0015. 焦りは禁物だが、キレる
15-16話部分を改稿したら、3話になったので今週土曜日も更新することにします。
次話は20日7時です。
定期的に長く投稿しようと思いますので、ブックマークと☆、「いいね」で評価をしてくれたり、ゆるめの感想とご意見もらえると、嬉しいです!!
三人の引き締めた表情を確認しつつ、儂は話を続ける。
「三人ともその言、嬉しく思うぞ。だが、御神託の詳しい内容については、これから指示することを完遂した後でないとその方らですら、伝えられぬ。
これは真里とも話をして決めた事じゃ、里見家当主としての決定である。この場で覆ることはないと思え。そのうえで三人に頼みたい。
まずは、この地の南側の山を超えた先にある平砂浦の南側に新たな社を建立する。また、平砂浦の全てを神領として新たな建立する社に寄進し、その上で社の門前町を建設する事にした。これは、御神託に対する御礼として、里見家が一丸となって行う奉納寄進とする。
さらに社ができたあとに氏兼は建立したその社の宮司として社の取りまとめを、二郎太郎は社の出仕として仕えてほしい。また、たきは、今後、決める社の姫御子様に仕える女官として行ってほしいのだ」
「とっ、殿、なっ、何故に我らが神職として、社に引き篭もらないといけないのですか。特に二郎太郎様は御家の御曹司として、まだ跡取りになっていないとはいえ、将来は殿の跡を継ぐ事になる重要な親族でありますぞ。
御家のために、親族衆をこれから引っ張っていく立場になられる方、この氏兼、今の話だけでは腹落ちが出来ませぬ。二郎太郎様はいかがですか」
氏兼は、急な話で憤っておるし、二郎太郎は、唖然としておるな。これで姫御子様になる琴のことを守ることができるのであろうか。
話の切り出しだけで判断し、全く話を理解できぬ二人に苛立つわ。意見を言うなら、全ての話が終わってからにせよ。
「父上、おれも氏兼と同じく納得が出来ない。おれは廃嫡されるのか。神の御使いの御神託と謀って、おれと氏兼を押し込めるつもりなのか」
氏兼に声をかけられて、ようやく我に返ったか、目に涙をためながら、必死に気持ちを抑えて、二郎太郎は儂と真里の顔を見据えているが、そのような気の弱さでいかがなると思うとるのだ。
さらに廃嫡、押し込めとは今の話で何故にそのような判断になるというのじゃ。拙速での判断で自己保身とは、小奴らを姫御子様に付けては危ういかも知れぬな。
姫御子様にお仕えする者は、この二人でなく別の者にする必要があるか、ここは後ほど真里と話さねばならぬな。
「馬鹿者が、二郎太郎も氏兼も、里見家当主の儂の話を最後まで聞かず、あまつさえ、御神託を謀りと考えるとは、お主等に失望したぞ、先ほどの言はいかがしたのだ。
舌の根も乾かぬうちに言葉を変えるとは、何事じゃ。それに表面だけの話で判断をするなぞ、これからのことがそなたらに出来るとは思えぬな。此度の話、先ほど誰にも話をしてはならぬと申し伝えておった通り、誰かに話をされても困るゆえ、そなたらはこの場で腹を切れ。
介錯は儂がしてやる。切れぬなら、儂が切り捨ててやろう。今日の話はここまでじゃ。たきは申し訳ないが、今日の話を外でされては困るゆえ、しばらく部屋に幽閉させてもらうぞ」
「殿、殿の言を疑っているわけではございませね。ただ、急な話ゆえ、腹落ちができぬので、もう少し詳しく話をしてほしいと思ってのことで、謀りとは思っておりませぬ。
若様もあまりの事で、混乱しているため、先ほどの言葉になったのであって、本心からではない思いまする」
「父上、おれも父上の話を信じてないわけでは無い。氏兼が言う通り、急な話で混乱していて、謀りと言ってしまったのだ。本心では無いゆえ、父上、母上、許してほしい」
今さら、言い訳など嘆かわしい。二人とも気概が足らぬな。こうなったしまったのも、儂がしっかりとしておらなんだせいか。
此度の二人の言動については、自省せねばならぬが、まずはたきを含めて三人をどうするかだな。まぁ、真里のことだ、しっかりと落としどころを見つけるであろう、儂の態度を変える必要もあるまい。
「お前様、御神託の事を謀りと言われて、憤慨しているのはわかりますが、細かい事を言えないわらわたちにも少なからず責はあるのではないですか。
いきなり、腹を切れではなく、少し落ち着いてくださいまし。ただ、二郎太郎、氏兼、里見家当主である殿の言葉を最後まで聞かずに批判する事は、どのような話であっても、許される行為ではありませぬ。
切腹とは言いませぬが、当面は座敷牢に幽閉します。たきも申し訳ないけど、この場にいた連座で幽閉させてもらうわ。処遇は二人より良くはするから」
二郎太郎と氏兼の二人は、ぐったりと顔を下に、青い顔をしている。きつく詰問されたぐらいで、このようになるとは、心が弱いの。姫御子様が移られる前までに、この二人をかなり鍛え直さねばならぬな。
「御方様、たきは構いませぬ。御言葉の通りに致します」
二人に比べ、たきは確と受け止めておる。この気概の差は如何ともし難いか。表向きは氏兼になるとしても、裏では当面はたきに頑張ってもらう必要が多そうであるな。
「それでは、今日はこれまでにしましょう。お前様、今日のところはこれでよいのではないでしょうか」
「そうよな。儂も少し大人げなかった。真里よ、すまぬ。ここは真里の裁決を是としよう。誰ぞ、誰ぞ、おるか。二郎太郎と氏兼を座敷牢に幽閉せぃ。また、たきも後室に幽閉せぃ」
声を聞き、駆けつけた小姓達は、言われた内容に驚きつつ、三人を脇に抱え、それぞれの幽閉場所まで連れて行ったのである。