おにやんまでとり天ちくわ天ぶっかけを:五反田
五反田駅には山手線のガード下が2ヶ所あるが、その東の方、池上線の側の通りは隣駅の大崎広小路にかけてなぜか麺屋が立ち並んでいるのだ。
そのガードの脇に、うどん屋の暖簾がある。ランチタイムには店の前、主にサラリーマンたちが列をなしているのが見られるだろう。
安価な店だ。最近値上げしたとはいえ、今なお具なしのうどん350円からである。
今日は昼を食べる暇がなく、この店の前を夕方早い時間に通りがかったので誰も並んでいなかった。そこで久しぶりにお邪魔することにしたのである。
コの字型のカウンターのみがある、狭く、椅子のない店内。立ち食い蕎麦と言っても椅子を用意するようになったチェーン店などとは違う、本当に10人ばかりがカウンターに沿って立って食べるしかない店だ。
ちなみに昭和の戦後からやってますか? と言いたくなるような店構えだが、これでもまだこの店ができて20年経っていないのである。
さて、ランチには遅すぎ、ディナーには早すぎる17時前、それでもカウンターは半分以上埋まっていたし、私の後にもすぐ客が入ってくる。それはそうだ、この店のサイズで1日に1000人の客を捌くというのだから。
今日はまだ3月上旬というのに暑い。店外の食券機で注文したのはぶっかけ、冷たいうどんである。腹も減っていたので、ちょいと奮発してとり天とちくわ天までのせてやることにしよう。と言っても600円程度にしかならないが。
とり天、鶏肉の天麩羅である。大分県が発祥であり、関西では比較的親しまれているが、かつては都内でもあまり見かけることがなかった食べ物だ。少なくとも私が最初にとり天を食べたのは大学在学中か卒業した後である。
おにやんまの社長は香川県出身。つまりこの店は讃岐うどん。讃岐うどんの有名チェーン店にもとり天があるし、天丼の有名チェーンにもとり天があるが……正直なところ私はとり天に美味しいという印象はなかった。
なんというか、胸肉やささみのパサついている印象だったのだ。これなら他の天麩羅を食べたほうが良いと。
その印象を変えたのが、このおにやんまである。
パサつきを感じさせない肉を天麩羅に閉じ込め、噛めば熱い肉汁が溢れ出す。
味付けはもちろん、客が常に回転しているので、常に揚げたて熱々の天麩羅が供されるというのも大きいのだろう。
卓上の醤油をちょいとかけて齧るのもまた美味い。
つるつる、しこしこの冷たいうどんが少なめのタレの中に。
美味い。
うどんは自宅でもよく食べる。関東風のうどんは熱いのに限る。そう思っているが、讃岐うどんや氷見うどんのような腰のある麺は冷たいのを食べるのが好みであったりする。
今年初の冷たいうどんが美味いものであったことに満足してつるりとたいらげる。
そして店を出れば、すぐに次の客が私のいたカウンターにつく。人気店なだけのことはあるのであった。
おにやんま
とり天ぶっかけうどん