0095. 閑話・【船大工】絵図と天鳥船神
初作品、初投稿になります。
拙い文章、特に会話が今の話し言葉とごっちゃになっている感じだと思うので、暖かい目で見てもらえればと思います。
定期的に長く投稿しようと思いますので、ブックマークと☆、「いいね」で評価をしてもらえると嬉しいです。
1話1話は、短めかもしれないですが、慣れてきたら、少しづつ長くしていきたいと思ってます。
あと、ゆるめの感想とご意見もらえると、嬉しいです!!
「二形船のみにする事、承知致しましたが、新しい船を造るとはなんでしょうか。正直申しまして、新しい船を造る力量も絵図も我らにはございませぬ。こればかりは殿のご期待に沿うことは能わずにございまする」
「無論、今のそなた達だけで新たな船が造れるとは、如何にわしとて思うてはおらん。ここに新たな船の絵図を四つほど用意しておる。この中で松竹梅が付けられておるのだが、そなた達でどれなら造れるかを見てほしいのじゃ」
「なんと、四つも新たな船の絵図がもうあるのでございますか。如何様にしてそのような物を取り寄せたのでございましょうか。畿内や薩摩、琉球などに出向いたときに買い付けたのでございましょうか」
我らだけではできぬと理解はされていて助かったが、新しい船の絵図があるとは何じゃ。それも四つもあるとはどれほどの者が、そのような絵図を描いたのであろう。気になるな。
本当に我らで造ることが出来るのであれば、先ほどの殿の話もわかるぞ。小早など、近場でしか使えぬモノより、新しい船を作るために人を使うと言うことであろうな。
「ええぃ、うるさいのぉ。三郎も職人として、相も変わらずだな。この絵図は、外から買い付けたものではないわ。
出処は今は明かせぬが、造る船が決まれば、会うこともあろうて。まずは、絵図をしっかりと見ぃ」
なんと、この絵図は外からの物でないとは。この安房で新たな船を考えられる船大工なぞ、おらんぞ。何を言っておられるのだ。
とはいえ、絵図が目の前にあるのだ。誰が描いたかは別として。我らで造れる船があると良いのだがな。まずは、梅と書かれている絵図から見るとするか。
殿としては、松竹梅で、松を我らが造れるとよいと思うておるだろうが、わしとしては、いきなりその絵図を見るよりかは、確実に造れると言えたほうがよいじゃろうと思うでの。
この梅案と書かれた安宅船というものは、今の二形船に形が近いな。これであれば、この絵図と描いた者に話を聞けば、どうにか出来るであろう。まずは安堵したわ。全く、今までと違う船の形でなくてよかった、さすがに新しい形の船など、早々にあるもんでもないか。さて、次の竹をみて見るとしよう。
何じゃ、この竹案は合の子船と書いてあるが、どのようにして造るのか、全くと言って分からぬな。梅案と違い、真ん中に大きな木を使っておるのは、わかるが、帆は複雑過ぎて分からぬ。もう一つ竹案があるようじゃな。こちらの船も同じ様な形じゃな。これは、どちらかが造れれば出来そうじゃが、難しいの。
最後に松案か。これは無理じゃな。竹案よりさらに複雑になっておって、絵図を理解できぬわ。梅案と竹案の一つで頑張るしかないな。竹案で殿に許してもらうしかないな。
「殿、四つの絵図、確認致しました。詳しくはわかりませんでした。全ての船を造る事は難しいですが、梅案と竹案一の船であれば、今の我らでも何とかできるやも知れませぬ。松案と竹案の一つは理解できぬことが多くあり、今の我らでは、造ることは能わぬことにございまする」
「おぉ、そうか。造れそうな船の絵図があったか。よかったわ。これで諸々のことが進むやも知れぬな。絵図を描いた者も全て造れるとは思うておらなんだゆえに、一つでも出来れば十分であるぞ」
「殿、ただ、この絵図だけでは、造るのは難しいと思いまする。絵図を描いた者に話を聞かせてもらわねば、造ることは出来ないでしょう。どうか、お会いして話を聞く機会を頂戴出来ないでしょうか」
「そうよな。話を聞き、より理解せねば、そうでなかろうと難しいであろう。だが、絵図を描いた者と今は、直接会わせることは難しいのじゃ。だが、どうにか、話ができるように考えておこう。話ができる時期が決まったら、また呼び出すゆえ、この梅案と竹案一の絵図をしっかりと見ておくようにな」
「承知致しました。その時期までに船の絵図で、どのようなことをせねばならぬか考えておきまする」
絵図を描いた者に会うのが難しいとは、何かの病気や怪我をしておるのか。ただ、今の安房で絵図を描ける者にそこまで病気や怪我をしている奴なぞ、おらんはずだが。
まぁ、よい。何らしかの方法で絵図を描いた者に話を聞ける事になったのじゃ。これで船を造ることができるじゃろう。このような絵図を描けるとは、天鳥船神様の寵愛でも受けておるのではなかろうか。
ふっふっふっ、お会いできるのが今から楽しみじゃ。平砂浦に行っとる弟子たちには申し訳ないが、儂が聞いて陣頭指揮を取らせてもらうぞ。
この年になってから、このようなことがあるとは、人生何があるか分からぬな。天鳥船神様に感謝せねば。