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0128. 仕事始め!年明けは厳かに

ーー四半刻後

 皆が予想通り集まったので、仕事始めの集まりを始めることにする。私は高舞台の上に床几を置いてもらい、その上に座っている。


「みんな、集まってくれて、ありがとう。早速ではあるけど、年始の仕事始めの儀を始めることにする。最初は、私から神々への奉納の曲の演奏よ。この曲は皆への贈りものでもあるから聴いてね。その後に今年の大聖宮の目標を話をして終わりよ。短いけど、よろしくね」

 しゃべり終わると、一斉にみんなが頭を下げた。ちょっと驚いたが、この程度でビックリしていたら持たないので、スルーする。


 先ほど思い出した和風BGMの曲をいくつかメドレーっぽくまとめることにして、みんなに勝手に付けた曲名を伝える。

「曲は、『天に捧ぐ想いと未来への道程』よ。私が天堂の中で鍛錬しているのは知っていると思うけど、その天堂で御使い様に教わった曲になるので、しっかりと聴いて欲しい。それじゃぁ、始めるわね」

 言い終わると、篠笛を懐から出し、目を閉じて吹き始める。

 およそ7-8分ほど笛を吹き、止めて目を開ける。吹き始めてから声がしていないので、皆、しっかりと聴いてくれているのだろうと思っていたが、目の前にはその予想を斜め上に越える事態になっていた。どうして、こうなった。


 もう泣き上戸、感動屋だと思っている沙門や筑馬は、泣いていると思っていたが、ここに参加している人、子供も含めて、ほとんどが涙を流し、私のことを拝んでいる。中には何度も頭を下げて礼拝をしている人までいるし、なにか変なことでも起こったのか?

「みんな、どうしたの。なにか変なことでも起こったのかな」

 

「琴音様、変なことは起こっておりませぬ。ただ、曲が素晴らしく、皆、心に沁み入ったのでございます。また、曲の最後の方では、琴音様に後光が差したように薄っすらと光り輝いて見えました。我らは本当に姫御子様にお仕えしていることを実感でき申しました。ありがとうございまする」

 いや、ちょっと待て。曲に感動して泣くのはいいが、後光が差したとはどういうことだ。大抵の場合、差したように見えるという錯視か錯覚だが、この場合、実際に卑弥呼様が手を出して、後光を差した可能性が否定できないな。

 ちょっと勘弁してくださいよ〜。『卑弥呼さまー』


「あっ、そうなの。それだったらいいけどね。でも、この状態だと、話をする雰囲気にはならないわね。少し落ち着くまで待ちましょう」

 5分くらい経つとやっと落ち着いてきた。とはいえ、視線の熱さは、今まで以上になっている気がする。

 今までも十分なヤバさはあったが、これはもう推しメンを見る目で無く、熱狂的なサポーターだね。何あれば暴動を起こしそうな人たちになってしまったかもしれない。

 やっ、やばい、言動には気をつけなければ、こっちの中身は令和のモブキャ、どこにでもいる小市民、上級国民ではないのだから。



ーーさらに5分後

「みんな、やっと落ち着いたね。私の演奏を聴いて、泣いてくれて、ありがとう。みんなの心にそこまで届いたのであれば、私の想いはきっと神々にも伝わったことでしょう。

 今後もおりを見て、このような音楽や舞を奉納していきたいと思っているよ。それじゃぁ、みんな、姿勢を正して今年の大聖宮の方針を伝えるので、それに則って動いてほしい」

 みんなの姿勢と気持ちが整うの少しだけ待ってから、話し始める。


「今年の目標は大きく二つだよ。


 一つは『生活を豊かにする』こと。


 この間からみんなに手伝ってもらい、オガ炭や竹炭の炭をたくさん作ってきたけど、それを継続して、来年も再来年もこの先ずっと寒さに負けない暖かさを勝ち取ることを目指します。

 それと、食事に困らないように農作業をする農機具の改良とか、病気にならないようにするために衛生環境の改善、今後も豊作になるように土を豊かにする肥料作りとか、寒さ多い雨などの天候に負けない作物にするための品種改良なども今年から本格的に始めるよ。

 でも、ただ頑張るだけじゃ、辛いので、甘味の食べ物などを考えているよ。ご褒美甘味ね。

 そのために連雀の光賀が琉球より買付をしてきてくれた牛や豚、それに各種の作物をもっと効率よく増やせるようにするわよ。

 これが生活を豊かにするための方針と方策ね。


 もう一つは、『町の防衛体制強化と私の修行』ね。


 今はまだまだ私の体も小さく、出来ることが限られているから、御使い様も十全に力を発揮できていないと思うわ。

 だから、修行して御使い様と御一緒にできる技能を増やしていく予定よ。

 今年の私は天堂でしっかりと鍛錬を積み、技能を向上させていくので、当然、天堂の中で過ごす時間が増えると思うの。

 みんなには迷惑心配をかけると思うけど、私が姫御子のご加護の力を十分に発揮できるようになれば、生活を豊かにすることや御神託を授かる機会も増えると思うわ。だから、なかなかみんなと会って話す時間が取れないかもしれないけど、できる限りみんなと話す機会は作ろうと思ってるから、許してね。

 それで天堂の中に行っても私が安心して鍛錬できるようにするためにも、町の安全を第一にしたいと思う。私が鍛錬している間に門前町が攻め込まれたら大変なので、門前町の防御をもっとしっかりとしたモノに強化していくよ。

 防衛力強化は、氏兼を筆頭にみんなの力を合わせて、新しい武器と防具、道具を準備していこうと思っているわ。

 

 今年は、『生活を豊かにする』と『町の防衛体制強化と私の修行』、この二つの実現に向けて、頑張るわよ。氏兼達には伝えてあるけど、これは自然を相手にした戦と思いなさい」

 ここで一呼吸おいて、みんなの顔を見回して、

「作戦名は『モフシマ作戦』。さぁ〜、行くわよ〜、えいっえいっ、おぉ~」


「「「「えいっえいっ、おぉ~」」」」


 こうして、仕事始めの集まりは終わったのだが、こんな感じでよかったか、分からないが、みんなの気持ちは一つにできたのではなかろうかと感じている。

 はぁ~、でも、疲れたぁ。

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