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98話 父親の愛情

女王との話を終えた私は部屋に戻って来た。部屋の中は、父親のカイムと王子達と王女の四人が私を待っていた。アレクシア女王と会う前なら、素直に「おかえりなさい」「ただいま戻りました」と言えたが、今の私には言える気力がない。私の表情をみて、父親のカイムが


「どうしたんだい?ルセリア。顔色が悪いぞ?」

「ほんとですね?大丈夫ですか?」

「大丈夫か?お前?」

「お姉様?どうしたんですか?」


自分ではわからないが、だいぶ落ち込んだ顔をしているのかもしれない。女王との話をしゃべらないわけに

もいけないと思い。さきほど、女王と話した内容をサタン王子の魔眼のところだけ、話さないようにして説明した。自分が女王の圧に負けて、予知の魔眼の話してしまったと、


「そうか、話してしまったのか。しかし、それは仕方ないね」

「そうですね。僕でもきっと話してますよ」

「しかし、この国の王族もえげつないなぁ、内の両親に負けてないなぁ」

「ちょっと、ロベルトお兄様!」


特に怒っていない様子のみんなに驚く。


「怒らないんですか?」


「怒る理由がないよ?ルセリア」

父親のカイムの言葉にみんながうなずいてくれる。


「////ありがとうございます」


泣きたくなるが、ここで泣いたら、精神年齢が大人の私は負けだと思い、何とかこらえた。それからは、エクリシアからも聞いたが、この五日間のことを話し合った。一番みんなが驚いたのが、やはりローザの誘拐事件だった。予知の魔眼で事件を知り、サタン王子とメシスの協力で事件を見事解決したと話すとみんな興奮していた。ただ、私が一人で家に突入したことを話したら、


「ルセリア、本当に無茶はやめてくれよ」

「本当に、大丈夫だったんですか?ルセリア」

「っていうか?大人を投げたのか?お前が?流石にウソだろ」

「さすが、お姉さまです」


こうして何度も、誘拐事件の話をすることになり、語り疲れた私は、その夜すぐに眠ってしまった。



夜中になりルセリアが先ほど訪れた部屋に男がノックをする。「どうぞ」と言われ、部屋に入ると、女王と王配の二人が迎えてくれる。


「お待ちしておりました。アストライア公爵。どうぞ、かけてください」

「失礼します。」


座るとカイムは早速、ルセリアから聞いたことが本当かどうか確認した。


「ええ、少し怖がられてしましましたが、ルセリア嬢が言ったことは間違いありません」

「はぁーそうですか。」


カイムがため息をはく。


「アストライア公爵、我々も事象が事象だったため、確認しないわけにもいかなかった。本当に申し訳ない」

王配がカイムに謝る。


「いえ、私も貴族ですから理解はしています。しかし、あの子はまだ12歳の子供です。貴族の社会、大人の社会というものにまだ疎いのです。今後はそのことを踏まえて接してあげてください」

「いい父親ですね、公爵は」


女王が微笑みを向ける。公爵に対してもそうだが、ルセリアがサタンの過去視の魔眼のことを彼らに話していないことが、会話の中でわかった。本当に律儀な令嬢だと女王は思う。


「ときに、アストライア公爵、ユースティテ王国はルセリア嬢の予知の魔眼をいつまで隠しておくつもりですか?予知の魔眼はその国の命運を左右するもの。どの国からも求められるものです。本来なら聖女として、世界を導かなければいけません」


「わかっています。アレクシア女王。ただ、今はまだ、普通の女の子としての生活を楽しんでほしいんです。これから先、予知の魔眼を持っていることが民衆に知られ聖女としての生活を余儀なくされたとしても、せめてそれまでは普通の幸せを送らせてあげたいんです。どうか、父親の我儘をお聞きください」

カイムが女王と王配に頭を下げる。

「アストライア公爵。頭を上げてください」

「・・・わかりました。ただし、予知による有益な情報は我が国に優先して流してください」


「わかりました」


話も終わり肩の力がぬける。

カイムが立ち上がろうとしたとき、アレクシア女王から


「話は変わりますが、ルセリア嬢に婚約者はおりますか?」

「?いえ。まだおりませんが?なぜ?」


この流れはと、カイムは思う。


「ぜひ、我が息子の婚約者になっていただきたいのです」


やっぱりですか。予想通りの答えが女王から帰って来た。それからは、座り直しユースティテ王国の国王陛下からも同じ申し出があり、それをルセリアが断ったこと。さらに他の貴族の子息からも釣書が何通も来ているが、すべて断っているということを女王に話した。


「手強いですね。ルセリア嬢」


アレクシア女王が難しい顔をする。その様子はいつも自国で見る国王陛下と王妃にそっくりだとカイムは思い。カイムが部屋から退室した後も、女王と王配は話し込んでいた。



その日の昼に誘拐事件とは別に違う事件が起こっていた。


ガガガガガガガガガガガガカッ‼︎‼︎


ガラガラと瓦礫が崩れ落ちる。

まるで下手な石積みのようにガタガタと崖が震え、上部からボロボロと溢れるように崩れていく。

その様子を見ていたユースティテ王国の騎士とジオテニア国の衛兵は驚きを隠せない。


「伝令、直ちに王城にこのことを報告しろ」

「今すぐ、女王陛下にこのことを伝えろ」


「「イリンガの谷で崩落が起きったと!!」」


ユースティテ王国の騎士は国王から雨で地盤が緩んでいるため、崩落の危険があるかもしれないということもあり、その道を通らないようにと補導をしていた。ジオテニア国の衛兵も同じ理由で、商人や近くの村人が道を通ろうとすれば、理由を話し、迂回してもらっていた。この一週間何度か山ということもあり、雨が降ることもあったが、特に問題はなかった。そのため明日明後日には、撤退しようと両国とも思っていた矢先だった。

イリンガの山が崩落した知らせが城に届くのは、次の日の朝の事だった。

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