0075. 閑話・【鞍馬】鎌倉から室町。そして、その先へ
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その後、無事に小さな湊に着き、里見家の当主殿にお会いした。奥方様も同席されて、我らを銭雇いでなく、里見家の家臣として仕官してほしいとの話が本当であったことを改めて聞いたうえで、我らが住む事になるであろう土地を見ることも許された。
見に行った土地は、今の我らの住まう地より豊かな土地であった。海も近く、拓けた土地もあり、また山々もすぐ近くにあるため、山の幸、海の幸を採ることもでき、堀内殿が言っていた通り、食に困ることはあまりない感じがした。
また、三方を山に囲まれた地であり、まるで鎌倉の地に来たのかと思える場所であった。これならば、一族郎党で移り住むのに不便はないと思えるな。
これは帰ってから皆を説得せねばならぬ。一族の長として軽々には判断できぬ立場ではあるが、儂はこの地に住まう事にしたいと思うてしまった。
九郎義経様の想いをつなぎ、鎌倉殿、室町殿の世を最果ての底から見てきた我らが新たな道を切り拓くには、もってこいの素晴らしき土地だと感じたのだ。
ただ1つ心配があるとすれば、このような地まで用意して、お守りせねばならぬ方に会えなんだことよ。どのような気性か次第では、一族の者が耐えれなくなるやもしれぬな。一度、堀内殿にどのような気性の方か、聞いてみるしかないか。
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「皆、待たせたな。安房に行き見聞きして参った。いろんな事がわかったので話をしようと思う。安房では、里見家の当主殿と奥方様にお会いし、直接話をした。我ら一族郎党を迎え入れたいということは真であった。
また、我らが住む事になる土地も見ることが許され、見て参ったが、海に近く、周りは山に囲まれた、食には困らぬ地であった。
儂は、伝え聞く鎌倉の地と同じ土地であると思うた。まだまだ、この地より整ってはおらなんだが、先のある地であると儂は感じたぞ。
ただ、お守りをするお方には会えなんだので、その地に、住んだあとはどのようになるかは分からぬ。また、堀内殿からどのような気性の方か尋ねたが、答えは聞けなんだ。
堀内殿もその方にお会いしておらぬのではないかと思うぞ。会ったことがあるが、答えられぬというよりは、会って話したことがないゆえに、答えられぬという感じであったのでな」
ここまで話をすると、反応は二つ、里見家当主が進めていることであっての驚きと食に困らないことになりそうだということでの喜びとどちらにせよ、前向きな反応でよかったわ。
「さらに皆が気にしておった移動であるが、里見家の水軍が動いてくださるそうだ。儂も驚いたが、移動のほとんどは船で行く事になる。
儂は尼崎から紀伊、大湊などに寄りながら行ったが、皆も行くのであれば、その道になろう。移動の負担は思うたよりは不安はない。
さて、儂からの話はこれまでじゃ、皆はいかがする」
「お頭の話が本当なら、我らは移り住んででも良いと思うぞ」
「いや、一族郎党で移り住むのは、九郎様に申し訳が立つまい。ここは一部行きたいものだけでよいわ」
「ここに残っても先は無かろう。どうにか食いつないでおるだけで、皆、苦しい生活をしておるのだ。まずは、生きていける地で、九郎様の想いの本懐をすればよい」
「お主何を言うておる、本懐するにしても、本貫地を捨てるなどありえぬわ」
熱を帯びて話をしておるが、殴り合いになりそうなので、止めに入る。
「ええぃ、止めぬか。皆の想い、わこうておる。本懐をせぬはありえぬが、一族郎党がこのままでは、減っていってしまうのも事実、苦渋の決断ではあるが、新たな地で一族を繁栄させ本懐を遂げようと思う。
また、安房は鎌倉に近い、本懐の一つを実現するのもしやすかろう。皆、儂のこの決断を許して欲しい」
「お頭がそこまで言うのほどのものなのか、安房の地は。あまりにも旨い話しすぎて、どこか騙されておるのではないか。本当に大丈夫なのか」
「確かにお主らが安房の地を見聞せずに、儂に任せてほしいというのは、不安であろうが、儂が里見家当主左馬助義実様とお会いして、その話を信じたのじゃ、儂が身命を賭して行うので、付いてきてほしい」
「お頭がそこまで言うなら、お頭の判断に従うか」
とりあえず、意見は纏まった。この後は早く移り住むのみじゃな。
皆の意見が纏まった事を堀内殿と副貫主に話をし、移住を決めていくが、数ヶ月もあれば、移住もできるだろう。
年寄りや赤子から移住を進める事になるであろうが、無事に誰一人欠けることなく、済めばよいが。
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移住を決めてから、数ヶ月、無事に一族郎党の移住が完了した。離脱するものもいなく、よかったわ。
それにしても、護衛の方があのような方とは思わなんだし、鞍馬天狗様を感じられるとはな。九郎様の想いは、あの方の中にしっかりとあり、我らの新たな主は支えがいがあるわ。我らの決断は間違いないと確信できるぞ。