93.特訓
だいぶ間空いてしまいました。。。年末は体調崩したり救急車に乗ったりうなってたりと割と散々でした。。。
個人練習を始めた4人はそれぞれの課題に挑戦していた。
魔法の練習ようにとフラムとフルームには竜玉が貸し出されている。
フラムは前回に引き続き炎の剣を作ろうとしている。フルームの水の剣が羨ましく、自分で作れるようになりたいと思っているのだ。
しかし、未だ結果は芳しくなかった。自分の魔力を使ってファイアボールを使えるほどには上達していたが、イメージが足りていないのか目的の炎の剣が全く作れずにいる。
一方でフルームはフラムとは対照的に魔法の練習をしていた。
先程の勝負でフラムが魔法を使ったのを見て少しでも攻撃の手法を増やそうと考えたからだ。
剣を使うとなるとどうしても接近戦しか出来なくなる。
ワイバーンと戦った時のように中長距離から攻撃されたら手も足もだせない。
もちろんフルームとしてもこの前の特訓で魔法を使うことを考えなかったわけではない。
ただ、思い通りに使える魔法が水属性の魔法くらいだったのだ。
水で攻撃するなんてイメージが出来なかったのと、そもそも水の剣を生み出せるようになっていた為、中距離攻撃の手段として魔法は候補から外してしまっていた。
しかし、今まで何回練習しても魔法を攻撃に使えなかったフラムが魔法で的を燃やし尽くしたのを見て考えを改めたのだ。
フルームは何か攻撃に使える方法はないかと試行錯誤している。
……ちなみにフラムのことがちょっとカッコいいと思ったのは内緒である。
エイシェルはというとアリスが生み出す的を弓矢で射抜いていた。
ただ的を射抜くだけでは芸がないため、やが的に当たるたびに的をどんどん細くしてみたのだ。
「…………ねぇ、エイシェル?すごいのはわかったから、もういいんじゃないかしら……?」
「そ、そうだな、付き合ってくれてありがとう。おれもびっくりしてるよ……」
最終的に針のように細くなり、もはや的として認識出来ないレベルになったにも関わらず一向に的を外さないエイシェル。
最初こそすごいとアリスが興奮気味に褒めていたが、あまりにも外さない為、「あれ?これっていつまで続くんだろう?」とだんだん不安の方が強くなってきた。
ついには細くする限界まできてしまった為、今度は針のような的を連続で何個当てられるかもやってみたのだが20回連続で外さないところを見るともう外すことはないのだろう。
そんなところでアリスが痺れを切らして打ち止めを提案したのだ。
エイシェルとしてもこれ以上やっても誰も破ることのできない記録を樹立するだけと感じた為止めることにする。
やることがなくなったエイシェルだったが、アリスの勧めで氷の矢を作る魔法の練習をする事にした。
いつも木を削り、石を割ったりして矢を作っていたが魔法で作ればそんな労力は要らない。
猿の魔物と遭遇した時のような強度は要らない為、そこそこの強度に仕上げるように魔力を調整するコツを教えてもらい練習する事にした。
ちなみに今までエイシェルが魔法を使わなかったのはアリスと話して決めていたからである。
生命力を共有している為、エイシェルが魔法を使うと魔力変換時にロスが生じてしまう。
その為、エイシェルが何かしらの理由で魔法を使いたいと希望する時か、やむを得ない事情がある時以外はアリスが魔法を使う事に決めていた。
しかし、それもついこの間までの話である。
もうアリスは魔法名を口に出さずともルミナドレインが使える。
エイシェルがどんなに魔法を使っても無言で生命力を回復できるのだ。
前までは生命力の回復は魔法名を連呼するものと考えていた為、非効率であり、なによりとてつもなく恥ずかしい。
そんな理由がありアリスが魔法全般を請け負っていた。
最後にアリスだが、エイシェルに付き合った後はこの前の続きとばかりに水の剣と炎の剣の作製に挑戦していた。
相変わらずただ剣の形をした水と炎しか出来ずにいる。
繰り返し挑戦するものの時間だけが過ぎていった…………。
「「できなーーーい!」」
小1時間練習したところでアリスとフラムの声が響き渡る。
アリスとフラムは途中から一緒に練習していた。
一緒に練習すれば何か得るものがあるだろうと思い2人で話しながら炎の剣を生み出そうとしたのだ。
結局のところフラムは剣の形をした炎を生み出す程度にとどまり、アリスに至っては最初と変わっていなかった。
「だいたい固形じゃない物を使って剣にするなんて無理じゃないの!?フルームはなんで液体からあんなしっかりした剣を作れるのよ!!?」
「イメージって言ってたわよね……流石にわたしもわけわかんなさ過ぎて手詰まりよ……それに比べて……」
アリスはそう言うとフルームとエイシェルの方を見る。
そこには楽しそうに話すエイシェルとフルームの姿が映った。
「……できた!ストローの中の水をイメージすると確かにやりやすいな!」
「でしょ!実際にそこまで細くなくて良いんだけど、大事なのはイメージだから!細長くする、みたいな簡単なものなら少し大袈裟に、うんと細長いものをイメージするとやりやすかったよ!」
アリスがフラムと一緒に練習している間にエイシェルとフルームも一緒に練習をしていた。
最初はアリスに教えてもらった通りにコツコツと氷の矢を作ろうとしていたエイシェルだったが、なかなか思い通りの形にならない。
どうしても歪んだり、太くなってしまうのだ。
そんな中フルームが水を宙に浮かせ様々な形に変化させているのを見たエイシェルはコツを教えてもらおうとフルームに声をかけたのだった。
それから何回も試すうちに満足のいくものが出来そうになっている。
「あとはこれを冷やして…………できた!」
「やったね!エイシェル!さっきのより断然矢っぽいよ!」
「フルームのおかげだ。ありがとう!」
「お礼はいいから!ほら!打ってみてよ!」
フルームに促され作ったばかりの氷の矢を弓にかけるエイシェル。
力強く弓をしならせ海へ解き放った。
すると先程までがウソのようにきれいに直線を描きながら遠くへと飛んでいった。
「すごい!すごい!あんなに遠くまでとんでった!やっぱり細くしたからかな?」
フルームが興奮気味にエイシェルの肩を揺らす。
上手く行ったことが自分のことのように嬉しいようだ。
エイシェルは遠くまで飛んで行ったことが嬉しく、また、ここまで一緒にフルームが喜んでくれたことで楽しくなっていた。
「多分軽くなったのもあるけど、軽く回転する様にしたのも関係してるかな?」
「なにそれ?ぐるぐる回転すると遠くまで飛ぶの?」
「ああ。その方がブレないで真っ直ぐ飛ぶから精度が上がるんだ。ただし、あまり回転させすぎると今度は逆に遠くに飛びにくくなるから加減が難しい部分ではあるな」
「ほぇー」
エイシェルの説明に感心するフルーム。
ただ細くし矢を作るだけと思いきやキチンと機能面も考慮して理想の矢を作り上げていたのだ。
矢を放った際に回転して飛んでいくように尾羽のような突起をうっすらと斜めに付けることで回転させる。
エイシェルがかつてオージンから教わったものであった。
そこでフルームがピンときた。
「……ん?回転させる?」
「どうしたんだ?」
「ちょっと思いついたことがあって……ウォーターボール!」
フルームは水の球を人差し指に乗せるように出すと平たく伸ばし円盤状に形を変化させた。
「昔こういうおもちゃがあってね、投げて飛ばす時に回転してたなと思って。うーーーん……回るかな?」
フルームが魔力を込めると水の円盤が回転し始める。
桶の水がグルグル回るイメージを薄い円盤で再現し、どんどん円盤の回転速度を上げていった。
「よしよし……いい感じ。これでもっと薄く……もっと早く…………いいねぇ……そんでー投げる!」
フルームは指の上で高速で回る水の円盤をより薄くより早く回すようにし、海に向かって思いっきり投げた。
すると、指から離れた水の円盤が空気を切り、凄い勢いで飛んで行った。
「おぉーー!なんかいい感じ!…………そうだ!回転してる外側だけ水の剣みたいにすれば攻撃に使えるかも!?エイシェル!ありがとう!」
「おれは何もしてないよ。おれの方こそ教えてもらったし、ありがとうな。」
「……あの2人は上手く行ってそうね……」
「……フルームってあんなに魔法のセンスあったのね…………というかなんか……いや、なんでもない」
「大丈夫よ、フルームはエイシェルを取ったりしないから。たぶん」
「たぶんってなに!?あ、別にそういうわけじゃ……」
フルームとエイシェルの距離が近く感じたアリスはちょっとだけフルームに嫉妬していた。
しかし、その嫉妬の理由はエイシェルとの距離だけではない。
魔法を使うセンスもアリスが見た限りでも抜群に良かったのだ。
フルームは今まで魔法を滅多な事では使わなかった為、魔法とはこう使うものだ。などという固定観念がほとんど無い。
その為、他の人に比べて自由な発想が出来た。
その結果、水から剣を作るなんて摩訶不思議な事を成し遂げることができ、今さっき見たような魔法の使い方が出来るのだ。
アリスは初めて感じる自分の中に芽生える小さな棘のような感情に人知れず不安を感じていた。
不安を感じてはいたが、誰かに話すような内容でもないため抱え込むしかなかった。
……その誰にでもあるようなこんな些細なことが後にアリスの身に大きな影響を与える事をまだ誰も知らない。
駆け込み投稿です。今年もありがとうございました。思えば操作ミスから投稿が始まり93話まで書くことができました。投稿ペースが急激に遅くなってますがちまちま書いているのでエイシェルたちの冒険を来年もよろしくお願いします。




