苦悩の理由
「でも実際、リーシアのご両親は娘に無理難題ふっかけてる気はするのよねー。
村の外に出たら、リーシアの味方ってほとんどいないじゃない?」
…そうなのだ。
私はついこの間16才の誕生日を迎えたのだが、そこで尊敬する両親から与えられたプレゼントは、なんとも非道なものだった。
「1ヶ月後には村を出て、2年間他の村や地域を見て勉強してきなさい。
もちろん一人旅になるから、そのための準備はこのお金で必要なモノを買い揃えるといい。
ただ、余ったお金が旅の軍資金となるから、無駄遣いはするんじゃないぞ?」
これが、この村を含めエンデル地方を治める地方領主である父様の台詞である。
このエンデル地方も所属する国、リスニア共和国はさまざまな地域でいろんな種族が暮らす亜人国家だ。
ただ、未だかつて悪魔がどこかの国に所属したことはなく、亜人国家であっても悪魔に対しての偏見は強い。
というか、悪魔達の生活と性格が偏見の元であるとともに、それこそ褒め言葉と言わんばかりにやりたい放題やってるのが悪魔達である。
偏見を持つなという方が難しい。
ただ、悪魔は種族として自ら子を作ることはほとんどない。
作れば自身の力が弱まり、消滅してしまうからである。
しかし他者によって消滅する際は、記憶もなく性格も引き継がず、新たな悪魔が誕生する。
よって悪魔は増えもしなければ減ることもない。
そんな悪魔が作った子供が私。
そりゃ偏見も差別もたっぷり幼少期から味わってきた。
そんな村でだけでも生きにくいのに、敢えてここで外へと追い出す我が両親。
あれ?
なんか怒らせることしたかしら?
とか思っても仕方ないと思うのだわ。