0214. 閑話・【たき】 中後 姫御子様の自由奔放記①
定期的に長く投稿しようと思いますので、ブックマークと☆、「いいね」で評価をしてくれたり、ゆるめの感想とご意見もらえると、嬉しいです!!
最近、1話が長くなってきたので、今日の話も少し短めに書いてみました。
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座敷牢に入った翌日には御方様がわざわざお越しになってくださいました。そして、ご神託の内容を昨日よりも詳しくお話をしてくださいました。昨日の話以上の話に私も途中から混乱してしましい、頭が働かず、きちんと理解できることはなかったので誤解はあるかと思うのですが、神託内容を要約すると、概ねこのような感じであったと思います。
一つ、琴様は姫御子として、この世に神の恵みをもたらす存在であり、加護を与える。
二つ、私達の目には視えないが、御稲荷様の御使い様がそばにお付きになっている。
三つ、琴様を嫁に出してはならぬ。
最後のところだけは、何故なのか理解できなかったのですが、この三つ目があるからこそ、平砂浦あたりに社を建立するということを決められたのだと思いました。
御方様はご神託に驚かれたが、同時に喜ばれたと申され、御殿様と二人で姫御子になるまでは、しっかりと琴様を大切に育てられることを誓われたと言われました。
そして、姫御子になった後も手紙などのやり取りをするために信頼できる人間を琴様のそばに早くから置いておきたいと考え、私たち3人を選んだと。
そのようなことまでを琴様が生まれて間もないこの期間で決められるとは思いませんでした。また、そのような重要な役目を私に託していただけるとは、この上ない喜び、幸せのことだと思いました。一方で、琴様はまだ生まれて間もないうえ、御方様自ら、乳母の者と子育てをしており、私はお顔を見ることはありませんでしたので、まだ見たこともお会いしたこともないそういう状況であったため、失礼ではありますが、座敷牢で御方様のお話を聞いた時も信じられないでおりました。
その後、部屋から出していただき、琴様のところに向かいました。琴様の部屋に行くまでも歩きながら、御方様は、先ほどの話の補足を丁寧にしてくださいました。
話のきりがよいところで、琴様のいらっしゃる部屋に着き、そのまま部屋に入りました。
部屋に入り、布団の上で寝てられる琴様の顔を見た瞬間、御方様の語られたその言葉が本当であることを感じ、何故か涙を流してしまいました。私自身にご神託が降りて来たわけではありませんが、何か運命のようなものを感じたとその時は思ったのです。
そして、その場で直ぐに御方様に琴様のそば仕えにさせていただきたいとお願いをしてしまいました。御方様の侍女頭をしていることを横に置いてしまい、大変失礼なことを申し出てしまったと、はっと我に返ったのでした。
でも、御方様は元々、私を侍女頭から琴様が将来お住まいになる社の女官取りまとめにさせる気でいたようで、私を見ながら、微笑んで、私が役目に付くことをほっとしておるようでした。
私はその時なぜか、その役目に誇りを感じ、今後ずっと、琴様の成長を見守り、様々なことのお手伝いすることができるのだと思い、嬉しく思っていました。
しかし、私の考えは甘かったのです。琴様は姫御子様になられるお方で普通のお子ではありませんでした。
琴様はまだ寝がえりの打てない小さな赤ちゃんの頃から、空中にある何かに触れようと一生懸命に体を動かしたり、何もないはずのところで物を触ったり、動かしたりするような動きをされていたりと、神の御加護があり、姫御子様になられると知っていなければ、狐憑きかと思い、恐ろしく感じているであろうことをいつも行っていたのです。最初に見たときは、微笑ましく見えましたが、ずっと行っている姿は最初の頃は本当に異様に見えました。
また、時々、琴様の寝ているそばで何か音が聞こえたり、一瞬、周りが歪んで見えたりと怪異だと思しきことも起こり、すぐに御方様にご相談申し上げたのです。そして、私の報告を聞いていた御方様から、その音やゆがみの原因は御使い様では無いかと言われ、すっかり失念していた自分を笑いながら、琴様は見えない力で守られていることを改めて実感したのでした。
御方様からのご助言を聞いた日から、琴音様を見る目が変わりました。よく観察していると、すでにご自身の意思をお持ちになられているんではないかと思うようなこともあり、生まれた時から神の御加護を持っておられたのだとより実感したのでした。
そして、その力は日々増していった気がします。
琴音様は御使い様のお声が聞こえて会話されているかのように、何かのアウアウとしゃべっている時間がございました。
多分、御使い様の気持ちや考えが聞こえているのでしょう。長いときには半刻や一刻もの時間、しゃべられたりしておりましたね。
そういう時間は、本当に慣れてしまえば、微笑ましい時間となり、まつの小さな時を思い出したものです。
琴様もそういう時を過ごすうちに徐々に大きくなられ、寝返りを打つことも出来るようになったのですが、今思えばそこからが大変な時間の始まりでした。たぶん、御使い様と何やらやっておられるのだろうと思えるのですが、寝られている布団の上だけでなく、畳や板の間の上でも、バシンバシンと寝返りをしながら、手を叩きつけておられたので、ケガをされないかと必死に布団の上に戻すようにしたのです。
部屋に居て、怪我をするようなことだけは避けねばなりませんので。