0074. 閑話・【鞍馬】鎌倉から次への旅路
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一族の主だった者が集まったな。これで、堀内殿の話をいかがするか話ができよう。
「さて、皆の意見を聞く前に、先ほど弥太に鞍馬寺に行ってもらい、なぜ、貫主殿が我らを紹介したのか、確認してもらった。まずは弥太から話を聞きたいが、いかがであった」
「へぇ、お頭。副貫主様に話を聞くことができましたが、詳しくはご存知ないようです。昨日、貫主様宛の手紙をお持ちになって現れ、貫主様とお二人でお話をされたそうです。
その後、貫主様に呼ばれていくと、本日、堀内殿をこちらにお連れするようご指示があったとのこと、それ以外の話は無かったとのことです」
「それでは何も分からぬではないか、まぁよい。そうだろうと思っていたので構わぬ。さて、皆に問おう、今回の話、いかが思う」
「ワシは、今さら別の地に移り住んでも何もあるまい、苦労のやり直ししか無いじゃろ、無駄じゃよ。この地に皆で残るのがよいと思うぞ」
「いや、おれは行ってもいい。この地は本貫地ではあるが、表向きは寺領であるため、お寺の言うことを聞かにゃあかん。
それなら、新たな雇用主の地に行っても同じだ、聞かにゃいかんことは変わらん。それに食に困らぬと言うておるなら、それだけでも十分であろう」
「ワシも行ってもよい、今までも外に出て行かな、生活が出来んかった。長く外にいると思えば、気にならん」
「年寄りや赤子などは移動に耐えられん、儂は反対じゃ。一族郎党で行けんものに縋らん。それに儂らの宿願を成就するためには、この地で技を磨くがええんじゃ」
「宿願というても、今はもう室町殿に代わっておる。鎌倉殿はもう居ないのじゃ。新たな道を選んでもよかろう」
「何を言うておるのじゃ。我ら一族が今生きておるのは、九郎様がおったからではないか。その九郎様との約束を反故にするとは、貴様、何を考えておるのじゃ」
「安房の地ならば、鎌倉にも近い。宿願を成すならば、鎌倉に近い安房に移るのがよいのではないか」
「宿願をするのは、安房や鎌倉の地ではないと思うぞ。それならば、わざわざ坂東に下らんでもよいのではないか」
意見は予想通り纏まらんか。が、思うたより反対が少ないな、上手く話せば、移り住んでも構わんか。
儂は九郎様の本懐を遂げれれば、それでよい。奥州にも住んでいた我らが土地に拘って何になる。拘るのは、九郎様の宿願のみで十分じゃ。
「皆の意見、よう分かった。見ず知らずの土地に移るのも厳しいじゃろう。そこで、儂が堀内殿と我らが住む土地を見に行ってくる。
可能であれば、護衛するお方も見て来たいが、あそこまで言わせるお方だ、移住を決めないと会えないだろう。
儂が土地を見に行くことで、道すがらの状況も分かろう。年寄りや赤子でも大丈夫か、移動に耐えうるか、見極めておくとしよう。儂に任せてもらえぬか」
「まぁ、お頭がそう言うなら、異論はない。一族郎党のこの先を託すことにしよう。だけど、鞍馬寺は大丈夫か。我らが居なくなって」
「それは、大丈夫であろうな。副貫主が気が急いていたと言っていた。多分、話の内容は知っておろう。
それと我らの居なくなった土地に入れる人も堀内殿に考えがあると思うぞ」
「そこまで、考えているのか、それなら移り住むで話を進めてもよかろう」
「いや、あくまで儂の考えよ。正しいかどうかは分からぬ。なので、安房の土地を見て、この話を見極める必要がある」
とりあえず、話し合いは纏まった。実際に土地を見れば、我らをどのように遇するつもりなのかも、わかるであろう。それでも納得せぬものは、寺にお願いをするしかあるまい。
翌日、堀内殿に話し合った結果を伝え、儂ともう一人で土地を見に行くことにした。儂らの旅の準備が整った数日後に安房に向けて、堀内殿と共に行った。
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思うたより、旅はきつくなかったな。まさか、船での旅がほとんどとは思わなんだ。
「沙門殿。船旅は大丈夫でしたか。我らは慣れておりますが、大島を抜けたので、もうすぐ、我が里見水軍と合流することになります。
まずは館山に着くので、そのまま、殿の下に参りましょう。社のある神域に行けるかは、殿のお考えをお聞きせねば、決められませぬゆえに」
「いや、お気遣いかたじけない。思うてた以上に快適でした。歩かずに済むのは、老人や赤子を抱える母親にとっては、ありがたい事」
「殿より、一族郎党に移り住んでもらうために、里見水軍の船を使わねば、来れぬ者もいるとご指摘がありましてな。遠くまで出せる船を全て使えるように準備しております」
いやはや、何とそこまでの力の入れようとは思わなんだ。里見家のご当主は何を考えておられるのだ。