「大量に持ってきてよかった」
魔王は懐から閃光弾を取り出し、いろんなところに投げつけた
そして、目が眩んでいる間に紅蓮城の庭から外に出ることに成功した
「転移魔法 "テレポート"」
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閃光弾の威力が弱くなったか、目が慣れてきたかで周りが見えるようになったときにはすでに魔王はいなくなっていた
「勇者様、魔王に姫を拐われた上、逃げられてしまいました」
「そうだな」
「これから勇者様はいかがなさいますか」
「俺はとりあえず姫様を救出しないといけないな。あと…いつまでその姿してるんだ」
「…バレました?」
「バレるに決まってるだろ。翔太」
男の名前を呼ぶと護衛は姿を変えた
「いけると思ったんですけどね」
「とりあえず、作戦通りに頼んだ」