0252. 少しの進みの中で珍しい人がやって来た
狐火ちゃん達の好きな食べ物や遊び道具を作って食べたり、遊んだりするようになって、少しは狐火ちゃん達とのコミュニケーションをスムーズになってきた気がする。まだリンクして会話(念話)できるレベルまでにはなっていないが、だいぶ意思疎通はできてきたと思う。これなら、もうちょっと頑張れば、会話レベルの意思疎通できるようになりそうだ。
勝手方のみんなに作ってもらった食べ物もよく食べている。まぁ、狐火ちゃんの辛いものだけまだ出来てないけど、花梨ちゃんと水蓮くんの分を多目に作ってもらっているので、3人でシェアして食べている。
ちなみに唐辛子などの香辛料は、光賀が琉球の商人に頼んで買い付けしてもらうことになった。まぁ、こっちに来るまでは当分先になると思う。なので、のんびりと待つとする。
あと戦車は、花梨ちゃんがダンジョンの1層でガンガン使っている。時々、狐火ちゃんにも貸してあげて、2人で楽しんでいる。この様子だと、もう一台作ってもらったほうが良いかもね。会話できるようになったら、聞いてみようかな。
フリスビー、ブーメランも同じようにダンジョンで使っている。これは、私も投げて楽しいので、とても良い。大きな広場で犬と遊ぶ飼い主の人の気持ちがようくわかった。めっちゃ楽しいし、狐火ちゃんも花梨ちゃんもとても喜んでいる。
っで、水蓮くんといえば、2人が戦車やフリスビー、ブーメランで遊んでいるときは、人形を愛でている。特におままごとみたいなことをするでもなく、着せ替えなどもせず、人形と向き合っていることが多い。飾って見てるのが好きみたいね。
今は1体だけなので、私のマンションの部屋に飾ってるけど、数が増えたら置き場が無くなるので、図書室か工作室の一部にスペースを作って、そこに飾っておくようにしないとなと今から思っている。まぁ、飾るというか置き場のスペースについては、人形だけで無く、戦車やフリスビー、ブーメランもあわせてなんだけどね。
実は、職人さん達が定期的に勝手方の人達が狐火ちゃん達のための食べ物を奉納していると知って、自分達も今回作ったものを定期的に作って奉納したいと言ってるらしいのよね。
さすがに邪魔になるから要らないとは言えないので、色違いとかデザイン違いのものだったら、いいんじゃないって、言ってしまったのだ。
なので、これからもまだまだ作って納品されることだけは決まっている。
まぁ、そんな感じで狐火ちゃん達が楽しんでいる横で、私も魔使力強化のために鍛錬をしている。今までやってきた基本的なことをやりながら、もう少し魔使力強化をするのに必要なことを、将門公や師匠に聞いたり、図書室で調べたり、時々、狐火ちゃん達と少し実践してみたりと忙しなく動いている。
ーーーーある日の午後
今日も朝からダンジョンで鍛錬したり、ルーティンワークをしたりして疲れた体をぼ〜っとして休めていると、珍しくまつ達が声をかけてきた。
「琴音様、お休みされているところ、申し訳ございません。次郎太郎様がお出でになられております。何やら、お話したいことがお有りになるようでございます。一旦、奥之院の広間にお通ししておりますが、いかが致しましょうか」
「へっ、兄上が来られてたの。いつもは氏兼の下でいろいろと動かれていて、なかなかお会いすること無いし、ここまで訪ねてもこないのにね。どうしたんだろ。それで、氏兼も一緒なのかな」
「いえ、氏兼様は同席しておりません。次郎太郎様のみでお越しになられています」
おぉ~、氏兼も同席せず、1人で来るなんて、ほんとに珍しい。というか、初めてではないかな。こちらの世界に来て。父上、母上と一緒に生活していた頃にも無かったし、当然、この大聖宮に引っ越して来てからもない。何があったんだ。
「そうなんだ。ほんとに珍しいね。それで何か用件みたいなものは聞いてるかな」
「いえ、それも何も聞いておりません。お伺いはしたのですが、琴音様に直接、お話をしたいとのことで、私達にも言えないとのことでした」
う~ん、なんだろう。ますます珍しいというか、怪しい。今までに無い行動過ぎるわね。念の為、氏兼達に横の部屋まで来てもらうかな。同じ部屋に居たら、話をしなさそうだしね。ここまでのことをしてまで、直接話をしたいってことは。
「わかったわ。それじゃあ、兄上にお会いしましょう。ただ、氏兼達に隣の部屋で話を聞いてもらいたいので、すぐに呼んで来てもらえるかな。
それまで兄上には待ってもらいたいところだけど、変に待たせると呼びに行ってるのに気づくかもしれないから、私が寝ていて、まだ起きないので、少し待って欲しいと兄上に伝えて。それで時間を稼ぎましょう。
氏兼達が兄上の隣の部屋に来て、準備できたら、呼んでもらえるかな」
「承知しました。次郎太郎様にお伝えして、氏兼様皆様にお越しいただくようにします」
それにしても、何があったんだろう。氏兼達のブラック気質に耐えられなくなって、この大聖宮から去りたいってことなのかな。
氏兼達のことなら、ありうるな。いやっ、それしか無いでしょう。それ以外に思いつくようなこともないし。
氏兼めぇ~、だから言ったじゃない。ブラック過ぎるって。下の人間が付いてこなくなるよって。全く自分の直属の部下、親族から脱退者を出すなんて。恥ずかしいわ。氏兼に後で、しっかりと説教をしておかないと。
ーーーー20分後
「琴音様、氏兼様達が来られ、次郎太郎様の隣の部屋にお入りになられました」
「そう、ありがとうね。それじゃあ、兄上に会いに行きましょうか」