0069. 閑話・【二郎太郎】御神託は謀りか
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「殿、お二人がお聞きした御神託、いかようなことであったのでしょうか。事が事だけに話の内容と某達の動きにより、我らが里見一族の岐路に立つやもしれまするぞ」
さすが、叔父上じゃ、おれの気になっていることを直接聞いておられる。
「父上、この二郎太郎、御神託のご指示を身命を賭して、完遂致す所存、いかような内容で」
叔父上への回答次第ではどうなるか分からぬが、素直に一度は受け入れておく必要があるな。
「三人ともありがとう。御神託の内容については、これから指示することが完遂した後でないと、その方らですら、伝えられぬ。
これは、真里とも話をした結果じゃ、覆ることはないと思え。そのうえで、三人には、頼みたい。
まずは、この地の南側の山を超えた先にある平砂浦の南側に新たな社を建立する。また、平砂浦を神領として、門前町を建設するのだ。
これは、御神託に対する奉納として行うものとする。氏兼は、その社の宮司として、二郎太郎は出仕として、仕えてほしい。また、たきは、女官として行ってほしいのだ」
はぁ、父上は何を言っておるのだ。御神託が本当なのかすら、分からぬのに、叔父上が宮司、おれが出仕になる。
これは寺への出家と同じことではないか。おれは廃嫡されるのか。兄上の邪魔になりかねぬと父上は思われたのか。妹の琴が産まれたこの時期を狙っていたのか。これは御神託は噓ということでは無いのか。
父上が何を狙っておられるのか、分からぬ、理解できぬ。だが、このまま引き下がっていては何も出来ぬまま進んでしまう。
「殿、何故に我らが神職として、社にひきこもらないけないのですか。特に二郎太郎様は、御家の御曹司として、嫡子では無いとはいえ、重要な親族でありますぞ。
御家のために、親族衆をこれから引っ張っていく立場になられる方、この氏兼、今の話だけでは、腹落ちが出来ませぬ。二郎太郎様はいかがですか」
叔父上も今の話がおれと叔父上の排除でないかと考えられたか。おれも叔父上と同じ考えじゃ。
「父上、おれも氏兼と同じく納得が出来ない。
おれは廃嫡されるのか。神の御使いの御神託と謀って、おれと氏兼を押し込めるつもりなのか」
目に涙をためながら、必死に気持ちを抑えて、父上と母上の顔を見据えて言った。おれと叔父上の言葉で反意をしてくれると良いのだが。
「馬鹿者が、二郎太郎も氏兼も、里見家当主の儂の話を最後まで聞かず、あまつさえ、御神託を謀りと考えるとは、お主等に失望したぞ、表面だけの話で判断をするなぞ。
此度の話、先ほど、誰にも話をしてはならぬと申し伝えておったはず。誰かに話をされても、困るゆえ、そなたらは、この場で腹を切れ。
切れぬなら、儂が切り捨ててやろう。今日の話はここまでじゃ。たきは申し訳ないが、今日の話を外でされては困るゆえ、しばらく部屋に幽閉させてもらうぞ」
おれと叔父上に腹を切れと、切らねば、父上自身でおれを斬ると、そこまでおれと叔父上は疎まれていたのか。
まったく気が付かなんだわ。部屋を開け放ったのは、おれらを安心させるためで、上手く父上と母上に謀られたの。もう何も考えられぬわ。
だが、叔父上は何か釈明しておるな。おれも何も考えられぬが、謝罪だけはしておこう。おれの何が悪いか分からぬが。
「父上、おれも父上の話を信じてないわけでは無い。氏兼が言う通り、急な話で混乱していて、謀りと言ってしまったのだ。本心では無いゆえ、父上、母上、許してほしい」
謝罪したあと、母上が何かおれのことを言っておられる。おれを庇っておられるのか、言葉のすべてがすり抜けて行くが、「幽閉する」との言葉はわかった。やはり、おれと叔父上は押し込められるのだな。
叔父上もおれも、もうぐったりとして、顔も上げられぬわ。血の気が引いているな。自分でわかるぐらいとは、情けない。最後は父上の子、当主の子として振る舞わねばならぬのに。
「二郎太郎と氏兼を座敷牢に幽閉せぃ。また、たきも後室に幽閉せぃ」
父上の声を聞き、駆けつけた小姓達におれと叔父上の脇が抱えられ、座敷牢まで連れて行かれた。
もうこの場所に戻って来ることは無いか。