漁師料理・九絵で海鮮定食を:大岡山
大学時代の友人の中で一人、平日が休みの奴がいる。
ちょうどその日は私の仕事が昼に時間が空いていて、彼は用事があって出て来たのでランチを一緒した。会うのも少々久しぶりである。ちょっと良い飯を食おう、ということになった。
大岡山は駅の南に東工大のキャンパスがあり、商店街は北に伸びている。
その店、九絵はその北のメインストリートから一本西に外れたところに居を構える店だ。
暖簾を潜り、広めのテーブルに座って頼むのは店の名を冠する定食、九絵定食である。
1870円。ランチにしては高めの値段だ。
もちろん洒落たフレンチやらホテルのランチならもっと高いのはいくらでもあろう。
だが、旅先でもなく、定食と言って2000円というのは少々躊躇うところではあるまいか。
しかし間違いない。
大きな盆に乗って出てくるのはご飯と味噌汁は荒汁、白菜の漬物、金平牛蒡、卵焼き、揚げ豆腐、小松菜。そして刺身と鰤大根である。
若い男性であればまず気になるのは刺身だろう。
トロにサーモン、ハマチ、頭付きの海老と気にいること間違いない。
大ぶりに切られた刺身は見るからに脂が乗った光沢だ。
だが日本人なら。
気になるのは鰤大根の大根よ。
藍色の器にたたえられる黒々としたタレの海は鰤の油を吸うことで油膜をはり、天井の明かりを照り返す。
そこに氷山のように狐色の鰤の切り身が浮かぶ。
そして切り身に座礁するかのように八角柱状の大根が乗っているのだが、その色と言ったら。
飴色である。それも深い飴色だ。
芯までタレが染み込んでいるのを確信できる色だ。
日本人の食卓は色が茶色いなどと揶揄されることもある。
なるほど、醤油に味噌、その通りだろう。
だがこの飴色の大根を美味いと確信できないなら、日本人やってる意味がないね。
そうして私は大根に箸を入れ、その期待は裏切られることはなかった。
友人も私も、味にも量にも大満足の定食であった。
九絵
九絵定食








