みはしで赤飯を:上野
東京都内であんみつの名店といえばどこだろうか。歴史あるのは浅草の梅園か銀座の若松か。
江戸や明治時代の創業ほどの歴史はないにせよ、第二次世界大戦後すぐの創業で、あんみつの名店といえば必ず名前の上がる店がこの上野のみはしだろう。
みはしのあんみつが美味いことくらいはもちろん知っている。この日は夕方にアメ横の店で会食の予定があり、参加者からその前にみはしであんみつでも食いたいという話があったのだ。
とはいえこの日は平日、仕事である。私は朝から根を詰めて仕事を終わらせて、昼食をとる暇もなく急ぎ上野へと向かったのである。
「すいません、ちょっと到着遅れます」
と連絡がある。まあそういうものだ。
さて、上野である。ファストフードでも行けばちょうど良い時間ではあろうが、せっかくここまで来たしこれから美味いものを食うというのにそれで腹を満たしてしまうのは癪である。
とはいえしっかりした店で食事をするには時間が足りない。
というわけで先にみはしに入って、何か腹に入れておこうということになった。そう、甘味だけの店ではないのである。
私はところてんが好きで、昔ここでところてんを食べた記憶はある。それ以外にも磯部焼きなどがあるのも知っている。
しかしそれらではちょっと今の腹には足りぬ。今日座ってメニューを見た時、目に止まったもの。それが赤飯であった。
赤飯は結構好きだ。
コンビニなどのおにぎりにも赤飯があるが、たまに食べる。
また私が住んでいる地元の祭りがあるのだが、そこで箱入りの赤飯を貰ってくることもある。あるいは祭りの時に親戚の家では赤飯を炊く。
どちらも美味いのだ。だが、コンビニのおにぎりがそうであるように、それらは冷めた赤飯である。
そう、みはしの赤飯は温かいのである。
供されるのは赤飯とお吸い物、それと箸休めの小皿には竹輪、昆布の佃煮、壺漬け、紅生姜が少量ずつ。
赤みが強く温かい赤飯にはたっぷりの黒ゴマがかかっている。塩気は少なくゴマの香ばしい優しい味だ。温かいから赤飯にしては米が柔らかい。だがもっちりとした赤飯の噛みごたえは健在だ。
ちょっと足りないかなという塩気を汁物と付け合わせが十分に補ってくれる。三つ葉の浮いたお吸い物は美味い。付け合わせでは特に紅生姜が赤飯に合う。
小腹を満たすには最適の一品であった。
遅れてきた者たちとも合流し……。
あ、みなさんあんみつを。じゃあ私もえーと、あんずクリームあんみつで。
温かくなった腹と、塩気で洗われた口に、冷たいあんみつは最高であったとここはしめておこう。
みはし
赤飯セット
あんずクリームあんみつ








