0087. 閑話・【光賀】初海外はおつかいでした
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先日の綿花の種子の商いは、無事に終わって良かったわ。里見様も満足されており、きちんと儂にも利が出る金を出してくださった。
あの方は、なにゆえ、我らにそこまで優しくしてくださるのか。お子様がお生まれる前は、そこまでの方だとの噂は聞かなんだが。まぁ、商いを大切にしていただいておるので、これ以上ないが、とはいえ次の商いはどないすればよいか、ほとほと困るわ。
オキナハ、琉球か。そのような地なぞ、聞いたことがないし、知っておるのは、堺や博多とはな。儂の伝手でも、つながりがないので、どう行くかから考えないといけないことになるとは。
まずは、また実家で話を聞くしかないか、今のわしが頼れるのは、実家しか無いしの。
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「父上、先日はありがとうございました。おかげさまで無事に商いも出来、先方もお喜びになっておられました」
「そうか、それはよかった。ちゃんと商いとして、利が得られたのであれば重畳じゃ。さて、今日はいかがした。わざわざ、お礼に来るほど殊勝ではあるまい」
「さすが、父上、わかりますか。実は先日と同じように、知っておられたら、教えていただきたいことがありまして。
オキナハ、もしくは琉球というところを知っておいでですか。そこにある物を買ってきて欲しいと言われまして。ただ、その場所を知らないのです。
まぁ、堺や博多に行けば、知っている商人は居るだろうとは聞いておりますが」
「なるほどな。オキナハは知らぬが、琉球は知っておるぞ。薩摩の国の南にそのような地があると聞いたことがある。
それと堺に行かずとも、薩摩の坊津で、琉球と商いをしていると聞いているぞ。そこからその琉球に行けるであろう。
そなたも堺の連中にとやかく言われるよりは、薩摩の方がいいであろう」
「さすが、父上。よくわかっていらっしゃる。堺に行くのを戸惑っておりましたゆえ、坊津でも行けるという貴重なお話、ありがとうございます。早速、坊津に行き琉球に渡りたいと思います」
父上は、物事をよく知っておられる。どこでそのような話を聞いて仕入れておるのだ。津島とはいえ、堺など西の商いの話は、わしが居たときはそんなに無かったぞ。大湊や桑名からの話はあったが。
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坊津までも遠いのぉ。途中途中で小さく商いをして路銀を稼いではおるが、それにしても船旅は疲れるの、坊津に来るまでにひと月もかかるとは。
紀州、土佐と回ってきたが、商いを大きくできそうな品は見かけんかったし。何度も琉球に行くのはちと辛すぎるか。この旅で、どうにか買い付けが出来ると良いのじゃが。
「三宅殿、こたびのご尽力ありがとうございまする。おかげさまで、琉球に向かう事ができます」
先日、坊津で琉球に行く船を探しておったら、三宅殿が琉球に船を出すと噂を聞いて、頼み込んで船に乗せてもらうことになったのだ。その分、わしの津島や安房での商いの話をして、儲け話を売ることにはなったが、今回の行く目的だけは、伝えずに済んだわ。
三宅殿は瀬戸内の備中に拠点があるらしいので、西に伝手のなかったわしにはよい伝手ができたしの。里見様との商いをするとなれば、今回のように西に行くことになるであろう。その時に三宅殿の伝手が活きてくるじゃろう。
坊津から琉球までも時間がかかるわ。まぁ、坊津に来るまでよりは近いが。やっと目的の琉球だな。オキナハは、どこなのか、分からなんだが、とりあえず、琉球に来れたんだから、よしとしよう。琉球の人にオキナハを聞けば、何か分かるかもしれぬしな。
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「三宅殿、無事に琉球に来れました。改めて、ありがとうございます。これで商いの話が出来そうです」
「光賀殿、我らは十日後に坊津に戻るゆえ、それまでに船まで来てほしい。何か積み込むなら、空きがあるかみなあかんので、出来るだけ早めにな。それと人買いのことも任せてくれ。我らの拠点、備中まで来るのは大変だろうから、紀州の御坊の寺に連れておくゆえ、引き取りに来てほしい。秋の刈り入れ後、霜月には連れて行けるだろう。どの寺に預けたかは、光賀殿の津島のご実家に文を出すゆえ、御坊に来る前に確認してほしい」
「そこまでのご配慮ありがとうございます。それでは、霜月の中頃には、御坊に行くようにします。また、帰りの船に積み込む品があるかは早めにご連絡します。こちらは、ここにあるかもわからぬゆえ、無ければオキナハと言う場所に行かねばならぬかと」
「光賀殿、オキナハとは、ここですぞ。我らのような商人などは琉球と呼んでますが、この地の人は、オキナハとこの地を呼んでます」
「そうなのですね。お恥ずかしい限りで。そうすると、この地で、探すしか無いようですね」
まさか、オキナハと琉球が一緒とは。確かに里見様もそのようにおっしゃっていたかもしれぬが、あまり気にせんでおったわ。まぁ、よい。行く先が減ったので、この地で探せるであろう。まずは、商い出来る店に行くとするか。
「三宅殿、申し訳ないが、商いができる店を紹介してもらえぬか」
「よいぞ。わしが懇意にしておる店が近場にあるゆえ、紹介しよう。何を買付したいか分からぬが、大体のことは、分かろう」