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ジェミニ 〜魂の契約者達〜  作者: えいりす
第三章 王都への旅
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92.勝負

エイシェルがみた夢の話が終わったところで突然フルームが叫びだした。



「そうだ!寝っ転がってるのも勿体無いし、あれやろうよ!」


「なによ突然?あれって?」


「特訓!魔法と剣の練習!」


「あぁ、たしかにいいわね……でもアリス?船の上で土の壁なんて出せるの?」



フルームの提案に肯定的なフラム。

しかし、周りに海しかない船の上で土の魔法など使えるのだろうか?

そう思いアリスに質問をしたのだ。



「んー……多分無理。あれって地面の土を使ってるから、ここだと船の上だし、下は海だからダメだと思う。そのかわり、氷の柱ならすぐできるわよ?」


「それなら氷の柱を作ってもらって試し切りすればいいわね。早速やりましょう」


「よーし、やるぞー!」



やる気になった3人だったが、エイシェルが取り残されていた。

前回の特訓の時はエイシェルだけ仲間外れだったことからどんなことをしたのかを掻い摘んでしか聞いていない。

ただ、今の説明を聞いた限りではアリスが的を作って、それを剣で切るようなことをするようだった。


そこでエイシェルはひらめく。

いっそ勝負のようにしてしまえばいいのではないかと。

その発想は騎士団の班長達の姿を見たからこそ浮かんだものだった。



「なぁアリス、その氷の柱ってすぐに作れるもんなのか?」


「ん?えぇ、今なら秒で作れるわよ?コツを掴んだら時間がかからなくなったわ!」



えっへんとばかりに胸を張るアリス。

その姿はとても自慢げであった。


最初に氷を作った時は、氷のイメージが強すぎて時間をかけ、とても純度の高い氷が出来上がった。そのため不純物を含まずとても透明で透き通った氷となったのだ。


しかし、前回の特訓の際にそこまでしなければ時間をかけずに氷を作れることを発見していたのだ。水の剣を作ろうとして試行錯誤しているうちに、試しに急冷してみたところ簡単に氷ができたのだ。



「なるほど……。なら競争してみたら面白いんじゃないか?アリスが氷の柱をたくさん出して、その柱をどれだけ早く全部壊せるかを競う。なんてどうだろう?」


「なにそれ!面白そう!」


「へぇ……そういうことなら負けられないわね!」


「そういうことなら……えい!」



エイシェルの提案に3人ともやる気になる。

アリスが魔力を込めるとあたり一面に氷の柱が生えた。

尚、アリスはエイシェルが寝込んだタイミングで竜玉を拝借しており2つとも持っている。



「とりあえず30本出したからやってみて」


「はいはーい。私からやるー!」


「いいわよ、お手並み拝見といきましょうか」



アリスが準備を整えるとフルームが先攻を志願する。

フラムも特に反対はしなかった為そのまま始める事にする。



「よーし……ウォーターボール!」



フルームが魔法を唱えると目の前に水の球が浮かび出て、その水がみるみるうちに剣へと姿を変えた。



「おぉ!それが話してた魔法で作った剣か!かっこいいな!ワイバーンの時に使っていたのと同じ見た目なんだな。」


「へへん!いっぱい練習したからね!それよりエイシェル、始めの合図お願い」



フルームはエイシェルに褒められて嬉しく思いアリス同様に自慢げな反応をする。

ただ、すぐにでも始めたかったためエイシェルを急かした。


エイシェルは手元の時計を確認し、秒針が一番上に来たタイミングで合図をした。



「それじゃ…………始め!」



エイシェルの合図を皮きりにフルームが飛び出す。

目の前の柱をまるでバターナイフでバターを切るようにサッと切り落とし2、3、4とテンポ良く切り落としていく。


以前にウルフの討伐でその実力は見ていたが、改めて見てもその迷いのない剣筋はとても美しいものだった。



「……10、11、……12!あぁー!あそこがちょっと遠い!!」



エイシェルとアリスには順調に氷の柱を切り倒しているように見えたが、フルームから見ると順序を間違えたと感じていた。


討伐依頼の時はいつも的から自分に向かって迫ってくるのだが、今回は固定された的を切りに行かねばならない。

そうなると的の位置を計算して最短ルートで進む必要が出てくる。


もちろんそんなことはわかっており最初に飛び出した時に計算していたわけだが、的が30本ともなると的の裏に隠れているなど全量を把握するには時間が足りなかったのだ。


12本目を切ったところで何本か的が嫌な場所に残ることに気づく。

最後に残してもいいが、このまま近い的を狙いに行くと、最後に向かう際に今よりもその残った数本の的への距離が出てしまいそうだった。

それであれば今からルートを計算し直し、先に離れた場所に向かった方が後々の事を考えた時に時間が節約できると考えたのだ。



「急げー!!13、14、15ッ!!次!」



少し想定外はあったものの軌道を修正しスムーズに進むことができた。

あとは予定されたとおりに進んでいき、全ての的を切り倒す。



「……29!30!!!」


「そこまで!記録は……58.7秒!!」



この記録がどれくらいのものなのかは分からないが、フルームとしては全力を尽くした結果だった。

全ての柱の位置が最初から分かっていればもっとやりようはあっただろうが、瞬時に判断した結果としては上出来である。



「はぁ……はぁ……ざっと、こんなもんでしょ!」


「フルームすごい!結構離して作ったつもりだったけど1本あたり2秒以内じゃないの!」


「……さすがフルーム、やるわね」



フラムが感心しているとアリスが氷の柱を再生させていた。

次はフラムの番なので、すぐにでも始められるようにアリスが気を利かせたのだ。

そこでアリスから提案が入る。



「フラムは持ってる剣を使うから氷を切り続けると刃こぼれするよね?また魔法で炎を纏わせること出来るけど……どうする?」


「お願いするわ。フルームみたいに剣を作り出すなんてことできないもの」



フラムがそう言うとアリスはフラムの剣に魔力を込めた。

するとワイバーンを討伐した時と同じ赤い炎を纏った剣がそこにはあった。



「準備はいいか?」


「えぇ、大丈夫よ。お願いするわ」



エイシェルが確認するとフラムはいつでも良いとばかりに返事をした。

その返事を受けエイシェルは手元の時計に目をやる。



「それじゃあ始めるぞ…………始め!」


「今度は勝つわよ!」



エイシェルの合図と同時にフラムが駆け出す。

ウルフ討伐の時はフルームに負けた為、フラムは密かにリベンジに燃えていた。





フラムはフルームと同じように1、2、3とテンポ良く的を切り倒していく。

さすが姉妹だけあって動きや的の切り倒していくコースどりも同じであった。


「7、8!」


「お姉ちゃんやるねぇ。でもそのままだと私と同じコースになるよ?」


フルームの言う通り、同じ順路で切り落とししているため、このままいくと12本目の後に少しロスが生まれてしまう。


柱の位置がわかる分、後攻の方が有利でありコースどりを変えることもできたはずだがフラムはここまであえて同じ道を進んでいた。




……だってフルームが最初から言っていたではないか。


これは勝負であり特訓なのだ。






「……10、11、12!!……ファイアボール!!」


「んなっ!?」



フラムが放ったファイアボールが少し離れた的に命中する。

すると命中した炎が的に纏わり付き氷の柱を溶かしていく。



「ファイアボール!ファイアボール!!」



その様子を見たフラムはそのままその近くにあった残りの的も続けて魔法で処理する。


その間フラムは別の的へ向かって走っておりロスなく最初にフルームが目指していたルートを進むことができた。


そして、そのまま何事もなく最後の的を切り倒す。



「……30!!」


「そこまで!」


「どうよ!!」


「57秒ちょうど!この勝負、フラムの勝ち!」


「よしっ!今回は私の勝ちね!」



フラムは最後の的を切り落とした瞬間、自信満々にエイシェルに向き合う。

その自信に応えるようにフラムの勝利が決まった。

そんな中フルームが異を唱える。



「まってまって!魔法ズルくない!?」


「あら?そんなことないわよ?フルーム、あなた言ったじゃないの。特訓したいって。"魔法と剣の練習"だって」



そう、最初からこの勝負の目的は魔法と剣の練習なのだ。それであれば魔法を使うのは至極当然と言える。

ただ、それでもフルームはまだ納得が出来なかった。



「うっ、言ったけどぉ……的は切るものじゃ」


「エイシェルが言ってたじゃない。どれだけ早く全部の的を"壊せるか"ってね。誰も剣で切らなきゃダメなんて言ってないわ」


「そ、そんなぁー」


「凝り固まった考えはダメよ?もっと柔軟に考えなきゃ」


「……それ、お姉ちゃんに言われたくなかった」


「なにか言ったかしら?」


「なんでもないです!……はぁ、負けちゃったかぁ……よぅし!魔法の練習する!私も遠くの的くらい壊せるようにはなりたいもん!」


「私もフルームみたいに剣を作れるように練習しなくちゃ」


「おれは……的を射抜く練習しようなかな。アリス手伝ってくれる?」


「いいわよ?的を作ればいいかしら?」



そこから4人はそれぞれの目標を決めて練習を始めるのだった。

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