vol.002 誘拐計画
「ここが姫の部屋か…」
勇者が姫の部屋に来る前に姫の部屋に来ていた者がいた。魔族を統べる者、魔王だった
「あなた、誰?」
「城の掃除係です」
「城の掃除係変わったのね…って、そんな角の生えてる奴が掃除係なわけないでしょ。正体を現しなさい」
そこで初めて魔王は角を隠すのを忘れていたことに気づいた
「よく分かったな。俺は魔王だ」
「もしかして…私を誘拐しに来たとか?」
「そうだな」
「…ようやく…」
「ん?」
「ようやくこの地獄から抜け出せる…」
「地獄?」
「ねぇ、魔王さん。拐うつもりなら早く拐うってくれないかしら?こんなところにいたくないから。私のことを物としか思わないあの男のいる城から今すぐいなくなりたいから」
「…」
想定と異なる言葉を姫の口から聞いて少し混乱していた
本来なら、人間王の娘である姫を人質にして、人間王と交渉するつもりだったのだが、姫の話しぶりからして親子関係は最悪だろう。すると、人間王が交渉に応じるかどうか
「どうしたのかしら?」
「…何でもないわ」
「じゃあ、早く拐ってください」
とりあえず、初手の計画通りに姫を誘拐することにした
「ここが姫の部屋か」
姫を連れて城を出ようとすると、部屋の外から声がした
「魔王さん!早くして!勇者よ!!」
「勇者かよ。こりねぇな…こりてたら降伏するか」
「そんなことより早く!」
残念ながら、城の外に出る前に勇者が中に入ってきた
すぐさま姫を人質にとった
「来るな。来るんじゃねえ。こいつがどうなってもいいのか」
勿論、姫をどうにかするつもりはない
「…魔王か。あんな奴らの上司がこんなところで姫様を拐おうとしてるなんて」
「あんな奴ら…?」
おそらく、ゆりたちのことを言っているのだろう
「そうだ、せっかくだから教えてやろうか。あいつらの末路を」
「…」
「全員最期には魔王の名前を口に出して。ああ、あれはとても滑稽だったな」
「ゆりたちはどうした」
「ゆりって言うのはあいつらのことかな?そいつらなら殺したよ」
魔王は自身の感情を制御出来ていなかった
「貴様!!!」
「はは、まさか魔王が感情任せに攻撃してくるとは」
そうして、魔王は正面から勇者の斬撃を受けてしまった
「…痛っ…」
痛みを我慢しながら、勇者の腕を奪うことに成功した。しかし…
「残念ながら、腕程度回復魔法で元通りになるんだよね」
「ゆりたちを返しやがれ!!」
「そんなに大事なら、奪い返してみろ。魔王!!」