0085. 閑話・【光賀】次の商いは三河で探しもの
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里見様からの大きな商いをどうにか終わらせ、武田様への気概もお渡しして、少しのんびりと遠出の仕入れは少し減らして商いをしようと思っていたら、また、里見様に呼び出された。
「里見様、仰せの通り、光賀仁右衛門、罷り越しました。本日は、また商いをしたいとの話を伺っておりますが、どのような商いをご依頼でしょうか」
「仁右衛門、よう来たな。先日の商いは苦労をかけたの。連れてきた、89人はみな元気に過ごしておるぞ。さすがは安房一の連雀じゃ。さて、今日、お主に話をしたい商いはな、綿花の種子と牛と豚とかいう動物の買い付けを頼みたくてな。あと買い付け先で良いものがあったら、それも買い付けてほしいのじゃ。安房に無い品であれば頼むぞ」
「綿花の種子と牛に豚でございますか。それに安房に無い品と。寡聞に綿花と豚なる動物は聞いたことがございませぬ。今回の商いは、力になれないと思いまするが、いかが致しましょう」
「いや、それには及ばぬ。綿花の種子はどこにあるか、聞いておる。また、豚とかいう動物もどこにおるか聞いておる。まぁ、豚の方は、可能な限りでよいがな。まずは、綿花の種子が欲しいらしいのだ」
はて、里見様はおかしなことを言う、聞いておるとか、豚とかいう動物とか、まるで別の方がそれを欲していて、その方から話を聞いて、わしに繋いでおる感じではないか。
この周辺で里見様にそのような事を頼める方なぞ、おらぬはずだが。里見様は鎌倉公方様にお仕えしておるのはず、公方様の側近から言われておるのか?
いささか、気にはなるが、下手に藪をつつかぬ方がよいな。どこかでお話をしていただけるかもしれぬし。
「そう、仰っしゃられるなら、その場所に赴き、商いをしてまいります。場所が遠いと時間がかかりますゆえに、ご容赦くださいませ。
また、知らぬものになりますので、いくらで買えば損をせぬか、わかりませぬ。光賀の一族として、損をせぬ動きは致しまするが、初商いであることをご承知いただきたく」
「わかっておる。こちらもおぬしに無理を言っておると思っておるし、価格についても多少の損は、気にしておらぬ。人買いと同じでまずは、入手することが大切じゃぞ。
さて、綿花じゃが、蒲公草 (タンポポ)のように白く固まっているそうだ。繭のようだとも言っておった。種子は、非常に小さいそうなので、見失いやすいらしい。ある場所は、お主の生国の近くである西三河の矢作川近くで自生していたり、農民が育てておるかもしれぬと聞いておる。
まずは、そのあたりで聞いてほしい。量はできる限り欲しいが、綿そのものよりは、種子を優先してくれ。豚は、オキナハに居るそうだ。オキナハは、琉球と呼ばれているかもしれぬと聞いておる。豚はオキナハでは『ウヮー』と呼んでいるらしいぞ。
儂が聞いた話はこれまでじゃ。牛は、蘇と酪を作り、朝廷に献上するために白牛がよいとのことじゃ。数を増やしたいので、雄と雌を数頭づつは最低ほしいと言っておった。
白牛もオキナハで聞いてみてくれ。南の方にいるらしい。堺や博多の商人のところに行けば、オキナハ、琉球の話は聞けるとのことだ」
綿花は西三河にあるとな。そんな話は聞いたことが無いので、自生していだけなのか、それとも小さく作っておる者がいる程度だな。それにしても、よくその話を知っているなと感心する。里見様に指示を出されている方は、どうやってこのような話を集めておるのじゃ。
あとは、オキナハ、琉球とは。聞いたことが無いが、堺や博多か。あの者共は、儂ら東の連雀を下に見ておるからな。聞き方を間違えると、この話を掠め取られかねぬ。用心せねば。
とりあえずは、西三河での綿花の種子探しだな。里見様もそちらを優先で良いと言っておられるしな。久しぶりに実家に戻り、西三河の話を聞いてみるか。父上なら、何か知っておられるであろう。
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「父上、お久しぶりでございます」
「仁右衛門、久しいのう。息災であったか」
「はい、おかげさまで、元気に過ごしております。今は、安房の里見様との商いが多うございます。今日、戻ってきたのも、里見様との商いで、少し西三河の噂を聞きたくて」
「ほうぅ、重畳じゃな。それで西三河の噂とは、何を知りたい」
「はい、綿花と呼ばれている作物のことを知りたいと思っています」
「綿花のぉ、矢作川の西側の天竹辺りで、そのような作物を作っておると聞いたことがあるぞ。量は少ないので、商いはしておらぬようだが。して、なぜに綿花を探しておるのだ」
「里見様が自領で綿花を作りたいのではないかと思います。綿花の種子を買い付けしてほしいと言われましたので」
「そうか、ただ先ほども言うた通り、あまり量は無い。少ししか買い付け出来まいが、そんなのでよいのか」
「構わないと思います。まずは、入手することが大切だと言われましたので」
「そうか、それならよい。まぁ上手く買い付けよ」
「お話ありがとうございます。それでは、西三河の天竹というところに行ってきます」