0086. 閑話・【光賀】買い付け完了、あとはお届けのみ
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父上には感謝だな。聞いた通り、西三河の天竹あたりで綿を育てておった。だが、村を見る限り、あまり大きくは育てておらぬ様子、さて、いかようにして種子を手に入れるか難しいところではあるな。しょうがない。近くにいる村人に乙名の方がどこにおるか聞いて、挨拶をするか。
「そこの人。つかぬことを聞くが、この村の乙名の方はどこにおられるのかな。儂は連雀で津島の光賀と申す。商いが出来ぬか、話をしたいのだが」
「津島の方か。乙名ならこの先を行った先の左側の家がそうだ」
「ありがとう。それでは訪ねてみるとする」
村人に聞いたところに少し周りより大きめの家があった。たぶん、この家が乙名の方の家であろうな。とりあえず、軒戸を叩き、家人と話をすることにしよう。
「失礼する。どなたか在宅ではございませぬか」
返事があり、少しすると中からご老人が出てきた。
「急な訪問であいすまぬ。儂は津島の連雀の光賀と申す。村の方から、こちら家が乙名の方であると聞いてな。ご挨拶に伺った次第である」
「それは、ご丁寧にありがとうございます。さて、我が村に何用でございましょう。この村はお世辞にも何か商いができるような物はございませぬが」
「いや、こちらにわざわざ伺ったのは、この村で綿を育てていると聞いてな。綿花の種子を買い付け出来ぬかと思い来たのよ」
「綿花の種子でございますか、綿ではなく。綿自体なら、昨年の分が少しはありますので、お譲りはできるかと思いますが、種になると商いできるほどは無いと思いますよ。この村の各家には」
「そこをなんとかならぬかの。袋一つ、二つ分でも構わぬのじゃ。譲っていただける分だけでも買い取らせていただきたいのじゃ」
そう言って、儂は頭を下げてお願いをした。
「光賀殿、頭をお上げください。袋二つぐらいであれば、お譲りはできるかと思いますが、袋一つで一斤程度、合わせても、二斤にしかなりませぬが、よろしいですかな」
とりあえず二斤分でもあれば、十分じゃろう。足りないと言われたら、改めて、買い付けに来るしかないな。そうなると何度も買い付けできるようにしないとだな。
「おぉ、ありがたい。少しでも構わぬ。種子を買い付け来てほしいと頼まれておったの。また、収穫の時期に来たら、種子を買い付けさせてはくれぬか。もちろん、村の方々が、出してもらえる分で構わぬから」
「何度もですか。あまり拡められても、こちらも難しいですし。周りに売れなくなるのも、生活が出来ぬものが出て困ることになる。今回だけにしてもらえぬか」
「ご懸念、その通りですな。ただ、儂は種子をこの近辺、三河や尾張、遠江で商いすることはしないのだ。上総の方で頼まれてな。そちらに持って行くので、周りに売れなくなることは無いと思うぞ」
「はぁ、そうですか。それなら、翌年の種まきに使わない分だけなら、お売りすることにしても大丈夫かと思いますが、村の各家に聞いてみないと分からぬがよいですかな」
「ありがたい。非常に助かる。さて、いくらで買い付けさせてもらえるだろうか。この度は」
「儂らは今まで売ったこともないので、いかほどでかは、わからぬ。光賀殿がいくらなら買い付けしたいかをお聞きしてからでよいか」
くっ、以外に手強いな。こちらの出せる金を見定めようと考えておるか。種子一斤なら、二貫文が限度であろうな。
「そうですな。上総まで持って行くので、一袋一貫文ではなくいかがですかな」
「それは少し安いのではありませんか。もう少し高値でお願いします」
「それでは、一貫と三百文ではいかがじゃ」
「もう少しお願いしたい」
「わかったわ。一貫と五百文じゃ。これで手仕舞いである」
「ありがとうございます。それでは、一袋一貫と五百文でお願いします」
「ありがたい。それでは、二袋で三貫文になろう。これでよいかな」
種子を準備してもらう間に、乙名の方に金を渡しておく。まぁ、無事に商いができて良かった。まずは、種子のみを里見様にお渡しするとしよう。牛と豚は、別の機会で探すとしよう。