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ジェミニ 〜魂の契約者達〜  作者: えいりす
第三章 王都への旅
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91.エイシェルの苦悩

集合時間になるため、エイシェルは3人の部屋をノックして回るが返事は全て先に行っててとのことだった。

仕方がないのでエイシェルは先に食堂へ向かうのだった。





エイシェルがひとり食堂に到着すると見知った顔と出会った。



「やぁ、君か。今朝はうちの団員達がすまなかった」



騎士団長でありフラムとフルームの父であるフェルスが朝食を済ませて出てきたところだった。



「団員達の勝負に一般人を巻き込むなんて言語道断。それに勝負の内容も危険なものだった。あの2人には今後、勝負の時と場所をわきまえることと危険な勝負は行わないように強く言っておいた。この度は本当にすまなかった」



開口一番に謝られたにも関わらず改めて謝罪の言葉を述べるフェルス。

娘の恩人を危険な目に遭わせたのだ。繰り返し言わずにはいられなかった。



「いえ、おれはサウナに入ってのぼせただけなので……」


「団員達が出口を塞いで出れない状況であっても?」


「……出たければ道を開けてと言えばいい話ですから。むしろ介抱して貰えたので助かりました」


「……そうか。そう言ってもらえるとこちらとしても助かる」



エイシェルの気遣いにフェルスは感心していた。

人は誰しも自分が大事である。今回のようなケースであれば騎士団を非難してもおかしくはない。

非難しなくとも団長であるフェルスが謝っているのである。普通ならそこで詫びを受け入れるだろう。

しかし、エイシェルは自分の行動の結果だと、自業自得であると言い張るのだ。

むしろ介抱してくれたと感謝する始末。

こんなにも懐が深い人がいるのかと感心していたのだ。

そんなことを思っていると思わずフェルスが言葉をこぼす。



「……君のような出来た息子がいればな……どうだ?うちの娘は2人とも良い娘だと思うのだが?」



フェルスの提案にキョトンとするエイシェル。

言葉の意味を理解した途端慌てて答える



「いやいやいやいや!たしかに2人ともしっかりしてるし美人だし……ってそうじゃなくて!2人にはもっと良い人がいると思うんです」


「君以上に見込みのありそうな人はなかなかいないと思うんだがな……?あぁ!すまない。そういうことか。君にはもうフィアンセがいたか。あのブロンドヘアーの娘だろ?」


「ぶっ!?なななななにを言ってるんですか!?アリスとはまだそういう関係じゃ……」


「ほぅ……"まだ"、ね。なるほどなるほど、そういう事なら忘れてくれ」


「ち、ちがう!これは言葉のあやというか……」


「はっはっはっ!大いに結構!応援してるぞ少年!」



そういうとフェルスは笑いながら手を振り去っていった。


エイシェルはその背中が見えなくなるまでその場で立ち尽くし、見えなくなったところでどっと疲れが襲う。



「どうかしたの?そんなところに立って?」


「え?あ、アリス!?いつからそこに!?」



突然声をかけられ振り返るとそこにアリスがいた。

エイシェルはさっきまでのフェルスとの会話を聞かれたのではないかと思い咄嗟に確認した。



「いつって……たった今来たばかりだけど……?」


「なになにー?なにかあったの?」


「エイシェルにしては珍しくぼーっとしてたわね」



あまりに驚いたので気づかなかったがフルームとフラムもいたようだ。

どうやら3人揃って来たらしい。



「いや、後ろにいたからちょっとびっくりしただけだ。みんな揃ったし朝ごはんを食べよう」



アリス達が今きたばかりだと分かり安心したエイシェルは動揺を悟られまいと話をずらしてみんなで朝食をとるとこにした。


ただ、フェルスと話したばかりの為アリスだけでなくフラムやフルームにも少し意識してしまいちょっとぎこちなくなる。

そんなちょっとした変化を見逃す姉妹ではなかった。





(ねぇフルーム?なんかちょっとエイシェルの様子おかしくない?……エイシェルが見てた方って確かパパとか騎士団が泊まってる部屋の方よね?)


(もしかして、パパとなにかあった……?後でこっそり聞いてみようかな?)



この姉妹の気になる事に対するアンテナはとても高精度らしい。







朝食もバイキング方式だったが昼や夜に比べると種類は少なかった。

それでも十分なくらいどれも美味しそうですぐに持っている皿が食べ物で埋まる。


エイシェルは昨日の反省を生かし、ただ焼いているだけのものや切ったくだものなどはほんの少しだけにし、手の込んだ料理をメインに選んで食べる事にした。

そうする事で自分のレパートリーを増やそうと考えていたのだ。


アリスとフルームも夕飯にエイシェルを参加させるべく朝と昼は無理はさせないように話して決めていた為、昨日のように無理にお願いするようなことはしなかった。


そんなこんな考えて一緒に朝食を取っていると、エイシェルのぎこちなさは少しずつ無くなっていくのだった。







朝食を終えた4人は特にする事もないため、風に当たりに甲板へと向かった。



「やっぱり外の空気は気持ちいいわね。……辺り一面海しかないけど迷わないのかしら?」


「たしかに……夜になれば星が見えるからある程度方角は分かるけど、昼間は太陽の位置でもみて判断してるのかな?」


「……そんなことできるの?」


「星だとひとつだけほとんど動かない星があるんだ。そこが北を向いてるから基準になる。夜に山で迷った時に役に立つって村のおっちゃんに教わったんだ」


「それ、曇りとか雨降ってたらどうするの……?」


「……その時は勘で歩けって言われた」


「ふふ、なによそれ」



エイシェルとアリスが楽しそうに話す中、フラムとフルームがコソコソ話していた。



(ねぇ、お姉ちゃん)


(なによ)


(私達邪魔なんでは?)


(うん、それ私も感じてた。でも、このまま見てるのも面白いじゃない?)


(そうだけど……いつも2人の世界に入りすぎてる気がする……)


(たしかに……まぁ、あとでいじり甲斐があるじゃない?)



ちょくちょく2人の世界に入るエイシェルとアリスを見てフルームは少し居心地が悪そうに、フラムは楽しそうにしていた。

少し前まではフルームもこの状況を楽しむ側であったが、アリスがエイシェルと2人きりの時は積極的である事が判明し、邪魔をしてしまい申し訳なく思うようになったようだ。


そんなフルームの気持ちなんて関係ないとばかりに突然だけど声がかかる。



「そうだ、フラムとフルームはいつも船でなにをしていたんだ?流石に二週間ともなるとやること無くなるだろ?」


「え?あ、えーっとねー……お姉ちゃんとトレーニングの部屋で身体鍛えたり、お姉ちゃんと木刀で模擬戦してみたり、お姉ちゃんと甲板に寝転がって日向ぼっこしたり、お姉ちゃんと一緒にお風呂入ったりとかかな?」


「……まぁせっかく一緒にいるのに別々で過ごすのもなんかね」



フルームのお姉ちゃん連呼に少し気恥ずかしくなるフラム。

姉妹の仲の良さをただ披露した形となり少し恥ずかしくなった。


そんなことは知らないフルームは甲板で寝転んで仰向けになり空を見上げる。



「こうして空を見ているとすぐ時間たっちゃうんだー」


「たまに海を渡る鳥とかも通るのよ」



そう言ってフラムも空を見上げる

つられてアリス、エイシェルも空を見上げた。


そこにはキレイな青空が広がる。

様々な形の雲が浮かびゆっくりと流れていた。



「……あれ?」



突然エイシェルが声を上げる。エイシェルの目の先を辿ると船の天井部分。そこには夢で見たものと同じパネルが付いていた。



「どうかしたの?」



エイシェルの声にアリスが反応した。

エイシェルにつられてアリスの目線も船の天井に向かう。



「船の天井に何かあるの?」


「いや……今朝風呂場でのぼせて倒れてた時に見た夢に出て来たものと同じだなと思って」


「夢?……ていうか今朝のぼせて倒れたって大丈夫なの?」


「見ての通り元気だぞ?その時見た夢に出てきたパネルとそっくりなんだよな……。なんか、太陽のエネルギーを蓄えて動力にしてるとか、2週間は蓄えた動力で動かせるとか言ってたけど……」



エイシェルが夢の内容を語るとフラムが口を挟む。



「なにか無意識に気になってたのかしら?船の屋根は乗船する時にも見てたはずでしょ?それに、私達の話を聞いてそんな夢を見たんじゃないかしら?」


「うーん……そうなのかな……」


エイシェルは釈然としない気分ではあった。勇者らしき人物が関わっている為、例のジェミニの魔法関連の記憶なのかもしれないと思った。しかし、フラムの言う通りただの夢という可能性もある。大した内容でもないので、あまり拘っても仕方がないと思い、エイシェルはそれ以上夢について話すことはやめたのだった。

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