69.依頼探し
4人が書類運びから帰ってくるとセラスが満足そうに頷いた。
元々真面目な4人のことだちゃんと届けたのだと信じていたのだ。
「5箇所すべてに書類を届けたみたいね。ありがとう!じゃあこれ依頼報酬5つ分ね」
そう言いながらセラスは銀貨5枚を差し出す。
しかし、セラスの言い方にエイシェルが引っかかった。
「依頼報酬5つ分ってどう言うことですか?」
「あなた達2人には早くBランクになってもらいたいからね。少しずるいけど1箇所1依頼で依頼書を作っておいたわ」
「え?それじゃあ今ので5つも依頼達成した事になるんですか?!」
アリスが驚き声を上げた。
するとセラスが焦りヒソヒソ声で話す
「ち、ちょっと!大きな声を出さないでよ!あなた達の功績とランクが見合わないから内緒でカサ増ししてるんだから!」
「え……それって大丈夫なんですか?」
セラスの説明にフラムが突っ込む。エイシェルとアリスが不正にランクアップしたとか後で言われないか心配だったのだ。
「大丈夫よ。依頼自体は正規の手続きを踏んだものだからね。ただ、ちょっとだけ簡単な依頼をまとめて達成しただけよ」
それが問題なのではと思う4人だったが、もう処理回しちゃったもん!と言い張るセラスに何も言えなくなるのだった。
とはいえ、セラスの好意により残りの依頼件数は6件にまで減ったのだ。エイシェルとアリスは素直に感謝するのだった。
セラスのおかげですぐに依頼が終わった4人は明日受ける依頼を見に行く事にした。
しかし、思う通りには行かなさそうだった。
「思いがけず残り6件まで減ったけど、出来そうな依頼を短期間にやったせいで余りいい依頼が残って無いな……」
「ほんと、1ヶ月間用心棒やってくれとか、幻の食材求むとか、依頼内容詳細が不明なものが残ってるけど……他には……」
「ワイバーン討伐」
「フルーム、それは無しで」
「うぅ……じゃあこのワイバーンの鱗5枚納品は?ワイバーンの牙2本納品もあるよ?ワイバーンの爪2本納品とかは?あ、ワイバーンの尻尾肉納品もある!」
「フルーム?フラムの言う通り一回ワイバーンから離れようか……?」
「はい!すみませんでした!」
「……と言うかなんでそんなにワイバーンの依頼が多いのよ!?」
エイシェルがめぼしい依頼がないと言うとアリスが残った依頼をいくつか読み上げる。多少の余裕はできたものの、長期依頼や達成条件不明な依頼は受けられない。
そんな事を言っているとフルームがワイバーン討伐を蒸し返していた。
フラムに却下されるも諦めないフルームにアリスは静かな笑みを浮かべフルームを諭した。
フルームは一度アリスに説教されてから素直に従った方が利口な判断だと学んでいた為に素直に従う。
とはいえ、ワイバーン関連の依頼が多いのは間違いなかった。
そんな中後ろからセラスが声をかけた。
「あなた達……ワイバーンまで討伐する気…….?」
「流石にワイバーンは相手にしたくないですよ……。ただ、ワイバーンの素材の依頼が多いなと思って話してたんです」
「あぁ、そう言う事?それは当然よ。亜竜とはいえ竜種の素材だもの。薬の素材にもなるし、装飾品に使ってもいいし、武器の素材にもなるらしいわ。そんな貴重なものだからみんなおこぼれが欲しいのよ」
「そうだったんですね……」
「あの」
セラスの説明を聞いてアリスは納得をした。ただ、そこでフラムが声を上げたのだ。
「ん?何かしら?」
「ワイバーンの血に……その、何か効能があるとかって聞いたことありますか?」
フラムは先程聞いたフラターの話が気になったのだ。もし老化を抑えるような効能があるのであれば、もっと広まっていてもおかしくない。
それにもかかわらず全く聞いた事がないのだ。
ギルドマスターなら何かしら情報があるのではないかと思い聞いてみたのだ。
「ワイバーンの血……ね。何か効能があるとかそういった話しは聞いた事がないわね……。そもそも討伐したら血なんてほとんど流れ出てなくなってるし。……何か気になることでもあるのかしら?」
「い、いえ……鱗とか牙とか使えるところが多いので、血とか内臓とか骨まで無駄なく活用されているのかと思っただけです……」
セラスはフラムへ逆に質問をした。
セラスは直感でただの興味で聞いたわけではないと思った。そのため確認してみたのだが、フラムの口からは単なる興味で聞いたとしか話されなかった。
フラムは誤魔化したのだ。フラターが今まで誰にも言えなかった出来事。それを自分に話してくれた。
だから自分もおいそれと他の人に話すわけにはいかないと感じたのだ。
気のせいだったかしらとセラスはこの件で特に言う事はなかった。
最初から4人がワイバーンの討伐依頼を受けるんじゃないかと思って、心配して声をかけたのだ。
「それにしても安心したわ。これでワイバーン討伐なんて言い出したらちょっと心配だったから。勢いのある若者冒険者はたまに出てくるのよ。ただ、自身の力量も知らずにちょっと背伸びした依頼を受けて、取り返しのつかない失敗をしてしまう。そんな子達が後を立たないから……。あなた達は既に理不尽な相手と戦ったみたいだけど、それでどんな相手でも勝てると慢心していないか心配してだったの。杞憂で良かったわ」
セラスは本当に安心したような表情を浮かべる。今気付いたが、最初に声をかけられた時は少し硬い表情をしていた気がした。
それだけ4人のことを心配していたのだ。
それじゃあ気をつけてねと言い残しセラスは去っていった。
「……フルーム?」
「ハンセイシテマス」
フルームはセラスの言葉を聞いてちょっと調子に乗っていたと反省したのだった。
結局のところ、今日はいい依頼が見つからなかったため、明日の朝に出直す事にした。
また新しい依頼が増えるかもしれないためだ。
そう思い今日は解散してそれぞれ宿へ帰るのだった。
「アリス足は治ったの?」
「そんな簡単に治らないわよ?内からくるものだからか、ヒールも効かないみたいだし……」
「そうなんだ……」
「……フルーム?絶対にやめてよ?」
「や、やだなーもうやらないよー」
アリスにとっては常に警戒する一夜だった。




