表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飯エッセイ ー なまこ氏、飯を食う。  作者: ただのぎょー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/28

十一房珈琲でコーヒーを:自由が丘

 かつて古桑庵の回に書いたが、自由が丘には無数の喫茶店がある。だがドトールやスターバックスのようなチェーン店を除くと、私がよく行く店は三つしかない。

 美味いコーヒーを飲みたい時はどこへ行くか。十一房珈琲店である。


 自由が丘の南口を出るとそこを東西に伸びる道がマリ・クレール通り。そこから小径を一本南に行ったところが九品仏川緑道である。

 名前の通り、かつてここを九品仏川が流れていたのだが、暗渠としてその上を緑道としたものだ。

 自由が丘の正面口側ではないが、この二本の石畳の通りはある種自由が丘の象徴とも言える街並みであると言えよう。

 十一房はその九品仏緑道に面した狭い喫茶店だ。


 外から覗けば焙煎室が見える。その奥にカウンターとテーブルが二つ。

 黒いカウンターに黒いタイル。外の通りの石畳の白の明るさが、扉を潜った瞬間に真逆の雰囲気となる。

 喫茶店は薄暗い方が好きだ。


 また特に冬に行けば特に湿度の高さを強く感じるかもしれない。

 カウンターの店主の前には銅の薬缶が二つと琺瑯の薬缶が一つ、常に火にかけられ続けているからだ。


 今日は一人である。カウンターにつく。


「ペルーある?」

「ないよ」

「じゃあコロンビアで」


 いつものやり取りをする。ペルー、正確にはペルーチャンチャマヨという豆があればそれを飲むのだが、割と品切れであることが多い。

 なければコロンビアかマンデリンを頼むのだ。


「……眼鏡かけてないからわからなかった」


 一年半ほど前に目の手術をして、以来眼鏡をかけていない。つまりそれ以降初めてきたということだ。

 この店に来たのはだいぶ久しぶりだ。実のところ5年ほど前にこの店も全席禁煙となってしまい、足が遠のいていた。それから目の手術や、先日も入院していたりしたので来る機会が無かった。

 逆に今は先日の手術で禁煙を命じられているので、全席禁煙が都合が良くなったりしてしまった。

 ともあれこうして店主が覚えてくれているのは嬉しいものである。


 店主が銅の薬缶からネルに湯を回し掛けながらコーヒーを淹れるのを眺めつつ、目の手術がどうだった云々などと話をする。


 そしてシンプルな白いカップとソーサーに漆黒のコーヒーが供される。

 砂糖やミルクもスプーンも出てこない。私が使わないことが分かっているからである。昔はここに灰皿がついてきたか。

 これがいつからだっからかは覚えていない。この店に最初に来たのは小学生の時に親父に連れられてだったし、自分で通うようになったのは大学生の頃である。


 店内は決して騒がしいわけではないが、静かではない。

 常連の客と店主の話す声、そして店内には古いジャズやアメリカンポップスが流れている。今日、席に着いた時にかかっていたのは『ライオンは寝ている』であったか。

 5、60年代あたりの曲、詳しいとまでは言わないがそこそこ知っている。こういった雰囲気を好めるのであればなお良いであろう。


 音楽や店主の声に耳を傾けながらコーヒーを口に。

 香気が鼻腔に、苦味と酸味、ネルドリップならではのコクが口に広がる。


 これが至福の時間というやつだろう。



十一房珈琲

挿絵(By みてみん)

コーヒーはコロンビア、背景にジミがいる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


『マメーとちっこいの〜魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く①』


2025年2月20日発売


画像クリックでTOブックスのページへ飛びます

i913987

『マメーとちっこいの〜魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩くコミカライズ』


2025年2月17日連載開始


画像クリックでコロナExのページへ飛びます

i933786

『追放された公爵令嬢、ヴィルヘルミーナが幸せになるまで。 ~最強の平民、世界に革命を起こす~』


2024年11月12日発売


画像クリックでAmazonのページへ飛びます

i662244

『朱太后秘録 私が妃なんて聞いていませんが!』


2024年10月8日発売


画像クリックでコミックグロウルのページへ飛びます

i662244
― 新着の感想 ―
[良い点] 小学校の頃からの行きつけだなんてすごい! 旨そうですわ!
[一言] 羨ましいな 珈琲を楽しむ喫茶店も少なくなってしまいましたし 歳を取ると行きつけの店はみんな閉店していってしまいました
[一言] こういうお店の常連になるのが夢だった( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ