0016. 反省と(勝手に)ひきこもり人員計画始動
次話は、21日7時です
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二郎太郎、氏兼達を座敷牢に入れたその夜、義実と真里の二人は自室にて昼間の件について反省をしていた。
「真里よ。昼間は助かったわ。琴のことを言えぬゆえ、少し焦って話をしてしまっていたようじゃ。
たきを除いてあの二人を如何様にするかは悩ましいところよの。話をしてしまった以上、あの二人を付けざるおえぬが、鍛え直すにしても時間がかかりそうじゃな。
やはり、いっそ、昼に話した通りにするのも致し方なしか。それに明日の光賀もあの二人を考えると話し方を変えねばならぬが、いかがしたらよかろうな」
「お前様、まず光賀との話ですが、光賀には詳しく話さずともよいのではないですか。
この稲村の地を固め、将来の北進、上総の上杉方との長くなろう戦に備え、今から孤児の奴隷を大量に集める必要があると思うておると言うだけで十分だと思いまする。
下手に事情の一部でも知る者が増えると、話がどこから漏れたかが分からなくなりますゆえ。
今後、光賀と話をするであろう氏兼達三人には、あとで光賀に説明した内容のことを話して、三人と光賀に齟齬がないようにすればよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか」
「そうよな。我らの近くに居た氏兼達でさえ、今日の話を偽り、謀りの可能性があると、最初から信じて腹落ちさせようとはできなんだからな。
光賀に氏兼達以上の事は求められぬゆえ、同じ様に話さんでもよいか。確かに変に話をして勘繰られても面倒だな。もっと時が経ち、信が置けるようになってから、必要であらば、氏兼と同様の話をするとしよう。
そうすると、商いの理由は先の通りとして、あとは何を話すかの。甲斐で買い付ける人数と金子の話くらいかの」
「そうですね。金子の話をするにしても、孤児一人を何文で買い取るかを注意して、光賀が恩を感じるように話を持っていくだけでよろしいのではないですか。
それと二郎太郎と氏兼のことを気にされておりますが、今日のあの二人は今までの悪い面が出ただけですし、今回のことで良い薬になったのでないですか。
お前様があの二人のことで気に病む事はないと思いまする。あの二人は、言葉の表面しか聞かず、直ぐに自分の感情を出してしまいます。拙速に自分の言葉を出してしまい、それがどのようなことになるかわかっておりませぬ。
さらに二郎太郎は心の弱さもありますし、今後、姫御子である琴を守る為にも、しっかり反省し、心を入れ替えなければ、どこかで大事な事が起こったやもしれぬゆえ、今日のお前様は正しい事をしたのです。
話をしてしまった以上、今から別の者を選ぶのも難しいかと、それであれば、あの二人の性根を叩き直し、しっかりと仕えられる者にするのが肝要かと」
「そうか、そうよな。あの二人を鍛え直すべきだな。真里、そう言ってもらい、心が軽くなったようだ。ありがとうな。
あの二人のことはそれで良しとして、光賀に頼む孤児の買い付けの代金はいかがするかな。まだ小さい子供を集めるゆえ、1貫文か1貫500文ほどかの」
「いえ、それでは高いと思いまする。実家の甲斐の国は、人売りが当たり前の地。最初は500文で始め、700文までは譲っても良いかと。
700文で決めた後、最後に甲斐までの道の遠さを労い、100文追加してあげて、800文でまずは頼むのが肝要かと。
さらに言えば、甲斐から奴隷を買い付けには、道中の安全のために、身延の久遠寺や富士の浅間大社で預かってもらうと思いますので、久遠寺や浅間大社への寄進代として、追加で一人200文を出して、1貫文にしてあげれば、お前様に恩を感じると思いまする。
あとは父上に金の無心をされるはずなので、それをこちらで負担すればよいのではないかと」
「真里、結局、儂が言ってた1貫文になるではないか。最初から1貫文で頼めばよいのではないか、それに800文は、香取海周辺では、買えるかわからないぐらいだぞ」
「お前様、最初から1貫文では、そこからさらに値の話をしたら、高くなります。それにこちらの気遣いがあることを見せるのも大切なことですよ。
なので、ここは向こうが思ってもいない額から始めるのがよろしかと」
「そうなのか。まぁ、真里が言うならそうするか。それで買い付ける人数はどうするか。あまり大げさに買い付けをしても義父上に文句を言われかねるぞ。とはいえ、10人、20人では少なかろう」
「そうですね。その人数では、お前様の言う通り少ないと思いまする。門前町を造るとならば、100は居てもよろしかろうと、兄弟や姉妹を丸ごとでよいのではないですか。
幼子を抱える兄弟や姉妹を積極的に買い付ければよろしいかと、兄弟や姉妹を生き別れさせるのは不憫であります。いくら小さな赤子であろうと間引きするよりかは幾分まだ良いと家族も思いましょう。大きくなれば、甲斐に戻りふた親に会えるやもしれませんし」
「やはりのぉ。そなた、甲斐の子供たちが死なぬようにこちらに連れてくるために考えておったな。
琴のためにも、その考え、儂らは持ち続けねばならぬな。そのためにも、明日は光賀に利を示して甲斐で買付してもらわねばならぬゆえ、気を引き締めることにしよう」