0017. 買い付け交渉は穏やかに
18-19話を見直したら、1話増えたので、明日日曜も更新します。次話は、22日7時です。
定期的に長く投稿しようと思いますので、ブックマークと☆、「いいね」で評価をしてくれたり、ゆるめの感想とご意見もらえると、嬉しいです!!
翌日の巳の正刻、刻限より少し前に連雀商人の光賀が来訪してきた。
「里見様、仰せの通り、光賀仁右衛門、罷り越しました。本日はお声がけいただきまして、ありがとうございまする。
早速ではありますが、本日は商いとの話を伺っておりますが、どのような商いをご依頼でしょうか。買い付けであれば、この安房一の手前にお任せください」
若いが安房一の連雀だと嘯く態度、流石に津島でも有数の出の人間じゃな。
「仁右衛門、よう来たな。今日、お主に頼みたい商いの話は、人買いよ。
今後、我が里見家が公方様を奉じ、この稲村の地を固め、上総と安房に残る上杉方と対峙するために北進することになるが、上杉方との戦は長くなろう。それに備え、我らの戦力を、人を増やして行かなと思うておる。
そのためにも、今から孤児の奴隷を大量に集め、将来の兵とする必要があると考えておるのじゃが、安房には人がまだまだ足らぬでな。
ついこの間、真里と話をしておったら、甲斐の国は人売りが当たり前のようでな。甲斐から人を買い付けてきてほしいのよ。
いくら甲斐とはいえ、大人を買い付けるのは難しろうて、それに直ぐに北進するわけでないから、人買いは安い子供で良い。そうだな。孤児の子供の奴隷などなら、より安かろう。それと幼子を抱える兄弟や姉妹を丸ごとで構わぬゆえ、いかがじゃ」
「承知しました。今川様や津島の実家の伝手もあるので、人買いは可能ですが、本当に幼子を抱える兄弟や姉妹でも構わぬですか。
それと、どのくらいの人数と一人あたりいかほどで、お考えになられておりますか」
「そのような兄弟、姉妹で構わぬ。儂は先を見据えておるのじゃ。そうよな、買い付けの代金は、香取海周辺よりは安く買い付けできるのであろうと考えておる。
なので、一人あたり、500文でいかがじゃ。先ほど言うた通り、どのような歳の子、幼子でも、この地に来れるなら、来たら500文を渡そう」
「里見様、それは安すぎます。甲斐からの距離は、香取海周辺からの距離とは違うので、いくら人売りが当たり前の甲斐でも、その値段では足が出ます。せめて、650文、いや、700文は貰わないと、無理です」
「良かろう、それでは、700文としよう。じゃが、お主ばかりに負担をかけても、人が集まらぬとこちらが困るゆえ、遠い甲斐まで苦労かけるのを労い、追加で一人あたり、100文出そう。あわせて、800文でいかがじゃ」
「承知しました。100文のお気遣い、ありがとうございます。800文であれば、それ相応の数を買って来れようかと思いまするが、して何人ほど買って参りましょうか」
「そうよな。将来的な北進を考えると、今回は最低でも、50、出来れば、100は欲しいの。上限は無いが、とはいえ、無理をすれば義父殿に目をつけれるゆえ、向こうで買えるだけで良いぞ。儂が文を書くゆえ、義父殿に見せ、話を通しておくのだぞ」
「承知しました。人売りが始まる秋の刈り入れ後に甲斐に行ってきます。年明けには戻りまするゆえ、よろしくお願い致します」
「仁右衛門、待て、まだ話は終わっておらぬぞ。そなた、50や、100の子供たちを如何にして安房のここまで連れてくるのじゃ。道中の安全のためにも、久遠寺や浅間大社に預かってもらうのではないのか」
「さすがは里見様、確かに今、道中の安全を考えるならば、久遠寺や浅間大社に助力を頼まねばならぬなと思っておりました」
「そうであろうな。仮に久遠寺や浅間大社に助力を頼むのであれば、幾許かの寄進が必要であろう。その寄進代の一部を里見家が負担しようぞ。
そうよな、一人あたり200文を出そう。寄進代を含め一人あたり、1貫文で頼むぞ。それといくつか我が里見水軍の船も出そうぞ。今川家の駿河の湊から乗せるが良かろう」
「あわせて1貫文と里見水軍の船までご用意いただけるとは、里見様、そこまでのお気づかい、ありがとうございまする。そのお気づかいに報いるよう、しっかりと甲斐に行き人買いをして参ります」
「そうか、それでは甲斐での人買いを頼むぞ。それとこれは着手金じゃ。大した金額ではないが、20貫あるゆえ、早目に買い取って、子どもたちをこの地に送って欲しい」
「さらに着手金までいただけるとは、ありがとうございまする。武田様への文が準備出来ましたら、早速、甲斐へ行ってまいります。ご期待に添えるよう頑張って参ります」