82話 夢にみる
雨の音で目を覚ます。長期休みに入った初日なのに、外は昨日と同じくらい雨が降っていた。何か夢をみたような気もするが思い出せそうで、思い出せない。
頭が少し痛くて、額を触ると少し熱がある様だった。額に手を当てた私はその手を下におろしていく。下ろしていく手の指先が眼の瞼に触れたとき、、額よりも眼の周りのほうが熱いことに気づく。
「何、これ?」
疑問に思いながらも、頭が少し痛いこと以外は問題ないため、アリサを読んで、着替えを手伝ってもらう。
朝食をとるために、父親と母親が待つ部屋に向かう。
「おはよう、ルセリア。?少し、顔が赤いようだが大丈夫かい」
「医者を呼んだ方がいいのではないですか」
両親が私の様子を心配してくれる。
「大丈夫です。休んでいれば元気になりますよ」
「・・・なら、朝食が終わったら、横になって休みなさい。今日から学園は休みだから、問題ないだろう。それにこの雨だ。今日はどちらにしろ屋敷から出れないだろう」
「そうですね。ルセリア、欲しいものがあったら、言ってくださいね。なんでも用意させますよ」
「はい、ありがとうございます。お父様、お母様」
食欲に問題はなく、出された朝食は完食した。
部屋に帰ってきて、ベッドに横になり休む。
横になっていると、母親のティアナが入って来た。
「お母様」
「休んでいますか?ルセリア」
ベッドの横にある椅子に座り、看病してくれる。
「ルセリア、もしかしたら、学園生活が休みになって、緊張感がなくなったから、体調を崩したのかも知れないですね」
「緊張感ですか?確かに、そうかもしれませんね」
改めて、半年過ごした学園生活を思い出す。クラスの事、レコーラ村の事、試験の事、そして明後日から行く隣国への訪問について。
食事の時では話さない学園の話を母親にしていく。
「学園生活は楽しそうですね。ルセリア」
「はい、本当に楽しい毎日を送っています」
「ねぇ、ルセリア、・・・まだ記憶は戻りませんか?」
「はい、まだ思い出せません。ごめんなさい。お母様」
「いえ、いいのです」
少し寂しそうな表情をする。そのあと一時間くらい看病をしてくれたティアナは自分の部屋に戻っていった。
窓のほうを向くと、まだ雨が勢いよく降っていた。雨の音を聞きながら私は休んだ。
目を覚ますと、雨はまだ降っていた。雨雲のため空は暗い。大分寝ていたようだが、おかげで頭痛もなく落ち着いている。
鈴を鳴らすとアリサが入ってきて、汗をかいた服の着替えを手伝ってもらう。今の時間が夕食の2時間前ということを教えてもらいびっくりする。昼食の時になぜ起さなかったのか尋ねると、「よく寝ていたので起こさないように」と母親のティアナが言ったそうだ。あれから、何度か見に来てくれたとアリサが教えてくれる。
両親が待つ夕食に向かう。
「ルセリア、もう体調は大丈夫なのかい?」
「はい、お母様にも看病してもらたので、大丈夫です」
「そうか。では夕食をいただこう」
「はい」
「いただきます」
今日一日は何もせず、横になっているだけだったが、夜になると睡魔は襲って来るもので、日中寝ていてもまた眠くなってくる。
「これは・・・いったい?崖が崩落したのか?」
隊長の騎士から隣国へ応援を頼まれ先行したギャレンが隣国の兵士たちを連れて戻ってきた。瓦礫の上には崖上から落ちた賊が埋まったり、転がったりしていた。ギャレンは隊長が騎士の仲間が、馬車の中にいた人達が瓦礫の下敷きになったことを理解する。
「ああああああああああああああああああーーーーーーー」
喉から声が張り上がる。
しばらくすると、後方の部隊に状況を伝え援軍を連れてインガーが戻ってくる。
「これは・・・・?」
到着したインガーは瓦礫の上に走り出す。馬車があったと思う場所に向かう。そこではギャレンが一人泣きながら、手で瓦礫を掘り起していた。手に血がにじんでもやめようとせず、ひたすら瓦礫を掘っている。
「ギャレン、お前?」
ギャレンがインガーのほうを向く。その瞳に光はなく、絶望の色が色濃くでいた。そしてまた瓦礫のほうに向きなおり、また掘っていく。
その姿を見て、インガーは、全身が脱力し、ゆらゆらと辺りを見回す。
「あぁ、あああ、ああああーーーーーー」
叫び、呟き、嘆き、泣く。それしかできなかった。インガーも手で瓦礫を掘り起していく。涙と鼻水を流しながら。最初は何も考えることができなかった。それでも何かしなくてはいられないと思い掘り起こしていく。しかし段々と隊長の顔、仲間の騎士たちの顔、馬車に乗っていた人達の顔を思い出していく。
生きん残ってしまった・・・自分だけが。
守ることができなかった・・・自分は。
助けられなった・・・自分は。
みんなと死ねなかった・・・自分だけが。
これから・・・どう生きればいいのか?
絶望の中瓦礫を掘る二人の騎士に声をかれるものはいなかった。自国の騎士も、隣国の兵士も。
誰一人として。
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