0210. 閑話・【鞍馬天狗】四つ目の台本の読み合わせ
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ーー鞍馬天狗思い出編 台本:作 葵、演出 無し
鞍馬天狗:「姫御子よ、今日は今までの話と違って、儂の思い出を少し語ろうではないか。どうじゃ」
姫御子:「はい、ありがとうございます。鞍馬天狗様の思い出話、面白そうで興味があります、どういった思い出話ですか?」
鞍馬天狗:「そうよのぉ。こういう話はどうじゃ。儂はかつて鞍馬山で、ある少年に剣術を教えたことがある。その少年の名は牛若丸といってな、後に源義経と名乗り、武勇と悲運で知られる英雄となった者だ。牛若丸との思い出話だ。聞いたことが少しはあろう」
姫御子:「はい、牛若丸こと源義経は有名ですから聞いたことがあります。鞍馬天狗様はどのようにして牛若丸に出会われたのですか?」
鞍馬天狗:「初めて牛若丸に会ったのは、それは春のことだった。私は山伏に変装して、鞍馬山近くに花見にやってきた者たちの間に紛れ込んで、花見を楽しんでおったのじゃ。
しかし、周りの者たちが私の不作法な振る舞いに気づき、怒って去ってしまった。だが、その中に一人だけ残った少年がいたのだが、それが牛若丸だったのだ。近くの寺に預けられておって、寺の僧侶と共に来ておったようだ」
姫御子:「なるほど、牛若丸は鞍馬天狗様に興味を持って残っておられたんですね」
鞍馬天狗:「そのようだ。牛若丸は私に親しく話しかけてきたのだ、牛若丸は自分の境遇を何故か初対面の儂に打ち明けてくれた。彼は平家に父を殺され、母と兄と別れて寺に預けられたという。
ただ、自分の身分は寺の一部の僧侶のみしか知らず隠して、僧侶のもとで暮らしているため、心から安らぐことができなかったという。
彼は自分の仇を討つことを夢見ていたが、力も知恵もなく、どうすればいいかわからない。だから、力を貸して欲しいとな。あとから知ったのだが、儂が花見に参加すると予測しておったのじゃ」
姫御子:「牛若丸は、どうやって鞍馬天狗様の事を知ったのでしょうか」
鞍馬天狗:「会う前年も同じような事を儂がしていて、その時に儂が鞍馬天狗ではないかと思うたようじゃ。そして、会った年に会ったら話をしようと狙っておったのじゃ。
儂に教えを請うたてまで成し遂げたいことがある事を聞いて、儂は牛若丸の悲しみや怒りや希望を感じ取った。儂はその素直で勇敢で清らかな心に触れ、教えてもよかろうと惹かれたのだ。
その日はもう寺の僧侶が帰ってしまっていて、これ以上残っていると怪しまれるから、牛若丸に翌日の夜に鞍馬山に来るように約束して、再会することにしたのだ」
姫御子:「そういうことで牛若丸に剣術を教え始めたのですね。牛若丸は、鍛錬を頑張ったのですか」
鞍馬天狗:「そうだ。私は毎日のように夜に牛若丸と会って、剣術や兵法や武士道などを教えたのだ。牛若丸は素直で賢くて勤勉であったので、すぐに私の教えを身につけた。まぁ、人の身としてではあるがな。儂も牛若丸の成長を喜んで、自分の弟子に相応しくなるようにしっかりと教えていったのだ。
しかし、牛若丸との日々は数年で終わり、長くは続かなかった。牛若丸は彼は兄である『源頼朝』の噂話に触れ、兄に合流するために鞍馬山を去りたいと言ってきてな。
寺預けられているから、勝手に出ていくことが出来ぬと言うので、牛若丸の意思を尊重し、儂が寺を襲いその隙に寺から逃げ出すように策を話したのだ。
牛若丸はその策を聞き、儂に感謝の言葉と別れの言葉を言ってきよったわ。弟子のために何かをするのが師匠の役割であるのにな。儂はさらに牛若丸が無事に兄の下に行けるよう、旅立ちの祝いに戦場での守護を得られるようにしてやったのだ」
姫御子:「そういう理由で鞍馬天狗様は牛若丸と別れたのですね」
鞍馬天狗:「そうだ。儂は牛若丸が去った後も、牛若丸のことを忘れなかった。牛若丸の活躍や苦難の噂話を聞きながら、鞍馬山で過ごしておった。何度もとなく助けの手を差し伸べようと思うたが、この鞍馬山を離れた以上、牛若丸の人生に携わってわならぬと思いとどまったのだ。代わりに鞍馬寺の寺領に住む領民のある一族を側仕えに送り出したのが、最後の手助けであった。
牛若丸はその後、平家との戦いに勝利したが、兄である頼朝と対立し、最後は敵に追われて命を落とした。こんなことになるのであれば、もっと手助けをしてやればよかったと後悔したものだ」
姫御子:「鞍馬天狗様は牛若丸に手助けしきれなかったことを悔やみ、その死を悼んだんですね」
鞍馬天狗:「そうだ。姫御子よ、これが私と牛若丸との思い出だ。君もこれを覚えておくことだ」