86話 旅の楽しみ
騎士たちが、イリンガの谷に向けて出発した翌日、私たちは別のルートから隣国へ向かっていた。
「予定より遅くなってしまいましたね。」
アトランが馬車から窓の外を眺めながら呟いた。エクリシアも釣られるように窓の外を覗き込んでいる。…まぁ、遅くなったのは、安全なルートを選ぶために、ずっと大人たちが議論していたからだ。馬車が緩やかではあるが道を進んでいく。馬車の周りには、護衛の騎士が多くいた。お土産をは運ぶ荷馬車もいるため前世の時に学んだ歴史の参勤交代のような大名行列が続いている。大名ではなく貴族だが。
「ごめんなさい…。私の準備が遅くなってしまったから」
「仕方ないでよ。お姉様。昨日の今日ですから、あわててしまうのは仕方ありません」
夕食時、父親から騎士団が出動したと聞かされ、隣国への訪問についても通る道を変えて、明日出発することに決まったと話があった。本来は一日早く出る荷馬車も一緒に向かう。これにより護衛の数を減らすためだと。
予定されていない道なので、移動していると大きな道幅が狭くなってくる。しかし、宰相や国王が選んだ道ということもあり、見晴らしがよく襲撃には向いていない道だった。
「自分たちの国ですが、すべてを知っているわけではありませんから、こうして馬車で王都の外に出るときはワクワクします」
「そうか、俺は王都にいた方がいろいろなものがあるから、あまりだなぁ」
「ロベルトお兄さまは、庶民の暮らしをしてもいいかもしれませんね」
「ロベルト様が桑や鉈をもって、畑を耕す姿が想像できません」
「あははは、確かに」
「おい、バカにしてるのか」
たわいない話をしながら私たちは、変わっていく景色を楽しんだ。
移動時間が五日間ということもあり、夜には王都ほどではないが、田舎の村ではなく、都の宿泊施設のようなところで一泊して、また朝には馬車に乗って隣国を目指す。
王族、貴族ともなれば、各街や村に泊まることにより、金を落とす必要がある。護衛を含めれば、それなりの人数になり、多少なりとも経済に影響がある。
旅で一番の楽しみなのは食事だ。野菜がメインだったり、肉がメインだったりと、その土地で違った料理が出て来る。
一日目の食事は、食事は肉とパンとスープだった。日本の料理と比べるまでもなくシンプルな調理方法だったが、味は案外悪くなかった。
二日目の食事は、野菜がたくさん入った鍋料理だった。コンソメスープにたくさんの野菜が入った料理、薄味だが甘い野菜、苦い野菜など様々な味がスープに溶け出し、ちょうどいい味になている。長時間煮込んでいるのか、野菜はすべて固くない。
三日目も四日目も、おいしい料理が出てきて、満足だった。
ただ、一番つらかったのは寝る時間だ。両親と一緒の部屋で寝るつもりが、エクリシアから一緒に寝てくださいと懇願され、断れず一緒な部屋で眠ることになる。それだけならいいが、アトランやロベルトのことを尋ねられ、解答に非常に困った。
「お姉様、アトランお兄様はすごく頭がいんですよ。それに優しいですし、将来、立派な国王になりますよ」
「そうですね。学園でも成績は一番ですから」
「それに、優しいんですよ。私が困っていたときはいつも一緒にいてくれて、パーティーなどでは、常に私に横にいてくれて、・・・・・」
アトランの自慢?話が長い。
「ロベルトお兄様は、つんつんしていますが真面目で心が熱い方なんです。最近は学園でもお友達ができたことを嬉しそうにされていました。本人は気づいていないようですが、昔と比べよく笑うようになりました」
ロベルトの観察?話が長い。
この四日間はエクリシアの兄たちの話で、なかなか寝かせてもらえなかった。疲れるほどではないが、夜になると、内容は違うが、それでもアトランとロベルトの話をされる。
これ、私洗脳されてない?と思ってしまうほどだった。
そして、五日後、無事ジオテニア国に到着した。
隣国であるユースティティア王国と比べて、国土は二分の一以下の比較的小さな国だ。半分が海に面している為、港が充実しており貿易が盛んに行われている。海の向こうの様々な国との貿易から、他の近隣諸国が手に入らないような珍しい輸入品も多く仕入れている貿易国。そして、稲や麦を作ることでも有名な国だ。
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