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0216. 閑話・【甲斐の孤児】地獄への道か。それとも極楽か。

定期的に長く投稿しようと思いますので、ブックマークと☆、「いいね」で評価をしてくれたり、ゆるめの感想とご意見もらえると、嬉しいです!!

 もうこの村には、おら達が食べれるような物はほとんどねぇ。おら達の住むこの国は甲斐と言うらしいが、ここではあまり米が育たねぇ。稗や粟だったら少しは育てやすいが、あまり美味いものではないんだ。まぁ、腹が減っているので、食べれるだけマシだったんだが、最近は、日照りがあったりや洪水が起きたりと、畑で十分に育たねぇ。

 うちの家も食うに困っているんで、このままだと死んでしまうと、夜逃げするか、おら達を奴隷として売るかの話を夜中にそっとお父ぅ達が話をしておるのを聞いちまった。

 隣の家の新太はお寺に預けられたようだが、そのお寺からもこれ以上の子供は預かれないと、言われてしまったらしい。なので、おら達は寺に預けられることは無いのだが、それが良いことなのか、わからねぇ。


 そんな毎日の食うものに困っていたある日、村に噂話が流れてきたらしく、両親が話をしていたのを聞いた。

 お父ぅが言うには、どこか他国の連雀商人が御領主様に命じられて、村々で子供の人買いを行っているらしいとのこと。特に兄弟、姉妹のいる子供達をまとめて人買いして、久遠寺等の大きなお寺に送っているらしいとのこと。


 おらはそんな話があるわけねぇと思った。新太が預けられた寺も小さくない寺なのに、もう預かれないと言ってるのに、御領主様の命令とはいえ、寺が受け入れるなんて思えねぇし、何より武士の人や村の長が動かないで、なんで関係の無い連雀商人が人買いの金まで出して、寺に送るのか意味がわからなかった。せっかく買ったのに、寺に預けたら売れずに損をするだけだと思ったんだ。


ところが、腹をすかしてもう動くに動けない感じになってしまった数日後に、おら達の村にその連雀商人とやらが来たんだ。あの話が本当かわからねぇが、連雀商人が人買いをしているのは本当だったらしい。商人が来てからすぐにお父ぅは、様子を見に行ったが、帰ってきて来たのは、夕方過ぎてからであった。長い時間見に行っていたようだが、何があったのだろうか。

 その夜、お父ぅとお母ぁは、何か話し合いをしてたようだが、おら達には聞こえないぐらい小さな声で話をしていた。まぁ、おら達には関係ないことだと思ったし、久しぶりにご飯をお腹が満足するほど食べれたおかげか、お腹一杯で眠かったので、すぐに寝てしまったんだ。


 翌朝、起きるとお父ぅはもう居なかった。お母ぁに聞くとお父ぅ達は村長に呼ばれて、出かけてらしい。

 それから少し妹と過ごしていると、お父ぅが帰ってきて、おらと妹を連れて村長のところに戻ると言う。お母ぁは、何故か涙ぐみながら、気いつけて行っておいでと言ってくれた。今思えば、おら達を売ることを知っていて、最後の別れを我慢していたんだなと思う。


 村長のところに着くと、家の前に何人かの子供が来ていた。よく見ると私もよく遊んでいる子も何人かいた。みんな、おら達を待っていたのか、おら達が着くとすぐに村長の家の庭にみんなで入った。

 庭には、村長と隣に見たことのない人が座っていた。おら達は、そのまま庭に座らされ、話を聞くことになった。なんでおら達を呼んだのか、最初は全くわからなかったが、話を聞いてるうちに、見知らぬ男は、連雀商人で、おら達を人買いに来ていたのがわかった。


 結局、おら達は全員売られることになってしまった。まぁ、おら達も食うに食えず、明日死ぬかもしれないとわかっているので、お父ぅ達がおら達を売ったお金で飯食えればいいと思ってしまった。おら達は、家の仕事ができるほど大きくないので、口減らしにされてもしょうがあるめぇが。

 その後、おら達は買った商人と一緒に各家に戻って、最後の別れをした。商人がわざわざこのようなことをするのが不思議でならなかったが、ちゃんとお母ぁとお別れができたので、それは嬉しかった。あと、金の他にも稗や粟だけど、食べ物を一俵ほど追加で出してくれた。おらの家では冬を越せるほどの十分の量ではないけど、お父ぅ達が当面食べて行けるぐらいある。もう会えないが、お父ぅ達には、元気で居てもらいたい。いつか会えるかも知れないから。


 それにしても、どこに連れて行かれるのか、分からないが、随分と小さい子も買われているんだと思った。当面の行き先はこの国に久遠寺というお寺だとは告げられたが、そこから先もまだまだ遠いと言うことだけ聞いた。

 やっぱりお父ぅ達にはもう会えねぇな。行く場所が遠すぎるじゃねぇか。

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