0195. モフシマ作戦十 下急 農機具改良で未来への第一歩
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みんなに説明するために、それぞれの道具の絵図を目の前に広げる。
「それじゃぁ、説明するね。今日、用意できた絵図は5個の道具分ね。他にも話を聞いてるとあるみたいだけど、今使えそうなのは用意した5個ぐらいかなと思う。
まぁ、みんなの意見や質問を聞いて、数を減らしたり、増やしたりするかもしれないけど。
それで、なんの道具なのかと言うと、この右端にあるのが、稲の穂先から籾を取り出す千歯扱きって道具ね。収獲したあとの作業を楽にするための道具よ。
その隣と真ん中のが、米を選り分ける唐箕と千石どおしね。この3つが、収獲後の作業で使うものね。
そして、左端とその隣のが、足で踏んで田畑に水を入れる龍骨車、と同じく足で踏んで水車を動かして水を入れる踏車というものよ。
これは、水田に水を入れたり、水撒きする時に桶に水を入れたりするのに使うものね。この5個が、今回描いてきた絵図よ。ここまでで何か気になることとかあるかしら」
「なんと、ここまでの絵図を準備していただきありがとうございまする。ただ、この絵図を拝見するかぎり、ほとんどのところを木材を用いて作るように見受けました。我らだけでは、作れぬので、京や奈良より来ました番匠や宮大工の見習いの方々にも手伝おうてもらわねばなりますまい。よろしいのでしょうか」
沙門と筑馬が絵図を見ながら、私に確認をしてくる。確かに今までは、沙門と筑馬の一族だけで、話を進めてきたけど、それは鋼やウーツ鋼のインゴットの事があったからで、木材でほとんど作れるこれらの農機具は、ぱぱっと早めに作っちゃってもいいと思うんだよね。
「沙門の懸念はわかりますが、鋼やウーツ鋼を使うものでもないので、そこまで気にしなくても良いでしょう。絵図がなくても、この現物を見られれば、他家の番匠達も作れてしまう程度のものだと思うし、それにこの大聖宮以外の里見の地でも、早く使ってもらいたい思ってるから」
「そうでございますか。そこまでお考えになられているのであれば、何も意見はございませぬ。こちらの五つについては、村におります番匠や宮大工の皆さんに手伝ってもらい、試作を致しまする」
「うん、そうね。それでお願い。ただし、千歯扱きの刃の部分は、番匠達に任せず、沙門と筑馬の一族で作るのと取り付けをお願いね。彼らも京や奈良から大聖宮に移り住んでるから、伝手も無く、裏切ることは無いとは思うけど、まだ念のためね」
「承知しました。鋼等の取り扱いに注意して、刃の部分の加工、取り付けは我らで行うことに致しまする。それと番匠達の行動には注意を払っておきまする。それと、唐箕と千石どおし、龍骨車と踏車の違いがようわかりませぬが、それぞれ必要のなのでしょうか」
「あぁ~、そうねぇ、私も最初に聞いたときは沙門と同じように思ったんだけど、詳しく説明を聞いて両方ともあっても良いかなと思ったんだ。一応、私の理解の違いは、
ともに籾や玄米の選別に使う農機具だけど、
唐箕は、風の力を使って籾や玄米を重さによって分けることが出来るようになっているんだよね。具体的には、ここの部分を手で回して、中の羽根車を回転させて風を送り、上の漏斗から落とされた混合物をこの3つに別れた選別口から吹き出させるんだよ。例えば、第一口には玄米や籾のような重い物、第二口には比較的軽い米など、そして第三口は藁くずや籾殻などの軽い物が出てくる感じだね。
千石どおしの方は、この傾斜したふるいの上端から搗き米を流して米とぬかにふるい分けたり、穀粒をふるい分けたりするものなんだよ。網目より小さいものは下に落ち、大きいものは下まで流れ落ちるから。使う作業や対象が違うから両方とも必要だと思うよ」
「なっ、なるほど。そのような違いがあるのでございますね。詳しい説明ありがとうございまする」
「それと龍骨車と踏車の方の違いだけど、こっちもともに人力で水を汲み上げる揚水機具で、使い道は一緒だよ。違いは、
龍骨車は、この長い樋の中に水かき板を取り付けたものを回転させて、水を川や堀、用水路から水を汲み上げるものだね。上下の端に2つの車輪があって、上の車輪を2人で踏んで回すことができるようになっているよ。ただ、見てわかると思うけど、大きくて破損しやすく移動も大変になるから、村の中に通した堀や大きめな用水路のところに固定して動かさないで使う感じかな。
最後に踏車だけど、これは羽根の付いた車を足で回して水を押し上げる仕組みだね。大きな違いは竜骨車よりも揚水量が多く出来ること、扱いやすく、1人で操作できること、破損しにくく、修理が容易なこと、。竜骨車は、大きさを小さくできるので、移動や設置楽なことかな。
これだけ聞くと龍骨車はいらないと懐うかもしれないけど、深いところや距離が長いところで使えるから、さっき言った堀とかは龍骨車で、それ以外は踏車で良いかなと考えたんだよね」
「承知しました。唐箕と千石どおし、龍骨車と踏車のそれぞれの違いがようわかりました。今お聞きした使い方ができるように番匠達に試作してもらいまする」
「うんうん、それじゃぁ、よろしくね」
ーー5週間後
うおぉ〜、やっと農機具の改良を完成したぞぉ〜。何度か鍛冶師、鋳物師、番匠のみんなと話をしながら、試作を繰り返して、やっと耐久性や強度がそれなりにあって、使い勝手のよいものが出来た。
鍬や鋤などは女性や子供でも、使える小さめのサイズも作ったので、村全体で使えるようになったと思う。数はまだまだ一家族にひとつとまでは用意出来てないので、当面は、沙門達が管理する村共有の財産として共同利用することにした。
それでも鍬、鋤、鎌だけじゃなく、スコップや千歯扱き、唐箕に千石どおし、龍骨車と踏車が一通り出来たのでだいぶいろいろな作業が楽になったんじゃないかな。
新しく作った農機具を村人達に見せて、使い方や効果などを何回かにわけて説明した。みんな、新しい農機具に驚きと喜んでいた。みんなの笑顔が見れて、ここまで頑張って良かったなと感慨深く感じていた。
後日、早速、新しい農機具を使って、畑や水田の準備や作業を始めたようだ。氏兼達に使い勝手を聞くと、新しい農機具は旧来のものよりも丈夫で、作業効率が高く、また作業に適した形や大きさでなので、重くはなったが、疲れはそこまででは無いらしい。
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さぁ、明日から新しい農機具を使ってみようかしら。どんな感じか楽しみね。私は幻獣達と一緒に田畑で遊ぶつもりよ。あなたも一緒に来る?
鍬と鋤で土をほぐし、踏車で水を引き、稲の苗を植える。これが私の日課だ。農業は大変な仕事だが、私は好きだ。自分の手で作った米を食べるときの喜びは格別だからだ。
こんなことを言える日が現実になれると思えるようになったなと………。