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ジェミニ 〜魂の契約者達〜  作者: えいりす
第三章 王都への旅
62/223

62.2世冒険者

今回詰め込んでます!

詰め込んだ結果、薬草学者のおじさんは入る余地がなかったです……

予想外の戦闘はあったものの無事山菜の収集依頼を終えた4人は完了報告をしに冒険者ギルドへ到着する。


「あら、あなた達……それは何?」


周りが暗くなり人がまばらになったギルド内で4人を見つけたセラスは声をかけた。

エイシェルの背中の籠が気になったのだ。


「最初は山菜を入れていたのですが……今はウサギモドキが入っていますね……」


「ウサギモドキ!?」


セラスは驚きのあまり思わず大きな声を上げた。

依頼は入っていたものの誰にも受けて貰えず、このままだと繁殖の恐れがあった為ギルドとして対策を練ろうとしていたところだった。


「は、はい。山菜を採っている途中で遭遇したので……」


「あなた達って運がいいんだか悪いんだか……珍しい魔物によく会うわね……」


セラスはこんな短期間に何回も話題に上がる成果を出す冒険者は見たことがなかった。


……そもそも、こんなに色々出くわすなんて普通じゃないのだ。


猿の魔物も本来であれば国からの依頼である。順当にランクアップをしていたものであればAランクになっていてもおかしくない。


今回のウサギモドキもギルドから正式に再依頼をかけようとしているところであった為、通常であればBランクに上げているところである。


しかし、エイシェルとアリスの依頼達成件数が余りにも少ない為、上げられない事情があるのだ。

……密かにセラスはこの基準の件数を半分に出来ないかと考えていた。


「……まず、確認するわね」


そう言ってセラスは籠の中を確認した。


「うわぁ……相変わらずエグい見た目ね……。はい、もういいわよ」


「セラスさんは……ウサギモドキを討伐した事があるんですか……?」


「あるわよ?かなり気持ち悪かったけどね……」


「そうですか……。すばしっこくて剣が当たらないし、剣が当たったとしても硬すぎて弾かれちゃうので大変ですよね……」


「オオカミとかイノシシなら両断できるのにねー……」


セラスの口ぶりからウサギモドキの討伐経験があるのかと思い、フラムがセラスに確認する。

どうやらセラスもウサギモドキを倒したことがあるようだった。


フラムは最近剣士として活躍出来ていないように思えてしまい思わず愚痴をこぼす。

とても大変だったので同意を求めたのだ。

そこにフルームも乗っかった。

いつもならば剣で一刀両断していたのに、ここ数日はその感触を感じられていないのだ。

……2人とも剣が弾かれて手が痺れるのはもう勘弁して欲しかったのだ。


ただ、同意が欲しかったフラムだったがセラスからは予想外の回答が来る。


「え?ウサギモドキってそんなに硬くない筈だけど?もっと言えばうさぎとたいして変わらないはずよ?」


「「「「え?」」」」


「え?」


セラスの回答に驚く4人。そしてその反応に驚くセラス。

どうやら認識の違いがあったようだ。


しばしの沈黙の間セラスが何やら考え込む素振りを見せる。そして口を開いた。


「……ごめんなさい。ちょっとそのウサギモドキ切らせてもらってもいいかしら……?」


セラスが真剣な表情で頼み込む。

通常なら他の人が討伐した魔物を傷付けるのはマナー違反である。

もし魔物を買い取りに出そうものならキズの有無によって買い取り価格が大幅に変わるからだ。

それでなくても既に息絶えた魔物を攻撃するなど道徳的に問題のある行動であった。


それを承知の上でセラスは頼んだ。


「別にいいですけど……ね?みんな?」


「あぁ、構わない」


「もともと討伐証明のためだけのつもりだったしね」


「むしろ切れるなら切り方を教えてほしい」


セラスの提案にフラムが答え、残りの3人にも確認を取る。

エイシェル、アリス、フルームも了承しセラスにウサギモドキを切ってもらう事になったのだ。


「それじゃあ、建物の裏口まできてくれるかしら」


セラスはそう言って4人をギルドの裏口へ連れて行く。




到着すると、何もない広場が広がっていた。

部屋からの光で辺りが照らされている程度である。


「じゃあここに置いてくれるかしら」


セラスの言う通りにエイシェルはウサギモドキをセラスの前に置いた。




「……ごめんなさいね。本当はこんな事したくないんだけど……"初めての証拠"になるかもしれないの」


セラスはウサギモドキの亡骸に手を合わせて謝る。

そして腰にさした剣の柄に手をかけ抜刀し構えた。


「ふっ!」


セラスがウサギモドキに向かって剣を振り下ろすと甲高い音が聞こえる。


ガキィンッ!


剣を振り下ろした先を見ると無傷で横たわるウサギモドキの姿があった。


「……うそ……キズ一つ付かないなんて……。あなた達、こんなのどうやって倒したの?目の部分に矢尻が刺さってるけど、大人しく的になるとは思えないわ……」


セラスの予想以上だった。渾身の一刀だったにも関わらず傷がつかなかったのだ。

確かによく見ると討伐されたはずなのにも関わらず胴体の目の部分以外の傷が見当たらないのだ。

それ故、どうやってこの硬いウサギモドキを倒したのかを確認する必要があった。



フラムは記憶を辿り大体の説明をした。

触手も胴体も剣が通用しなかった事。

魔法で動きを止めてから胴体の目を集中的に攻撃した事。

恐らく誰かひとりでも欠けていたら倒せなかっただろう。それだけ強敵だった。



「……あなた達だから倒せたって感じね……」


フラムの説明を受けたセラスは正直な感想を述べる。


(この魔物……私がその場にいたとしても倒せるか怪しいわね……。本格的に繁殖する前に倒せてよかったわ……ウサギモドキの習性そのままでこの硬さだったら……ここら一帯が滅んでもおかしくないわね……)


セラスはこの魔物がもし繁殖をしていたと思うと血の気が引いた。ただでさえ厄介な魔物なのにほとんど物理攻撃が効かないときた。

そんなのが複数現れたら手の施しようがなかった。


「ありがとう。確認できたわ。……あなた達には話しておくわね。あなた達が今回倒したウサギモドキなんだけど……私達は硬化変異種って呼んでるわ。すごく稀になんだけど物理攻撃が効かない個体が現れるという記録があるの。記録があるって言うのは報告があっただけで、今までギルドとして魔物そのものを確認できた事例がないから。だから今回のでギルドとして正式に確認できるからお願いしたのよ。出来れば調査用にこの魔物をギルドで買い取りたいんだけどいいかしら?」


セラスは4人にお礼を言い、今回のお願いの経緯を説明する。そして貴重なサンプルとして買取を申し出た。



「買取は構いません。……ちなみに前回報告があったのはいつなんですか?」


セラスの発言にフラムが気になった事を確認する。滅多に現れないと聞いたがここ数日で2回も遭遇していた為だ。

これからも遭遇する可能性があるのかも加味して確認したのだった。


「そうね……確か前回は2年前だったわね。その前は記録上100年以上前で詳細が書かれてないのよね……。ちなみに2年前はここから西にあるプロカルっていう村で硬化変異種が現れたって報告があったわ」


「それって!」


「……あぁ。おれの育った村だ。そして、その魔物はおれの両親の仇で間違いない」


セラスが過去の報告について説明する。そうそう遭遇するものでは無いようだった。しかし、前回の報告について話すとアリスとエイシェルが反応する。

報告された硬化変異種はまさにエイシェルを襲った魔物のことだった。



「……そうだったのね……。って、え?両親?」


「はい。父さんのアランと母さんのカレンは2年前に魔物に殺されました」



エイシェルは両親が冒険者であった事を思い出し、セラスなら知っているかもしれないと思いあえて両親の名前を言った。

セラスはエイシェルの独白に心を痛めたが、それ以上に口にした名前の驚きの方が大きかった。

2年前の事件。その被害者は2人しかいない。

そして、その被害者は誰もが知る人物だったからだ。

その名前を口にした瞬間フラムとフルームが焦ったように喋り出す。


「まった!!アランとカレンって魔法剣士の!!?」


「ドラゴン討伐パーティのメンバーの!?」


フラムとフルームは昨日同じ話をしたばかりだったので余計に驚いたのだ。


「……おれはそこまで詳しくは聞いてないが……冒険者だったのは間違いないんだが……」


「……そうよ。魔法剣士アランとカレン。その2人で間違い無いわ」


確証が持てないエイシェルにセラスが間違いないと教えてくれる。


「このことは他言無用でお願い。被害者の素性はギルドの上層部と関係者にしか伝わってないのよ」


「なんでですか?英雄のうちの2人の最期なのに公表されないなんて……」


セラスが誰にも言うなと注意する中で、フラムは釈然としなかった。

フラムの言う通りかつて国を救った英雄のメンバーなのだ。大々的に弔うのが普通と考えたのだ。

しかし、セラスは寂しい顔をして理由を話した。


「ごめんなさい。それは出来なかったの。英雄のふたりがやられたとなればその魔物はどうしたって話になるでしょ?……英雄ふたりを同時に相手しつ魔物が逃げて生き延びてるなんて知れたらどうなるかしら……?」


セラスの説明を聞き4人は公表出来ない理由を察した。

ドラゴンを討伐できるほど実力のある冒険者を2人相手にして殺してしまえる魔物など脅威でしかない。

混乱を避けるために秘密裏に処理されたのだった。



「納得ができないのもわかるわ。でも混乱を避けるためだったの。そこは理解して欲しい。」



セラスが4人に頭を下げる。

そこまでされてしまっては口外など出来なかった。

しばしの沈黙の後にセラスが続ける。


「でも、あと少しで公にされると思うわ。それまで他言は待ってちょうだい。ギルドの調査によると、この前あなた達が討伐した猿の魔物がその時の魔物と言う話よ。……仇を討てたわね」


セラスが深妙な顔をしてエイシェルに話しかける。

この時、エイシェルは回答に困っていた。


「いえ、あの魔物は……」


「アリス。いいんだ。セラスさん、教えてくれてありがとうございました。おれ、仇を討てました」


アリスの言葉を遮りエイシェルがセラスにお礼を言った。

アリスは最初は釈然としなかったがエイシェルが話を終わらせてしまった為話す事をやめる。そのあとエイシェルの考えたことがなんとなくわかった為何も言わなかった。


……ここで別の個体だと言ってしまうとエイシェルの魔法の話をしなくてはならなくなる。

エイシェルはそれは説明が難しいのと、あまり情報を広く扱う機関に伝えるのは不味い気がしたのだ。

それをアリスもなんとなく察した。



「しかし、ドラゴン討伐パーティメンバーの子供がこうも集まるとはね……フラムとフルームもフェルスさんの娘さんだし……」


セラスが数奇な巡り合わせを感心しているとフルームがぶっ込んできた


「それを言うならアリスだってルードスさんとマーテルさんの子供だもんね」


「へ……?」


「今言わなくていいでしょ!」


フルームの発言にセラスが思考停止する。アリスはじっとしていようと思ったのにバラされて思わず叫んだ。

……父親が遊び人ドラゴンスレイヤーだなんて黒歴史にも程があったのだ。


「ちょっとついて行けてないが……察するに、おれ達の親は同じパーティメンバーだったって事か……?」


「わたしも昨日知ったばかりだけど……そうなるわね」


「こんな事ってあるのね!」


「なんかすごい!?」


4人の思いがけない共通点に驚き運命を感じる。

セラスはその運命の瞬間に立ちえたのだ。


「……色々納得だけど……これ報告するべきかしら……そうすればランクアップ緩和も……いや、そんな事したら一部のドラゴンパーティを英雄視している人たちが黙ってなさそうだし、静かにさせてあげるべきか……」


立ち会ってしまったがために余計に考えることが増えて頭を抱えるのだった。

次回、とうとう薬草学者のおじさん登場……?

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