小さかった女でカレーを:西小山
小さかった女。変な名前の店である。
この店を知り合いに紹介する時に、まず店名を教えると大体がホステスのママが切り盛りしているようなスナック・バーを想像されることが多い。
椎名林檎の『歌舞伎町の女王』的なストーリーが浮かぶのだろう。
名前が変なだけの普通のカレー屋である。いや、普通とも言い難いか。
目黒線西小山駅はその名に反して低地にある。南東方向に小山八幡神社があり、神社のある高台(鏑木山)の西にあるから西小山という名であるのだろう。
駅の北を東西に走るのが立会川桜並木。半世紀以上前にはここには立会川という川があったが、暗渠工事がされておりその姿を見ることはできない。
東京湾に注ぐ直前で川は姿をあらわす。京浜急行の立会川駅はこの下流にあるということだ。
その立会川桜並木を東に歩く。桜並木であり、今も桜の木はあるがまばらである。道路に張り出したものを随分と切ってしまったからだ。
角を三つほど行けば五叉路に出る。左に道が二本並ぶが、その手前の道を曲がればすぐだ。地元民には消防署や三谷八幡神社のある道と言えば分かりやすいか。
商店街ではない住宅地。また店はモノクロームの目立たぬ外観である。
店頭にはローマ字でCHIISAKATTA ONNAと小さく書かれている。
だが、この前を通れば否応にもカレーの刺激的な香りが存在を主張することだろう。
メニューはカレーセットのみ。チキン、ポーク、キーマ、キーマとチキンのあいがけなどがある。
写真にして映えるのはあいがけだろう。カレーの海の中に円錐台に盛られたライスの陸地。プリンのカラメルのようにキーマカレーがライスの上に。そしてキーマカレーの中央には卵の黄身がのり、緑の唐辛子が添えられている。
だがここは敢えてシンプルにチキンカレーを頼む。そしてトッピングにはスパイスたまご、これが良い。
カレーはスパイシーな欧風カレー。以前紹介した目黒のLANDもそうだが、個人的には好みの味であると言えよう。
付け合わせはキャベツのマリネである。さっぱりとした酢の味で香辛料に慣れた口内をすっきりとさせ、再びスパイシーなカレーに取り掛かる。
カレーの海には黄色く丸いものが転がっている。スパイスたまご、つまりはゆで卵である。
スプーンを突き立てるように掬う。完全な固茹でではない、僅かに黄身のしっとりとした、スパイスの染み込んだ卵は絶妙だ。
美味い美味いと思っているうちに簡単に食べ切ってしまうだろう。
この店、実は元々は喫茶店だったのだ。店内には本が置かれ、ゆっくり寛げるようにという思いが見える。だがいつの間にか人気のカレー専門店になっていた。昼時に行けば店の外に並んでいるような店だ。そう長居もできまい。
お勧めの時間は午後2時頃に行くことだ。3時に閉店だが、ランチタイムを過ぎたこの時間なら空いている。落ち着いてカレーを楽しめるだろう。
小さかった女
チキンカレー
大盛りでスパイスたまごトッピング








