0079. 閑話・【光賀】甲斐での人集め
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駿河での予定を終わらせ、すぐに安房に戻ってくることにした。
「里見様、本日はお時間を頂戴しましてありがとうございます。
ご依頼の件ですが、まだ甲斐の武田様にはお会い出来ておりませぬが、富士の浅間大社、身延の久遠寺にお願いしてまいりまして、買い付けた子供達を一時的に預かってもらえるように致しました。
ただ、申し訳ございませぬが、当初にお気遣いいただきました喜捨、寄進代だけでは足りぬ感じで、追加での喜捨が必要になりまして、ついては価格を少しだけでも上げさせていただきたく、お願いに参りました」
「仁右衛門よ。そこまでの配慮、ありがたく思うぞ。価格については、上げることに関してはやぶさかでないが、どの程度がよいのか、判断が難しいの。
少し検討させてもらおうかの。安心せい、多少なりは上げてやるから」
価格を上げてもらえるように相談をして、里見様からも前向きな返事をもらえただけでも、よしとするか。
一人あたり50文でも100文でも上がってくれればよいが。
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「少し日数がかかってしまい、待たせたな。話をまとめて来たぞ。
今回の件、我が里見家としても、人集めは大切な事。金を渋って集まらなければ、本末転倒であるため、一人につき200文を追加しようぞ。合わせて、一人につき1貫200文でどうじゃ」
思うたより上げてくれた。年高の男は無理そうだが、女子なら足は出ぬかもしれぬな。
まずは、数が多いほうがよいと言われておるので、気にせず、連れてくるとしよう。
「里見様、そのお気持ちありがたく存じまする。この光賀、ご期待に添えるように浅間大社、久遠寺の助力の下で武田様との話をつけてまいります。連れてくるのをお待ちください」
「仁右衛門、少し待て。義父上への手紙に浅間大社と久遠寺の助力もある事を文に追加するのでな」
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里見様からニ通目の手紙を受け取り、早速、武田様の元に向かった。
「武田様、お初にお目にかかりまする、連雀の光賀と申します。安房里見様より手紙をお預かりしておりますので、お読みください。手紙は二通になっております」
「ほぅ、婿殿からの手紙のぉ、珍しい事もあるものだな。真里を嫁に出して以降、文のやり取りなぞ、しとらんのにな。二通も同時に来るとは」
冷たい目線が来ておる。手紙のことを信じておらん様子じゃ。手打ちにされんようにせな。
「ほぅ、なるほど。そういうことか、さて光賀とやら、この甲斐に何を買い付けに来ておるのだ」
手紙を読み終われ、何やら、怪しげだと思われたのか、わしに問いかけてくる。
「はっ、里見様からは、甲斐の国より人買いをお願いされております。上限はないが、武田様にご迷惑をかけぬように注意しながらと申しつかっております。また、身延の久遠寺と富士の浅間大社にご助力を賜っております」
「素直に話をするのだな。その心根、よしとしよう。手紙の内容と違いは無いようだ。我が甲斐の国は貧しい国である。
奴隷や間引きなどはこの国のどこにでもあるが、少しでも命が助かるのであれば、甲斐武田家として助力してやろう」
なんという事だ。まさか武田様がご助力をしてくださると申し出ていただけるとは。
「ありがとうございます。ご助力感謝いたしまする。ご助力の対価はどの程度にいたせばよろしいでしょうか」
「そうよなぁ、そこはお主の気概に任せるとしよう」
「承知しました。全て終わりましたら、改めて、御礼をお持ちいたしますので、今しばらくお時間を頂戴したく」
「まぁよい、持ってくるのを楽しみに待っておるぞ」
利益の半分はお持ちしないと駄目かもしれぬな。武田様との顔つなぎができただけでも十分な利益だったと思うしかない。
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「里見様、遅くなりましたが、甲斐より子供達を連れてまいりました。今回は、姉妹、兄弟がいる子ばかり26人になります。
他にまだ浅間大社や久遠寺に合わせて、63人おりますので、合わせて、89人の子供を連れてこれるでしょう」
「そうか、そんなに連れてくることができたのか。義父殿は、何か言ってなかったか」
「いえ、最初は手紙の事を信じられておりませんでしたが、素直に話をしましたら、信じていただき、ご助力もいただけました」
「そうか、助力ということは何か求められたのではない
か」
「武田様からは、私の気概が見たいと言われましたので、精算が済みましたら、甲斐に戻り気概をお見せしようと思っております」
「そのようなことになっておったのだな。それでは、その気概は儂から義父殿に渡そう。それを光賀から渡してくれ」
ありがたいことだな。そのような気遣いまで我ら連雀までしてくれるとは、今回は、その好意に甘んじて受けさせてもらおう。次の商いでお返しさせていただこう。
その後、里見様の気概を武田様にお渡ししたが、非常に喜ばれていた。