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0078. 閑話・【光賀】初商いで先手を取られる

定期的に長く投稿しようと思いますので、ブックマークと☆、「いいね」で評価をしてくれたり、ゆるめの感想とご意見もらえると、嬉しいです!!

 昨日、里見様から商いをしたいゆえ、今日の巳の刻に来てほしいと先触れに言われたが、わしができる商いなぞ、そんなに無いのだが、何を商いされたいのだ。さっぱりわからぬな。


「里見様、仰せの通り、光賀仁右衛門、罷り越しました。本日はお声がけいただきまして、ありがとうございまする。

 早速ではありますが、本日は商いとの話を伺っておりますが、どのような商いをご依頼でしょうか。買い付けであれば、この安房一の手前にお任せください」

 まずは、しっかりと挨拶をしたうえで、些か嘯いておかねば、利が出なんだろう。


 里見様からの商いをしたい理由をお聞きしたが、話の筋は通っておった。

 いやはや、まさか、里見様からの商いが甲斐の国からの人買いとはな。人買いなぞ、連雀の儂ですら、やることでは無いのに。これは困ったことになったの。

 まずは、どの程度の額を考えておられるのか確認しつつ、出来るだけ利が取れるようにせねば、損がかさむ気がするな。これは気を引き締めていくか。



 里見様からは「一人あたり、500文とでいかがじゃ。先ほど言うた通り、どのような歳の子、幼子でも、この地に来れるなら、来たら500文を渡そう」と言われたが、そのような額では、利が出ぬどころか、持ち出しをせねばならぬ。せめて、650文、いや、700文は貰わないと無理だな。


 その後、どうにか交渉して800文までになったが、最初から800文を考えておられた気がする。でなければ、

「遠い甲斐まで苦労かけるのを労い、追加で一人あたり、100文出そう」などの言葉がこの場で出るとは思えぬ。

 交渉が里見様の思い通りになっている感じだが、ここは一旦、引く事にして様子をみるか。

 それにまだ人数も分からぬしな。人数次第で利が変わるから、まずは人数確認だな。


 人数を確認すると、里見様から「将来的な北進を考えると、今回は最低でも、50、出来れば、100は欲しいの」

と言われたが、大商いでは無いか。

 儂一人でどうにかなる人数では無いわ。実家の伝手を利用したところで、この人数はこなせまい。これは困ったことになったぞ。

 早めに話を切り上げ、実家に相談しに行かねばならぬな。あとは、久遠寺や浅間大社にも寄進して、一時的に預かって貰うしかないか。何が打てる手か考えねば。


 話を切り上げ、立とうとすると、里見様から止められた。まだ話が終わってないとのことだが、あと何を話しされるつもりだ。ほかの商いの話か。もう一度佇まいを直して、話を聞くことにしよう。


「仮に久遠寺や浅間大社に助力を頼むのであれば、幾許かの寄進が必要であろう。その寄進代の一部を里見家が負担しようぞ。

 一人あたり200文を出そう。寄進代を含め一人あたり、1貫文で頼むぞ。それといくつか我が里見水軍の船も出そうぞ。今川家の駿河の湊から乗せるが良かろう」

 何と、儂が久遠寺や浅間大社に預けようと考えていたことを見抜かれておったか。さらに寄進代を持ち、里見水軍まで、駿河まで出していただけるとは、どこまで先を見据えて動かれておるのじゃ、里見様は。


 とはいえ、寄進代を除けば一人あたり800文か、年高としだかの者だと割に合わぬな。赤子から間引きされる歳の子を主に買い入れな利益は出んだろうな。次の商いから期待をするか。

 まずは、富士山本宮浅間大社の大宮司に話を通して、甲斐での人買いを補助してもらうか。それと、身延山久遠寺などに話をせねば。寺社は小坊主などを受け入れておるからな。そこから買い入れてもよかろうし、村々に話をつけてもらってもよかろう。

 里見様から武田様宛ての手紙を受け取ると、館を辞去し、旅の準備を進めることにする。まだ刈り入れ時期まではあるが、浅間大社と久遠寺に話を通すためにも一度、駿河に行かねばなるまい。

 実家に戻らなくても済んだ分、時はまだあるから、じっくり腰を据えて取り掛かることにするか。



ーーーー

 まだ秋の刈り入れ前というのに、相変わらず府中の街は、賑わって物が豊富であるな。今川家の治世は盤石ということか。

 まぁ、里見様の領地と直接接している訳ではないので、商い相手としては、丁度良いのかもしれぬな。まぁ、何はともあれ、浅間大社と久遠寺に赴かねばならぬ。

 武田様のところに行くのは次回とするか悩むな。何事も急いては事を仕損じる、我らは店持ちの商人ではない。

 多少の臆病さが身を助けるというしな。まずは富士氏のところに挨拶をして浅間大社に行くとしよう。


 無事に富士氏と浅間大社への挨拶と久遠寺へ行くための準備は終わった。とりあえず、浅間大社の神領で甲斐から買い付けた孤児や間引きの子供達を一時的に預かってもらえることになってよかった。

 預かり料として里見様からの額より多少おおく喜捨をする必要があるがしょうがなかろう。さすがにわしだけでは、何人も連れて帰るのはできないからな。

 久遠寺でも同じ様に甲斐の国中から集めた孤児などを預かってもらえるようにお願いをせねばな。喜捨し過ぎると、足が出るから、里見様に値上げの話をしないと駄目かもな。

 さて、刈り入れ前には久遠寺から戻ってこれるかな。里見様にも一度、状況をきちんと話しておく必要があるが、戻るか手紙にするか悩むな。

 手紙から漏れても困るし、手間ではあるが、久遠寺の件が済んだら、戻るとしようかの。値上げの話もする必要があるしな。

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