0094. 閑話・【船大工】水軍と船造りの状況
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稲村にいらっしゃる殿、里見様に呼び出されたけど、わしゃ、何をしたのか。何も分からねぇや。
最近、水軍のみんなはいつもの三浦や下田、大島以外にもいろんなところに駆り出されて行っているようだが、戦や小競り合いはあまりして無いらしい。いつものように近場では、津料・通行料は変わらず取っておるので、人手と船が足りぬと、ボヤいておるがの。
その話か、船をもっと造れとの話か。それなら、いつものように水軍の大将から話をされると思うが、やっぱりわからぬな。殿は儂を呼び出して、何の話をされたいのか。
それと平砂浦の方では、氏兼殿が差配しながら、新しい社と村作りが一気に行われている。村というよりは門前町を作っておるらしいと聞いておるが、結構大きな門前町になっているらしく、そのため、木材を加工する大工が足りてないのだ。
とりあえずの急場を凌ぐため、船大工であるうちらの弟子も何人か連れて行かれたわ。まだ儂のもとに戻ってきておらぬゆえ、船造りも、今までと同じようには出来てない状態なのだが。里見様は、そのような中で何をさせたいんじゃろうか。
館に到着すると早速、殿のいる広間に通されたが、すでに殿が部屋にいらっしゃった。まさか、儂のことをここまで待っておるとは思わなんだ。
「布良三郎右衛門、参上致しました。お待たせして申し訳ございませぬ」
「三郎、わざわざ布良からご苦労であったな。待ってはおったが、別の者と話をしておったので、気にすることではないぞ。それはそうと来る途中、平砂浦を通ったでおろうが、社作りなどはいかがであったか。おぬしからみていかが状況であったか。感じたことを聞きたいぞ」
「はっ、お気遣いありがとうございまする。平砂浦は、そうでございますな、まだこれからでありましょう。
一応、村の外れなどに生活が出来るだけの家はありましたが、社はまだまだこれからですし、畑や田んぼの方が少しづつ整い始めていると言った状態でしょう。
あと何やら、村の周りなどで堀も掘っている様子でしたが、何のためなのか、理解が出来ませんでした。氏兼殿は何を目指しておられるのか」
「まぁ、そうか。理解がし辛い町づくりになっておったか、それは良かったわ。それにそうよの、まだ社と町作りを始めて、二年くらいじゃからな。まだ数年かけて、整えて行くしか無かろう。
氏兼からも数年で終わる事は無いと聞いておる、まだまだこれから出来上がっていくであろう。徐々に人が集まってくる町となるであろうな」
何と、数年で終わらぬ町づくりなど聞いたことないわ。京の都などを殿と氏兼殿は作るおつもりか。そうであるならば、弟子たちは諦めるしかないか。
それにしても琴様が産まれてから、殿も我ら里見家もだいぶ変わってきたの、この前に就任した鎌倉公方様にお仕えしているのは変わらぬが、前ほど積極的に関東管領上杉殿を支持している安房の国人などに戦を仕掛けなくなっておる。
とはいえ、船の交通で奴らの船から津料と称して品などを押さえてはいるがの。前より、銭を使う事や商いに力を入れ始めているのは、間違い無いので、今後も船造りは終わらぬであろうな。
「その通りでございますな。平砂浦は、比較的拓けた土地ゆえ、今後は人が集まって来るようになりましょう」
「そうなるように、進めて行くしかあるまい。さて今日、そなたを呼んだのは、このような話をするためではない。
今、我が水軍は、知っておると思うが色々と動き回っておるため、船も人も足りてない。今は二形船と小早船を造っておると思うておるが、そうであるか」
「はい、その通りです。今は、二形船と小早船を造っておりますが、これ以上早くは、造れませぬ」
「そうであろうな。それでまずは、小早船はもう造らなくてよい。今後も足を延ばすゆえ、二形船のみをまずは造ってくれ。それと合わせて、今までにない船を造って欲しいのじゃ」
我らに船をもっと造れとの話かと思うてたが、思いの外の話であるな。まだ、二形船のみを造ることは理解出来るが、新たな船とは、殿も気楽に考えておられるのか。
今までの日ノ本の船大工が培ってきた技でも今の船しか造れておらぬ事をご理解できておらぬようだな。これはしっかりとお叱りを受けてでも、出来ぬと言わねばならぬな。