0147. モフシマ作戦五 下破 式神活用はどうしよう
ーー10日後
いつも通り、天堂での作業を終わらせて、奥之院に戻ってきたので、みんなを集めた。
「みんな、お疲れ様。この間式神の話をしてから、十日ほど経ったけど、八咫も邪馬も召喚し続けられたし私の体調に悪い変化もなく、健康そのものだから、召喚後は自由に行動できるようね。なんか不思議ね、食事も水も取らないしさ。氏兼、これで私に負担無く出来ることがわかったよね。八咫も邪馬に何をさせようかね」
まぁ、式札から召喚しているから、八咫も邪馬も無生物なんだろうけど、見た目が変わらないから、不思議でしょうがないよね。
それと空中の魔素を消費しているのは魔眼で確認しているから、召喚し続けられるのだと思う。
「そうでございますな。召喚し続けられたのは予想以上でございましたし、琴音様の体調に影響がなく僥倖でした。
先日はお止めして失礼致しました。また、八咫も邪馬に対して、食事が不要であることは、手間が省けて楽でよろしいですな。
琴音様があとどれほどの式神を召喚できるのかはわかりませぬが、他に何体か召喚出来れば文のやり取りも楽になりそうでございますな」
「そうね。義実や真里との文のやり取りも楽になるわね。あと、船を何艘か出していたら、海の上でのやり取りができるようになるし。それだけでも、すごいことになりそうね」
「まことに素晴らしきことでございます。それで守護像でございますが、粗削りした程度ではございますが、白狐様をお造り致しました。この木彫りの白狐様で試しをお願い致しまする」
そう言って氏兼が持ってきたのは、よく稲荷神社で見かける座っている格好の木彫りの狐であった。
粗く削られているって言ったけど、ヤスリがかかっているのかと思うぐらい表面はなめらかになっている。これで完成していないなんて思えない。
「氏兼、この狐の像は、これで完成していないの。十分だと思うけど」
「木地師からは、まだ完成していないと聞いております。十分といえば十分かもしれませぬが、本人はそうは思うておらぬようでございまする」
「そうなの。まぁ、これで試しが上手くいったら、次からもこれぐらいで良いよって、伝えてもらえるかな。それじゃ、守護像を動かしてみようかね」
ゴーレムのコア用に作った式札を小袋から出して、像の胸辺りに貼る。八咫達のときと同じように、名前を付けてあるので、その名を呼び起動させてみる。
「宇迦之御魂神様の眷属たる白炎。今この地に降り立ち、我らに力を貸してたもれ」
ちょっと厨二病っぽい感じはするが、氏兼達の前で初めてだからね。ちょっと盛った感じで、ビシッと決めてみる。術法でもよかったけど、そっちそっちで恥ずかしさがあるから、まだこっちのほうがマシかな。
ゴーレムの起動の方は問題なく、光りながら生命を帯び始めているように見える。氏兼達は、初めて見る光景のため、声も出ず、呆然と白狐の木彫り像を眺めていた。
「氏兼、ぼ~っとしているけど、大丈夫?無事に白狐様の像を動かすことができたけど、どうかな」
「あっ、失礼致しました。あまりのことで体が動かず、言葉になりませんでした。いっ、いやぁ、まことに驚き申した。
誠に木彫りの白狐様がこのようないきいきと動かれるとは、目の前で見ておりましたが、信じられません。先日の八咫、邪馬達の事も殿に報告しましたが、なかなか信じてもらえませなんだのに、今回の件も信じてもらうのはなかなか時間がかかるでしょうな。はぁ~」
「まぁ、そうだよね。御神託を受けることだって、信じられないのに、式神も同じだよね。まぁ、今度、直接見せる機会を作ったほうが良いかもね。たまには、義実と真里を大聖宮に呼んでもいいんじゃないのかな。
それはそうとして、八咫、邪馬、白炎達の使いどころを考えようよ。他にも召喚できる数がどの程度できるかなども調べないといけないし」
父上達に会いたいけど、私から会いに行くのは今の立場上難しいから、来てもらうしかないと思うのよ。領地が増えたら、稲村から移動しちゃうかもしれないし、来れるチャンスがあれば、来てもらいたいな。
「そうでございますな。殿や御方様には、某から説明するよりは、直接見ていただいたほうが話は早いかと思いまする。殿にこちらに来られるか相談してみまする。
それでまずは、八咫達の使いどころより先に数の確認から致すことにしたほうがよろしいかと。数により配置する箇所や活用するところも変わると思いまする」
「じゃぁ、そうしましょうか。でも、八咫達以外に名前を考えてないから、まずは名前を考えないと。それに式札ももう少し用意したほうがいいと思うし、少し準備期間を取ってから、検証しましょうかね」
「はい、承知しました。やっと我らが琴音様の鍛錬のお手伝いができるようになるとは、嬉しゅうございますな」
「何言ってるのよ、氏兼。いつも天堂での鍛錬に付き合ってくれたり、素材の準備など色々と動いてくれて助けてくれてるじゃない。今回の件が初めてじゃないでしょうに」
「確かにそうではありますが、今まではあれこれと指示されて動いていたのであり、今回は相談からでございますので、一緒に考えられることが嬉しかったのです」
「あぁ~そうなのね。確かにそうかもね。私も自分で考えてから、出来ない作業のところなどを氏兼達にお願いしてただけかもね。今度から少しづつ相談するようにしていくよ。そんなに喜んでくれるなら。
それじゃ、早速、まずは準備期間で色々としないといけないから、氏兼達にも頑張ってもらいましょうかね。検証するのは6日後でお願いね」
「承知しました。それでは6日後に改めて、検証のお手伝いをさせていただきまする」