腰塚でコンビーフ丼を:自由が丘
ある夜、ツイッターのトレンドにコンビーフ丼というワードが上がっていた。そんな言葉が流れてきたら思うことは一つである。腰塚のコンビーフ丼が食べたいと。
ちなみに腰塚には千駄木腰塚と黒毛和牛腰塚という別系列のものがあるようだが、関係があるのかどうか良く知らない。以前行ったように私は城南域を中心に動いているので千駄木腰塚には行ったことがないのだ。
さて、昼、自由が丘に行き正面口から左へ。線路沿いを歩けば見えてくるのは肉屋腰塚。高級肉を扱う店である。そして表からは分かりづらいが、横手の路地に回れば上りの階段があり、ここの二階が腰塚の焼肉屋なのである。
メニューを見て改めて悩む。腰塚ランチ、焼肉とミニコンビーフ丼のセットを頼むか、コンビーフ丼を頼むべきかと。だがここは初志貫徹、コンビーフ丼ご飯大盛りであろう。
コンビーフとはcorned beefであり、直訳すれば塩漬け牛肉である。トウモロコシとは関係ない。日本人は台形の缶詰に入った脂で固めたミンチ肉のようなものを思い浮かべるだろうが、別に定義的にはミンチである必要はない。海外の製品でジャーキーのような平たいコンビーフを食べたこともある。
コンビーフの缶詰はそこそこ値の張るものである。100g弱の缶詰が400円くらいするのが一般的か。しかし肉屋の腰塚はさらにその倍以上である。缶詰一つ1000円するのだ。
焼肉屋の腰塚で提供されるランチのコンビーフ丼も当然それを使用しており、1100円だ。一般の牛丼であれば2、3杯食べられる計算になる。
無論、それだけの価値があるからわざわざこの店に来るのである。
丼のご飯の上に載せられたコンビーフ、その色と形状を見るだけで、今までに食べてきたコンビーフとの違いを悟るであろう。
敷き詰められたコンビーフは繊維のようである。塩漬け肉を手で解したそれは適度な太さがあり、柔らかさと食感を両立させるものだ。
肉は赤く、白さがない。それは牛脂が温められて溶けていることを示している。そしてその中央には卵黄が鎮座しており、色のコントラストをなす。
まずは一箸。コンビーフと飯をそのまま口に運び咀嚼。塩漬け肉の塩分と脂の甘さが口内に広がっていく。牛丼みたいにかき込んで食べるものではない。ゆっくりと咀嚼して味を楽しむものだと理解るはずだ。
もう一箸食べたあたりで、卓上に視線をやると良い。そこには醤油、塩、山葵、胡椒がある。
やはりここは山葵の出番であろう。擦り下ろされた山葵を匙で掬って丼に落とす。醤油は好みで少し垂らすかどうか。元よりコンビーフに塩気はある。口に運べば辛味を足すと言うよりは、さっぱりさせるという印象を覚えるだろう。肉と山葵の相性は良い。
そして半分ほどを食べ進めたあたりで、卵の黄身を箸で割る。黄身がコンビーフに、ご飯に染みていくのは良いものである。
ちなみに焼肉にミニコンビーフを頼んでいる場合だと、焼肉のタレをコンビーフに垂らすのも趣深い。
会計した後に、下の肉屋の店舗でメンチコロッケなど買って帰るのもまた良いものである。ここのメンチは美味いのを知っているが、満腹だとなかなか買う気にならないのが問題であるかもしれない。
腰塚
コンビーフ丼