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いさ美で寿司を:大井町

 大井町の駅前といえば駅ビル、アトレ、イトーヨーカドーと十階程度の高さのビルが立ち並ぶ街並みを思い浮かべるであろうか。

 東京は品川区にありながら、山の手の街並みとは違い、どことなくちょっと小綺麗な地方都市を思わせる佇まい。

 だが、この街には古く汚い昭和の東京が残されている。東急の大井町駅を降りて、そこを左折。東にちょいと進んで北に曲がれば、そこが東小路商店街だ。狭く汚い路地、そして狭い店。


 いさ美はその中の一件、立ち食いの寿司屋だ。椅子なんて一つもない。カウンターに肘ついて酒を呑み、寿司を食う店である。

 人数は六人くらいでいっぱいだろうか。

 そこで客が来ると、店主に「ごめんね、いっぱいなんだ」と追い返される。だが常連なら客に「ちょっと詰めてやってくれない?」と言って迎え入れられるような店だ。


 寿司は安い。

 シャリは少なく一貫が小さいのもあるにせよ、ゲソ50円からである。高くても200円台くらいまで。

 だが安いからといって不味い店じゃない。むしろ美味い。

 回転寿司では見かけないような寿司も食べられる。


 私が一番好きな白身魚の寿司は『オジサン』という魚だが、それと出会ったのはこの店であった。

 オジサンはヒメジの一種で小ぶりな魚である。日本だと奄美のあたりで良く獲れるらしい。弾力性のある身にしっかりとした旨味とほのかな甘味を感じさせて素晴らしい。

 ちなみに私は歯応えのある食感の食べ物が好きである傾向が強い。好きな寿司ネタを挙げていくと上位は貝類と烏賊蛸である。無論、海鼠の酢の物は好物である。都内だとなかなか仕入れている店が少なく、またあっても飲み屋なのが難しいところだ。あまり食す機会に恵まれない。


 ともあれここは長く居座れるような店ではない。2、3千円程度で酒を一杯にさらっと寿司を摘んで帰るような店だ。

 店主と常連たちの会話に笑いながら寿司に舌鼓を打ち、満足したら煙草に火を付けて一服。灰皿は無い。吸い殻は床に落としていけと言われるから。

 三和土に吸い殻を落として踏み、金を払って外に出る。隣の客の肩が触れるような狭い店から出てきたのだ。夜の街で伸びを一つ。


 新宿も渋谷もここ数十年で綺麗になった。東急沿線なら武蔵小山も武蔵小杉もだ。横浜の川っぷちのおでん屋台群もなくなってだいぶ経つ。大井町だって西側は再開発が進んでいる。

 この店のような光景もあと何年見られるのか。興味があるなら行ってみると良い。混んでいる店なので入れるかは知らないが。



いさ美

挿絵(By みてみん)

寿司握り

挿絵(By みてみん)

刺身盛り合わせ


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― 新着の感想 ―
[良い点] こんな店って憧れますわ! いいなぁー [一言] 『無論、海鼠の酢の物は好物である』 なんて憎いひと笑い!
[良い点] カウンターだけ、潔し。 [一言] オジサンって鱗が鯉並みで、皮下の血合もタイというより鯉に似てるんですよ。正に海の鯉。ひげ生えてるし。過去に握った事ありますよ。 身質に歯応えを求めるなら…
[良い点] おおっ! 立ち食いのお寿司屋さんなんてあるのですね。 こっちじゃ見たことないです。 >無論、海鼠の酢の物は好物である。 何だろう? この共食い感は。
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