0076. 閑話・【飯母呂】現状の憂いとこの先の道
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ーーーー飯母呂一族ーーーー
我ら一族が将門公と共にこの坂東で蜂起し、将門公が討たれてから幾年、一族の念願は叶わず、この坂東も鎌倉殿から室町殿に代わり、室町殿の血が入り続けておる。
このままでは将門公の想いを叶えることなく、我ら飯母呂一族が族滅してしまう。すでに一族の一部は、山陰やら伊豆に移り住み、ばらばらになってしまっておるしな。一族の復興までの道筋が見えぬ状況になっておる。この先いかがしたら良いのであろうな。
この筑波山の地も気づけば周りは室町殿の血脈、関東管領などが蔓延っておる。いつの間にか、坂東ではなく、関東と呼ばれておるしな。我らもこの地を離れる時期に来たのかも知れぬ。
この先のことを想い悩みながら、部屋に居ると外が少し騒がしいな。何事かが起こったか。
「大将、見ず知らずのものが大将に会いたいと来ています。いかがしますか」
「何者だ。会いに来たやつは」
「鞍馬のものだと名乗ってます。先触れのようで、会いたいと言ってるのは、安房の里見家の者のようです」
「鞍馬に里見家。鞍馬は聞いたことねぇな、里見もなんで、わざわざ常陸まで来んだ、何を考えている」
鞍馬とな。何処の者だか分からぬ、この坂東でそのような名のものなどおらぬがいかがするか。
それと安房里見家か。あのようなところからわざわざ来るとは、変な事にならねばよいが。何の目的か、何も分からねぇが、追い返しても腹落ちしねぇから、会って話だけでも聞くか。
「まぁ、とりあえず話だけでも聞いてみるか、こんな小さな村にまで来たんだしな。とりあえず、通しな」
しばらくすると、一人の男がやって来たが、立ち居振る舞いが、その辺の武家に仕える者じゃねぇな。儂らと同じ匂いするが、どこのものだか分からんな、里見家といやぁ、海の者だが、どこぞで拾ってきたか。
「本日は、わざわざあいすまぬ。儂らは、鞍馬衆で京の都から来ておる。今は、安房の里見家に仕えておるが、板東は初めてゆえに聞かん名だろう」
わざわざ、出処を言うとは相対する気はねぇと言うことか。それに京の都とは、遠いところから来たもんだな。
あぁ~、そうか、京の鞍馬とは、鞍馬天狗の鞍馬か。確か鎌倉殿の九郎義経殿の話であったか、記憶が定かではないが、それに属する一族か。
「いや、構わねぇ、わざわざこんなところまで、来てもらってなんだが、何か用でもあるんか」
「我が主から、飯母呂一族の住んでいるところを確認してほしいと言われてな。それで確認のために来たのよ。話をしたのは、我が主の方だ。一門衆の堀内殿が来られよう。我らの時もそうであったのでな」
「わざわざ、安房の里見家が儂らを探すとはな。それも京から人を寄越してまで。何をさせたい。村の周りにもいんだろ、お主の仲間が」
いつのままか、村の周りに人がおるな。ただ、森もざわつかず、静かだから、殺気や緊張感はないようだ。手を出す気は無いな。なら、もう少し話をして、鞍馬のやろうの出方をみるとするか。
「少し勘違いしておるようだが、我ら一族郎党、すでに京を離れ、安房におる。里見家の家臣としてな。あと、周りに我が手の者はいるが、お主らを攻めようと見張っているわけではない」
「へぇ~、そうなのかい。一族郎党で本貫地から移り住んだのか、詳しく教えてくれんだな」
こいつの状況まで話すとは何を儂らにさせたいんじゃ、まだまだわからんな。詳しい話はする気が無いな。そうすると里見家は本当に先触れとして、我らと同様の者をこちらに遣わしたということか。
何を考えているのか、里見家がそこまでして何をしたいのか、これ以上の探りは無理じゃな。やはり明日、堀内殿と呼ばれている者の話を聞くしかないか。
「儂は、まぁ、先触れじゃ、話の内容については話せん。明日、堀内殿を連れて参るので、話を聞いてほしい」
「わかった。明日の昼にでも来てくれ。その堀内殿の話を聞いて、儂らで判断する」